
【2027年4月適用】新リース会計基準とは。借上社宅の運用時に必要になる対応と準備
2024年9月に企業会計基準委員会(ASBJ)によって『リースに関する会計基準(以下、新リース会計基準)』が公表されました。
2027年4月からは新リース会計基準が適用され、借上社宅の賃貸借契約に関する会計処理にも影響することになります。
人事総務部門のご担当者さまは、新リース会計基準の内容や社宅運用における対応などを把握して、2027年4月の適用開始に向けた準備を行うことが求められます。
この記事では、新リース会計基準の概要や借上社宅の会計処理への影響、適用開始に向けて必要になる準備について解説します。
なお、社宅管理の課題と業務改善を図るコツについてはこちらをご確認ください。
目次[非表示]
新リース会計基準とは
新リース会計基準とは、企業会計基準委員会(ASBJ)によって公表されたリース契約に関する新しい会計基準を指します。2027年4月以降の事業年度からは、新リース会計基準が適用されます。
現行のリース会計基準では、ファイナンス・リース(※1)とオペレーティング・リース(※2)に区分して会計処理を行っており、オペレーティング・リースについてはオフバランス処理(賃貸借取引)が可能とされていました。
新リース会計基準が適用されると、リース取引の区分が廃止され、従来のオペレーティング・リースに対してもファイナンス・リースと同様にオンバランス処理(売買取引)が求められます。
▼リース取引に対する会計処理の変更
現行の会計基準 |
新リース会計基準 |
|
ファイナンス・リース |
オンバランス処理
(売買取引)
|
オンバランス処理
(売買取引)
|
オペレーティング・リース |
オフバランス処理
(賃貸借取引)
|
オンバランス処理
(売買取引)
|
※1…貸手が借手に代わって資産を購入して、借手に賃貸する取引。借手は原資産によってもたらされる利益を実質的に享受でき、かつ使用に伴って生じるコストを実質的に負担する。
※2…ファイナンス・リース以外の取引。借手が支払うリース料と引き換えに、リース期間中において貸手が提供する原資産を利用する便益を享受する。
出典:企業会計基準委員会(ASBJ)『2024年9月 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準』
借上社宅の賃貸借契約もリース契約に該当する
新リース会計基準に対象となるリース契約には、借上社宅における賃貸借契約も該当します。リース契約とは、以下のように定義されています。
▼リース会計基準に基づくリース契約の定義
「リース」とは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいう。
引用元:企業会計基準委員会(ASBJ)『2024年9月 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準』
リース契約の識別については、2つの要件を満たしているかによって判断します。
▼リース取引の識別要件
- 資産を特定できる
- 資産の使用による経済的な便益を享受でき、かつ資産の使用を指図する権利を有していることにより、資産を支配している
借上社宅の賃貸借契約(※)がいずれの要件も満たしている場合には、新リース会計基準に沿って会計処理を行う必要があります。
※契約形態や資産の使用状況によってリース取引の判定は異なります。
出典:企業会計基準委員会(ASBJ)『2024年9月 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準』
新リース会計基準の適用後はどうなる?社宅運用で必要になる対応
新リース会計基準が適用されることによって、原則としてすべてのリース取引がファイナンス・リースとして取り扱われます。これにより、借上社宅の賃貸借契約に対する会計処理の方法が変わります。
➀貸借対照表への計上
賃貸借契約によって借り上げた不動産に対してオンバランス処理が求められるようになり、新たに使用権資産・リース負債を貸借対照表に計上する必要があります。
▼現行基準・新基準における貸借対照表への計上に関する変更点
現行基準 |
新基準 |
ファイナンス・リース
→リース資産・リース債務を計上
|
すべてのリース取引
→使用権資産・リース負債を計上
|
オペレーティング・リース
→計上なし
|
リース期間の整理や契約内容に応じた支払利息と減価償却費の算出などを行い、貸借対照表に計上する金額を決めることが必要です。
なお、一定の要件を満たす短期あるいは少額のリース取引においては、簡便的な取り扱いを行うためにオンバランス処理の適用が免除される場合があります。
②契約更新時の再見積もりの実施
借上社宅のオンバランス処理を行うにあたって、契約の更新時に再見積もりを実施することが求められます。
物件の賃料やリース期間などが変更された際には、以下の対応が必要になります。
▼再見積もりの対応
- 使用権資産に対する契約状況の確認
- 割引率を用いたリース負債の現在価値を再計算
- 会計処理を行う費目の整理 など
リース負債の現在価値を算出する際に用いる割引率については、貸手の計算利子率が分かる場合にはその利率を適用します。把握できない場合には、借手の追加借入に適用されると合理的に見積もられる利率を使用します。
新リース会計基準の適用に向けた準備
借上社宅を運用している企業では、新リース会計基準の適用に備えて賃貸借契約の棚卸しを実施するとともに、会計処理規程の作成や業務フローの整備などを行うことが必要です。
ただし、借上社宅のオンバランス処理においては以下の課題があります。
▼オンバランス処理によって生じる課題
- 契約内容によってリース期間の考え方や計上すべき費目などが異なる
- オンバランス化によって資産・負債が変わることで財務諸表に影響が出る
- 会計処理と税務処理が一致しないことによる税務調整が必要になる など
このような課題に対応するには、新リース会計基準への適用で発生する情報収集やオフバランス化による影響の調査、会計処理などを支援するツールまたはサービスを活用することがポイントです。
まとめ
この記事では、新リース会計基準について以下の内容を解説しました。
- 新リース会計基準の概要
- 借上社宅の賃貸借契約に対する取り扱い
- 新リース会計基準の適用で必要になる社宅運用での対応
- 新リース会計基準の適用に向けた準備
新リース会計基準が適用されると、原則的にすべてのリース取引に対してオンバランス処理が必要になります。
借上社宅の運用においては、使用権資産・リース負債を賃借対照表に計上する必要があるほか、契約更新時には再見積もりを実施することが求められます。
社宅担当者による管理業務が煩雑化することが想定されるため、新リース会計基準への対応をサポートするツールまたはサービスを活用することが望まれます。
『リロケーション・ジャパン』では、借上社宅の運用において新リース会計基準に必要な業務を効率化するオプションサービスの提供を予定しております。オフバランス処理が必要な契約の判断や会計処理などに要する工数削減に貢献します。
詳しいオプションサービスの内容については、情報公開をお待ちください。
なお、社宅管理業務の課題を解決するコツはこちらの資料で紹介しています。