豪華社宅とは? 住宅の取り扱いや使用料の設定に関する注意点
社宅とは、企業が所有あるいは借り上げた物件を従業員に貸与して、一定の使用料を徴収する制度のことです。入社・転勤に伴う住居の確保に関する金銭的な負担を抑えるための福利厚生として導入されています。
社宅制度で貸与する住宅の種別に“豪華社宅”があり、一般的な住宅とは税制上の取り扱いが異なるため、運用の際には注意が必要です。
人事総務部門のご担当者さまのなかには「豪華社宅とはどのような住宅を指すのか」「一般的な住宅とどのような違いがあるのか」など疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、豪華社宅の取り扱いや使用料の設定に関する注意点について解説します。
なお、社宅制度の基礎知識はこちらの記事で解説しています。
目次[非表示]
- 1.豪華社宅の定義
- 2.豪華社宅の判定基準
- 3.社宅制度における一般の社宅と豪華社宅の違い
- 3.1.①小規模な住宅
- 3.2.②小規模な住宅以外の住宅
- 3.3.③豪華社宅
- 4.まとめ
豪華社宅の定義
豪華社宅とは、社会通念上、一般に貸与される社宅と認められない住宅を指します。豪華社宅に当たる住宅の例には、以下が挙げられます。
▼豪華社宅の例
- 床面積が240㎡を超える住宅
- 一般の住宅には設置されていないプールや内装などがある住宅
- 役員個人の嗜好を著しく反映した設備がある住宅 など
このように、一定以上の床面積があり、一般的に貸与されている住宅にはない特殊な設備が備わっている場合には、豪華社宅と見なされることがあります。
出典:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』『第2 給与所得の源泉徴収事務』
豪華社宅の判定基準
国税庁によると、豪華社宅に該当するかどうかは以下の複数の要素を総合的に勘案して判定されると示されています。
▼豪華社宅の判断に用いられる要素
- 住宅の床面積
- 住宅の取得価額
- 支払賃貸料の額
- 内外装の状況 など
床面積の基準は240㎡以上とされていますが、基準に満たない住宅であっても一般の住宅にはない設備や内装がある場合には、豪華社宅に当たる可能性があります。
ただし、タワーマンションに付属するプールのように、豪華な内装を入居者全員で共用する形式の場合は豪華社宅に該当しないと考えられます。
出典:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』『第2 給与所得の源泉徴収事務』
社宅制度における一般の社宅と豪華社宅の違い
一般の社宅と豪華社宅では、社宅使用料の設定についての取り扱いが異なります。
従業員に社宅を貸与する際、1ヶ月当たりに一定額の家賃(以下、賃貸料相当額)を受け取っている場合には、給与支給とはならず所得税が課税されません。
引用元:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』
この賃貸料相当額は、社宅として貸与する住宅の種別によって取り扱いや算出方法が異なります。たとえば役員向けの社宅の場合、住宅の種別は以下の3つに区分されています。
▼社宅制度の住宅種別
- 小規模な住宅
- 小規模な住宅以外の住宅
- 豪華社宅
それぞれの住宅における賃貸料相当額の取り扱いや算出方法の違いは、以下のとおりです。
出典:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』
①小規模な住宅
小規模な住宅とは、以下に該当する住宅を指します。
▼小規模な住宅
- 法定耐用年数が30年以下の建物の場合、床面積が132㎡以下
- 法定耐用年数が30年を超える建物の場合、床面積が99㎡以下
賃貸料相当額は、以下のA~Cまでの合計額となります。
▼賃貸料相当額の計算方法
項目 |
計算式 |
A |
その年度における建物の固定資産税の課税標準額×0.2% |
B |
12円×その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡ |
C |
その年度における敷地の固定資産税の課税標準額×0.22% |
出典:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』
②小規模な住宅以外の住宅
上記で挙げた小規模な住宅に該当しない場合には、その社宅を会社が所有しているのか、借り上げた住宅なのかによって賃貸料相当額の算出方法が異なります。
【会社が所有する住宅の場合】
会社の固定資産として所有する社宅の場合には、次のAとBを合計した額の12分の1が賃貸料相当額となります。
▼賃貸料相当額の計算方法
項目 |
計算式 |
A |
その年度における建物の固定資産税の課税標準額×12%(※)
|
B |
その年度における敷地の固定資産税の課税標準額×6% |
※法定耐用年数が30年を超える建物の場合には10%を乗じる
【会社が借り上げた住宅を貸与する場合】
借上社宅の場合には、会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記で算出した賃貸料相当額のいずれか多い金額が賃貸料相当額となります。
出典:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』
③豪華社宅
社会通念上、一般の社宅として認められないような豪華社宅は、その住宅が一般の賃貸物件となった場合において、通常支払う家賃に相当する額が賃貸料相当額となります。
▼国税庁が示す豪華社宅における賃貸料相当額の考え方
役員に貸与している住宅等が社会通念上一般に貸与されている住宅等と認められないいわゆる豪華な役員社宅である場合の通常の賃貸料の額は、①、②又は③の賃貸料相当額の計算式によらず、その住宅等の利用につき通常支払うべき使用料その他その利用の対価に相当する額(その住宅等が一般の賃貸住宅である場合に授受されると認められる賃貸料の額)とされています。
引用元:国税庁『第2 給与所得の源泉徴収事務』
ただし、豪華社宅に該当するかどうかには法律による明確な線引きがないため、使用料の設定には注意が必要です。
出典:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』『第2 給与所得の源泉徴収事務』
まとめ
この記事では、豪華社宅について以下の内容を解説しました。
- 豪華社宅の定義
- 豪華社宅の判定基準
- 社宅制度における一般の社宅と豪華社宅の違い
豪華社宅は、一定以上の床面積があり、一般に貸与される住宅にはない特殊な設備や内装を備えた住宅を指します。
ただし、豪華社宅に該当するかどうかは法律による明確な線引きはなく、住宅の取得価額や支払賃貸料の額、内外装の状況などの複数の要素を総合的に勘案して判定されます。
豪華社宅に該当する場合には、一般の住宅を貸与する場合と賃貸料相当額の取り扱いや算出方法が異なるため、社宅使用料を設定する際には注意が必要です。
なお、社宅制度の見直しや個別事情に配慮した社宅規程の策定などを検討されている方は、外部の専門事業者にサポートを依頼することも一つの方法です。
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