不動産に関わる支払調書とは。社宅の運用で作成する際のポイント
支払調書とは、企業が法人または個人事業主などへ支払った報酬額や源泉徴収額を記載した法定調書の一つです。
納税者が1年間で誰にどのような内容の支払いを行ったのかを正確に申告して、適正な課税が行われるようにすることが目的です。企業は支払者に対して、翌年1月末までに所轄の税務署へ支払調書を提出することが義務づけられています。
支払調書にはいくつか種類がありますが、社宅の運用にあたっては物件の管理会社またはオーナーへ家賃の支払いが発生するため、不動産に関連する支払調書の作成・提出が必要です。
人事総務部門のご担当者さまのなかには「不動産に関連する支払調書には何があるのか」「社宅の運用時にはどのように支払調書を作成するのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、社宅運用の職務理解を深めたい方に向けて、不動産に関連する支払調書と作成のポイントについて解説します。
出典:国税庁『F1-3 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(同合計表)』
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不動産に関わる3つの支払調書
不動産に関する支払調書には、主に以下の3つがあります。1年を通して社宅の運用で発生した各種支払いに該当する場合には、作成・提出が必要となります。
①不動産の使用料等の支払調書
『不動産の使用料等の支払調書』とは、土地や建物に対する使用料の支払いが発生した際に作成・提出する支払調書です。
同一人に対する1年間の支払い金額の合計が15万円を超える場合に提出が必要になります。ここでいう“不動産の使用料”とは、以下の費用が該当します。
▼不動産の使用料に含まれる費用
- 土地・建物の家賃や賃借料
- 敷金・礼金
- 地上権・地役権・賃借権などに伴って支払う権利金
- 契約更新料
- 借地権や借家権を譲り受けた場合の名義書換料
ただし、支払先が法人の場合には、賃借料を除く権利金と更新料などの支払い総額が15万円を超える場合に提出対象となります。
▼社宅の運用で作成が必要になるケース
- 賃貸物件の個人オーナーに年間15万円を超える家賃を支払った
- 賃貸物件の契約時に不動産管理会社へ15万円を超える敷金・礼金を支払った
出典:国税庁『No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等』
②不動産等の譲受けの対価の支払調書
『不動産等の譲受けの対価の支払調書』は、不動産を譲り受けたことによって、同一人に対する1年間の支払い金額の合計が100万円を超える場合に作成・提出する支払調書です。
▼不動産の譲受けに該当する取引
- 売買
- 交換
- 競売
- 公売
- 収用
- 現物出資
なお、競売は、債権者が債権回収のために債務者が所有する抵当権を設定した不動産の売却を、裁判所に申し立てて売却することです。
公売は、税金の滞納者から差し押さえた財産(不動産を含む)を入札によって売却(換価)する手続きを指します。
社宅の運用において『不動産等の譲受けの対価の支払調書』の作成が必要になるケースには、以下が挙げられます。
▼社宅の運用で作成が必要になるケース
- 100万円を超えるマンションの一室を社宅として購入した
- 競売に出されたアパートを社員寮にするために100万円を超える金額で購入した
出典:国税庁『No.7442 「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出範囲等』『第20条関係 競売』『第94条関係 公売』
③不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
『不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書』とは、不動産の売買や賃貸借のあっせんをした個人事業主または法人へ手数料を支払った場合に、作成・提出する支払調書です。
同一人に対する1年間の支払い金額の合計が15万円を超える場合に、作成・提出が必要となります。
▼社宅の運用で作成が必要になるケース
- 賃貸物件を借り上げる際に、不動産会社へ15万円を超える仲介手数料を支払った
- アパートを社有社宅として購入する際に、売買契約手続きのサポートを依頼した事業者へ15万円を超える報酬を支払った
出典:国税庁『No.7443 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出範囲等』
不動産に関わる支払調書の記載内容
社宅の運用にあたって一定額の支払いが発生した場合には、必要事項を記載して支払調書を作成します。支払調書の種類によって記載内容が異なるほか、支払先が複数ある場合には、支払先ごとに支払調書を作成・提出する必要があります。
▼不動産の使用料等の支払調書
画像引用元:国税庁『不動産の使用料等の支払調書』
▼記載内容
項目 |
記載内容 |
区分 |
地代・家賃・借地権の設定による対価など |
細目 |
土地の地目や建物の構造、用途 など |
計算の基礎 |
年中の賃借期間や単位当たりの賃借料、戸数 など |
▼不動産等の譲受けの対価の支払調書
画像引用元:国税庁『不動産等の譲受けの対価の支払調書』
▼記載内容
項目 |
記載内容 |
物件の種類 |
土地、借地権、地役権、建物 など |
細目 |
土地の地目や建物の構造、用途など |
数量 |
土地の面積、建物の戸数、延べ床面積 など |
取得年月日 |
不動産の所有権やその他財産権の移転があった日 |
▼不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
画像引用元:国税庁『不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書』
▼記載内容
項目 |
記載内容 |
物件の種類 |
譲渡、譲受け、借受け など |
細目 |
土地、借地権、地役権、建物 など |
数量 |
土地の面積、建物の戸数、延べ床面積など |
取引金額 |
単位当たりの賃貸借料、売買による対価の額 など |
なお、マイナンバーの収集についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
出典:国税庁『不動産の使用料等の支払調書』『不動産等の譲受けの対価の支払調書』『不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書』
社宅の運用で支払調書を作成する際のポイント
社宅を運用する際に支払調書を作成する際は、支払先や家賃などに間違いがないか確認しておくことが重要です。
▼確認しておくこと
- あっせん手数料に関する内容の重複がないかを確認する
- 支払者が個人か管理会社のどちらかに当たるかを確認する
- 賃貸物件の家賃については全額を記載する
『不動産の使用料等の支払調書』または『不動産等の譲受けの対価の支払調書』には、あっせん手数料に関する記載項目が設けられています。これらの記載項目にあっせんした事業者や手数料について記載していれば、個別に『不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書』を提出する必要はありません。
また、賃貸物件を個人オーナーから借り上げている場合、家賃についてはオーナーが委託する管理会社へ支払うケースもあります。その際は、“支払いを受ける者”の欄に個人オーナーの名前、摘要欄に管理会社の情報を記載します。
そのほか、家賃の一部を使用料として従業員から徴収していても、賃貸借契約が自社名義になっている場合には支払い金額に家賃の全額を記載する必要があります。
出典:国税庁『No.7443 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出範囲等』『不動産の賃借料を管理会社へ支払っている場合』『不動産の賃貸借契約者と賃借料の負担者が異なる場合』
まとめ
この記事では、不動産に関わる支払調書について以下の内容を解説しました。
- 不動産に関わる3つの支払調書
- 不動産に関わる支払調書の記載内容
- 社宅の運用で支払調書を作成する際のポイント
社宅を運用しており、物件の購入や賃貸によって不動産に関する一定額の支払いが発生した場合には、翌年1月末までに支払調書を税務署へ提出する必要があります。
不動産に関する支払調書には3つの種類があり、対象となる支払い項目や金額の条件などが異なるため、「誰に何を、いくら支払ったのか」を区分して記録・管理しておくことが重要です。
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