賃貸物件での家賃の決め方とは? 適正な家賃を決める10の判断要素
賃貸物件では、物件の所有者となるオーナーや管理会社によって家賃が設定されています。しかし、物件の価値や需要と合わない家賃を設定すると、入居者が集まらなかったり、オーナー側の収益に影響が出たりする可能性があるため、物件そのものの設備や環境などを考慮して適正に設定する必要があります。
借上社宅を運用している企業では、社宅規程で上限とする基準家賃を設定する必要があります。どのように賃貸物件の家賃が決まるのかを知っておくことで、基準家賃の見直しを検討できるようになります。
この記事では、賃貸物件における家賃の決め方と判断要素について解説します。
目次[非表示]
賃貸物件における基本的な家賃の決め方
賃貸物件のオーナーまたは管理会社が家賃を決める際には、収益性や利回り、周辺の取引事例などを基準にすることが一般的です。居住用の物件については、主に2つの評価方法が用いられています。
積算法
積算法とは、物件の所有者が適正な収益を確保できるように、投資元本に対する利益から家賃を算出する方法です。オーナーや管理会社が新たに賃貸物件を取得して投資目的で運用する場合に用いられます。
▼計算式
家賃=(物件の基礎価格×期待できる利回り+年間の諸経費)÷12ヶ月÷戸数
▼具体例
約7.5万円=(3000万円×3%+150万円)÷12÷10
ただし、積算法では元本や期待利回りを基に算出するため、現状にそぐわない家賃となってしまう可能性があります。
取引事例比較法
取引事例比較法とは、周辺にある類似物件の家賃相場と比較して相対的に家賃を算出する方法のことです。
対象となる物件と周辺の物件について、設備・階数・周辺環境・募集時期などのさまざまな条件を比較することで、合理的かつ現状に合った家賃を設定しやすくなります。居住用とする賃貸物件の家賃を決める方法として広く活用されています。
賃貸物件の家賃を設定する際の判断要素
賃貸物件の家賃は、物件自体の魅力や周辺環境、入居者の需要などの複合的な要素を踏まえて設定されます。一般的な判断要素には、以下が挙げられます。
物件そのものの要素
物件そのものの要素は、物件自体の価値や住みやすさを左右することから、家賃にも影響します。主な判断要素には、次の6つが挙げられます。
①築年数
住宅は建築してから時間がたつにつれて劣化が進み、価値が減少していくことから、築年数によって家賃が変わることが一般的です。新築時の家賃がもっとも高く、年数がたつほど家賃が下がりやすくなります。
②建物の構造
建物の構造も、家賃に設定する際の判断要素となります。賃貸物件では、主に4種類の構造によって建物が建てられています。
▼建物構造の主な種類
- 木造
- 鉄骨造(S造)
- 鉄筋コンクリート造(RC造)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造は、耐久性や防音性に優れていることから、木造、鉄骨造と比べて家賃が高くなりやすいといわれています。
③階数・位置
建物の階数が上がるほど、1階と比べてさまざまなメリットが期待できることから家賃が高くなる傾向にあります。
▼階数が上がるメリット
- 防犯性が高まる
- 通行人からのプライバシーを守りやすい
- 眺望や日当たりがよくなりやすい など
ただし、エレベーターがない物件の場合には、上階でも家賃が変わりにくくなります。また、角部屋は「玄関前での人の行き来が少ない」「窓が多い」「両隣の物音を気にしなくてよい」などのメリットがあるため、中部屋よりも家賃が高くなりやすいといわれています。
④専有面積・間取り
賃貸物件の専有面積とは、その部屋の居住者が使用できる床面積のことです。
一人暮らし向けの物件の場合、一般的な専有面積は20〜25m前後といわれています。専有面積が広くなるほど、家賃が高くなる傾向にあります。
また、一人暮らし向けの賃貸物件の間取りには、1R・1DK・1LDKがよく見られます。部屋数が多く、和室よりも洋室の物件ほうが家賃が高くなるといわれています。
⑤設備
部屋または共用部の設備は、快適性や暮らしやすさを左右するため、家賃にも影響する重要な要素となります。
▼家賃に影響しやすい設備
- 独立洗面台
- バス・トイレ別
- 冷暖房機器の設置
- 室内洗濯機置き場
- 2~3口のコンロ
- 無料のインターネット環境
- 防犯カメラ、オートロック
- 宅配ボックス など
これらの設備が充実している物件ほど、家賃が高く設定されやすくなります。
⑥外装・内装
賃貸物件の外装・内装は、見た目がきれいなほうが入居者に好まれるため、家賃が高くなりやすいといわれています。
また、外壁・部屋の壁紙・フローリングなどを定期的に改修している賃貸物件は、防水や耐久性などの観点からも価値が高くなり、家賃も高く設定されることが一般的です。
環境に関する要素
賃貸物件の家賃は、物件の状態や設備だけでなく外部環境によっても変わります。利便性が高く安心して暮らせる環境が整っているほど入居者から好まれやすくなり、家賃が高く設定されます。
⑦立地
賃貸物件がある立地の条件は、生活の利便性に関わる要素です。以下のような立地条件に該当する賃貸物件は、需要があり家賃も高くなりやすいといえます。
▼家賃が高くなりやすい立地条件
- 最寄り駅までの距離が近い(徒歩7~10分以内)
- 複数の路線が乗り入れるターミナル駅が最寄り駅になる
- 最寄り駅の道中にスーパーや薬局、コンビニエンスストアなどがある
- 徒歩または自転車で通える場所に病院や銀行がある など
一方、同じ間取り・広さ・築年数の住宅であっても、悪臭や騒音をもたらす施設、風俗施設などの嫌悪施設が近くにある場合は家賃が低く設定されやすくなります。
⑧水害リスク
宅地建物取引業の改定によって、2020年8月から不動産の売買契約や賃貸借契約などを行う際の重要事項説明について、水害ハザードマップにおける対象物件の概ねの位置を示すことが義務化されました。
▼ハザードマップのイメージ
画像引用元:国土交通省『水害ハザードマップ作成の手引き』
洪水や高潮などの水害リスクに警戒が必要な区域については、入居者の意思決定にも影響すると考えられるため、家賃が低く設定される可能性があります。
なお、ハザードマップを踏まえた賃貸物件の選び方については、こちらの記事でも解説しています。併せてご確認ください。
出典:国土交通省『不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化~宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令の公布等について~』『水害ハザードマップ作成の手引き』
契約内容に関する要素
賃貸物件を借りる際の契約内容において、契約期間や入居条件が定められている場合には、入居者が制限されることから家賃が低く設定されやすくなります。
⑨賃貸借契約の種類
賃貸物件を借りるときに交わす契約には、主に普通賃貸借契約と定期借家契約の2つがあります。
普通賃貸借契約は、1〜2年ほどの契約期間を定めて入居者による更新を行うことで住み続けられる契約です。一方の定期借家契約は、あらかじめ半年〜1年ほどの入居期間が定められており、期間が満了すると更新はできない契約となります。
定期借家契約のほうが入居できる対象者が少なく限られるため、普通賃貸借契約よりも家賃が低く設定されやすいことが特徴です。
⑩入居条件
賃貸物件のなかには、一定の入居条件を定めているケースがあります。
▼入居条件の例
- ペットの可否
- 楽器の使用可否
- 女性または男性専用 など
周辺にある類似物件と差別化を図れる入居条件を設定したり、緩和したりしている賃貸物件は、家賃が高くなる可能性があります。
まとめ
この記事では、賃貸物件における家賃の決め方について以下の内容を解説しました。
- 基本的な家賃の決め方
- 賃貸物件の家賃を設定する際の判断要素
賃貸物件の家賃は、主に積算法や取引事例比較法を用いて設定されます。合理的かつ現状に合った家賃を設定するには、周辺の物件と比較して相対的に家賃を算出する取引事例比較法が適しています。
また、家賃は物件の構造や設備、周辺環境、契約内容などの複合的な要素を基に決定されます。社宅を運用する際は、周辺の物件での家賃相場を踏まえながら、利便性や快適性などを考慮したうえで上限とする基準家賃を設定することが重要です。
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