人事制度を見直して企業の成長を促進する! 着目する3つのポイントと注意点
近年、コロナ禍でのテレワークの普及をはじめとして、働く場所・時間の柔軟化や就業キャリアの多様化、ワークライフバランスの重視など、働き方のニーズ・価値観が変化しています。
企業では、個々の事情に応じて柔軟な働き方を選択できて、意欲的かつ能力に応じて長く活躍できる就業環境を整備することが求められます。
そうしたなか、従来の人事制度を継続して運用している場合には、以下のような問題が生まれる可能性があります。
「経営方針や現場の現状と人事制度の整合性が取れない」
「人事評価が給与や昇進と連動しておらず納得感が得られにくい」
「従業員のニーズを満たした福利厚生がなく、満足度の向上を図れない」
人事総務部門では、経営戦略を基に現場の課題や従業員のニーズを踏まえた公平かつ納得感のある人事制度へと見直しを検討することが必要です。この記事では、人事制度の見直しを図るメリットとポイント、注意点について解説します。
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人事制度の見直しを行う必要性
人事制度とは、人材を管理してその能力が最大限に発揮される環境を整備するための制度のことです。
人材は経営に欠かせない資源となる“ヒト・モノ・カネ”のうちの一つに当たり、経営戦略を実現させるには、人材を管理してコストの最適化や労働生産性を高めることが重要といえます。
また近年では、少子高齢化による人手不足やコロナ禍による社会の変化、働き方・キャリア観の多様化など、企業と従業員を取りまく環境が変化しています。
このような環境で、自社が求める人材を確保して企業の活性化・成長へとつなげていくには、人材を資源ではなく“資本”と捉えて投資する“人的資本経営”の考え方への転換が求められている動きもあります。
なかでも人事制度は、“人をどのように活かすか”を決めて企業における価値創造や競争力の土台をつくる重要な要素といえます。
企業と従業員を取り巻く環境の変化に対応するには、経営戦略と連動させながら人的資本経営の考え方を取り入れて、従来の枠にとらわれない柔軟かつ多様な制度設計へと見直しを図ることが必要です。
人事制度の見直しを図るメリット
人事制度の見直しを図ることによって、以下のメリットが期待できます。
▼期待できるメリット
- 就業意欲の向上
- 定着率の向上
- 優秀な人材の確保
雇用形態にかかわらず、能力や成果に応じた納得感のある人事評価とそれに連動した処遇の改善を図ることで、就業意欲の向上につながると期待できます。
また、個々の事情やライフステージに合わせて働き方を選んだり、目標に応じて自律的にキャリア形成を図れたりする機会・環境を提供できれば、定着率の向上と優秀な人材の確保に結びつくと考えられます。
就業意欲を向上させて多様なニーズに対応できる職場環境を整備することは、事業活動の活性化や従業員満足度の向上にも貢献します。
人事制度の見直しを図る3つのポイント
人事制度を見直す際は、経営戦略との整合性や現場の課題・ニーズを踏まえて取り組むことが重要です。見直しを図るポイントには、以下の4つが挙げられます。
①等級制度
等級制度は、従業員の能力・職務・役割などを基にいくつかの区分で序列化をする制度のことです。
業務ごとの権限や責任を定めたうえで、従業員の能力に応じた人員配置や人事異動、処遇の決定を行います。
等級制度で序列化をする際には、3つの軸があります。
▼等級制度における3つの軸
等級制度 |
詳細 |
職能等級制度 |
人材の能力・経験年数を基準に等級を定める |
職務等級制度 |
職務の専門性や難易度などを基準に等級を定める |
役割等級制度 |
従業員に求める役割を設定して、目標の達成度合いに応じて 等級を定める |
職能等級制度は、日本における従来の人事制度とされており、年功序列やゼネラリストの育成を視野に入れた運用を行います。しかし、「成果やプロセスが処遇へと反映されにくい」「昇給・昇格がしにくい」などの問題によって不満が生まれやすい課題があります。
納得感のある評価基準を定めるには、職務等級制度または役割等級制度の導入を検討して、職務内容・成果・役割に見合った等級を設計することがポイントです。
②人事評価制度
人事評価制度は、企業に対する従業員の貢献度や業務のパフォーマンスを一定の基準で評価する制度です。
評価の結果は、等級や報酬の決定に反映します。人事評価制度を見直す際は、評価者によってばらつきが生まれないように、評価項目や基準を明確にする必要があります。客観的かつ公平に評価できる仕組みを構築・可視化することで、評価の納得感を高められます。
▼人事評価制度の評価項目
評価項目 |
評価対象 |
能力評価 |
能力やスキル |
業績評価 |
企業の売上や業績への貢献度 |
情意評価 |
積極性や勤務態度 |
部署や職務内容によって期待する成果・行動は異なるため、それぞれの特性を踏まえて評価項目と評価方法を定めることがポイントです。
仕事に対する成果が目に見えにくい間接業務については、プロセスや役割、周囲への貢献度などを定性評価できるようにします。
③報酬制度
報酬制度は、等級や人事評価を基に従業員へ支払う給与・賞与・福利厚生などを定める制度のことです。
従業員の職務内容・能力・仕事の成果などが適正かつ公平に反映される報酬制度を設計することで、従業員の満足度や成長意欲の向上などが期待できます。
▼報酬制度で定める項目と検討要素
項目 |
検討要素 |
基本給 |
能力、業績 など |
能力給 |
スキル、資格、知識 など |
職務給 |
仕事内容、役職 など |
福利厚生 |
残業代、休日出勤手当、退職金、福利厚生 など |
報酬制度を見直す際は、人件費に関連する人事評価制度や福利厚生との整合性を考慮するとともに、就業規則の内容も合わせて見直すことがポイントです。
また、報酬制度や人事評価制度はすぐに変更することが難しいと考えられます。人事制度で改善が難しい課題や不満要素に対しては、従業員に喜ばれる福利厚生を導入してカバーすることも一つの選択肢といえます。
人事制度を見直す際の注意点
人事制度の見直しに取り組む際には、以下の注意点があります。
▼注意点
- 現状課題と経営方針とのギャップを確認する
- 業務特性の違いや現場の声を反映する
- 影響の少ない評価制度から着手して継続的な改善を図る
人事制度を見直す際は、現状の課題と企業が目指すビジョンや経営戦略などの方針とのギャップを把握することが重要です。現状課題と理想とのギャップを明らかにすることで、経営層・人事総務部門による独断や机上の空論となるのを防いで、理想に近づくための改善案を検討できます。
また、評価基準や報酬制度の見直しを行う際は、部門ごとの業務特性の違いを考慮するとともに、現場の課題・要望をヒアリングして不満が出ないように制度へ反映させることが求められます。
人事制度の見直しに取り組む際には、従業員や現場への負担を最小限に抑えられるように、影響の少ない評価制度から始めることが重要です。継続的な取り組みを通して、人事制度を着実に変化させて行く必要があります。
まとめ
この記事では、人事制度の見直しについて以下の内容を解説しました。
- 人事制度の見直しを行う必要性
- 人事制度の見直しを図るメリット
- 人事制度の見直しを図る3つのポイント
- 人事制度を見直す際の注意点
人事制度は、事業活動の基盤となる人材の能力を最大限に活かして、新たな価値創造や競争力の向上などを図るための重要な仕組みです。
納得感のある評価基準を設けたり、処遇を充実させたりすることによって、事業活動の活性化や従業員の満足度向上にも結びつくと考えられます。
しかし、人事制度の見直しは一朝一夕にできるものではないため、現状の課題と理想のギャップを徐々に埋めることを目的に、合理的な改善策を検討する必要があります。人事制度の不満要素をカバーするために、従業員の満足度が高い福利厚生を導入することも一つの方法です。
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