現物給与価額とは。社宅や食事を提供する場合の算定方法と注意点
現物給与とは、金銭以外で従業員へ支払う給与のことです。従業員に社宅や食事などを支給する際に現物給与として扱われる場合、社会保険料の算定基礎に含める必要があります。そこで算定が必要になるものが“現物給与価額”です。
社宅制度の導入を検討している人事総務部門のご担当者さまのなかには、「現物給与価額はどのように算定するのか」「社宅や食事を支給する際に気をつけておくことはあるか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、現物給与価額の概要や、社宅と食事を提供する際の算定方法、注意点について解説します。
なお、所得税や労働保険における現物給与の扱いについては、こちらの記事をご確認ください。
目次[非表示]
- 1.現物給与価額とは
- 2.現物給与価額の算定方法
- 2.1.社宅を貸与する場合
- 2.1.1.①居住スペースの面積を確認する
- 2.1.2.②都道府県別の現物給与価額と畳数を掛ける
- 2.2.食事を提供する場合
- 3.社宅や食事に関する現物給与価額を算定する際の注意点
- 4.まとめ
現物給与価額とは
現物給与価額は、厚生労働大臣が定める『厚生労働大臣が定める現物給与の価額』によって都道府県別に設定されており、定期的に改正が行われます。特に、食事に関する現物給与価額については、毎年改定が行われます。
社会保険の保険料額は、従業員の給与を複数月平均で算出した“標準報酬額”を基礎に算定されます。標準報酬額には、現金で支給する給与や賞与だけでなく現物給与も含まれるため、現物給与価額として通貨に換算することで算入します。
出典:厚生労働省『厚生労働大臣が定める現物給与の価額』
現物給与価額の算定方法
従業員に支給するものが住宅や食事に当たる場合には、厚生労働大臣が定める現物給与の価額に基づいて通貨に換算します。また、自社製品をはじめ、住宅や食事以外のものを支給する場合には、原則として時価に換算されます。
ここでは、社宅と食事を提供する場合の算定方法について解説します。
社宅を貸与する場合
社宅の場合には、1畳当たりの現物給与価額が定められています。そのため、物件の面積と厚生労働大臣が定める現物給与価額を掛けることで算出できます。
①居住スペースの面積を確認する
社宅として貸与している物件の面積を、畳数で確認します。計算に含める面積は居住スペースのみで、廊下やトイレなどは含まれません。
▼居住スペースの面積を算出する際の区分
対象 |
居室・寝室・客間・書斎・仏間・食事室 など |
対象外 |
玄関・台所・トイレ・浴室・廊下 など |
平米数で物件の面積が表示されている場合には、1畳当たり1.65㎡で換算することで計算できます。
②都道府県別の現物給与価額と畳数を掛ける
厚生労働大臣が都道府県別に定めた現物給与価額と、算出した畳数を掛けます。
▼計算式
1ヶ月当たりの現物給与価額(円)=1畳当たりの価額(円)×居住用の室の畳数(個)
▼具体例:東京都にある居住スペースが12畳の社宅の場合(※2024年時点)
2,830円×12畳=33,960円
※1円未満の端数がある場合には切り捨てる
なお、月の途中で社宅に入居する場合には、入居日以降の日数とその月の総日数で日割り計算を行う必要があります。
出典:厚生労働省『現物給与の価額改定について(令和6年度)』
食事を提供する場合
食事を提供する場合、厚生労働大臣が定める現物給与価額は提供方法によって異なります。従業員に提供した食事の内容に応じて、都道府県ごとに定められている現物給与価額に換算して算定します。
▼食事の提供方法による算定区分
- 1人1ヶ月当たりの食事の額
- 1人1日当たりの食事の額
- 1人1日当たりの朝食のみの額
- 1人1日当たりの昼食のみの額
- 1人1日当たりの夕食のみの額
▼具体例:東京都の事業場で昼食を20日、夕食を13日提供した場合(※2024年時点)
(270円×20日)+(310円×13日)=9,430円
出典:厚生労働省『現物給与の価額改定について(令和6年度)』
社宅や食事に関する現物給与価額を算定する際の注意点
従業員から社宅の使用料や食事代を徴収している場合、徴収額に応じて現物給与価額の扱いが変化します。
▼社宅使用料・食事代を徴収している場合の現物給与価額
徴収額が現物給与価額の3分の2未満 |
徴収額が現物給与価額の3分の2以上 |
|
社宅 |
算定した現物給与価額から徴収額を差し引いた額 |
算定した現物給与価額から徴収額を差し引いた額 |
食事 |
算定した現物給与価額から徴収額を差し引いた額 |
現物給与の対象にはならない |
社宅の場合は、算定した現物給与価額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額となります。一方で、食事については徴収額によって扱いが異なります。
出典:日本年金機構『令和6年4月から現物給与の価額が改正されます』
まとめ
この記事では、現物給与価額について以下の内容を解説しました。
- 現物給与価額とは
- 現物給与価額の算定方法
- 社宅や食事に関する現物給与価額を算定する際の注意点
現物給与価額は、現物給与を通貨に換金した金額を指します。現物給与として従業員へ支給するものとしては社宅や食事などが挙げられますが、社会保険料を算定する際には『厚生労働大臣が定める現物給与の価額』を基に通貨へと換算する必要があります。
都道府県ごとに定められる現物給与価額は、居住スペースの面積や食事の提供方法によっても異なります。また、社宅使用料や食事代を徴収している場合はそれに応じて現物給与価額の扱いが変化します。
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