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大企業における社宅の導入状況。住宅手当と比較したメリット・デメリット

社宅制度は、企業が所有または借り上げた物件を従業員に貸与する福利厚生の一種です。なかでも大企業においては各地に事業所・支店があるため、職種や役職によっては人事異動が頻繁に行われることもあります。そのため、入社・転勤に伴う住居の確保を目的に社宅制度が導入されることがあります。

人事総務部門のご担当者さまのなかには「大企業では社宅制度がどれくらい導入されているのか」「住宅手当と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、企業における社宅制度の導入状況や住宅手当と比較した場合のメリットなどについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.社宅制度の導入状況
  2. 2.大企業が社宅制度を導入するメリット
    1. 2.1.入社・転勤の準備期間を短縮できる
    2. 2.2.幅広いエリアの人材を採用できる
    3. 2.3.税金や保険料の負担が増えない
  3. 3.大企業で社宅制度を導入するデメリット
    1. 3.1.運用管理に関する業務負担が増加する
    2. 3.2.導入時や運用のコストがかかる
  4. 4.大企業が社宅制度を導入するポイント
  5. 5.まとめ


社宅制度の導入状況

内閣管轄の人事院が実施した『令和4年民間企業の勤務条件制度等調査』によると、社宅を導入している企業の割合は41.6%です。

従業員数が500人以上の企業では、72.1%の企業が社宅を導入しており、企業規模が大きくなるにつれて割合も高くなっています。


▼社宅の有無について

企業規模
社宅がある(%)
社宅がない(%)
不明(%)
500人以上
72.1
27.1
0.8
100人以上 500人未満
45.8
50.2
4.0
50人以上 100人未満
26.1
69.1
4.9


また、社有社宅よりも借上社宅のほうが導入割合が高いことが分かります。


▼社宅の提供形態(企業規模:500人以上)

提供形態
社宅がある企業を100とした割合(※複数回答)
社有者宅
40.7
借上社宅
89.8


社宅の用途については、社有社宅、借上社宅ともに世帯向けよりも単身者向けの物件が多くなっています。

さらに、転居を伴う転勤がある企業の割合は全体で43.2%ですが、従業員数が500人以上の企業では77.7%におよびます。

企業規模が大きいほど、転勤に伴って従業員やその家族の住居を確保するために、社宅制度を導入していることが分かります。


出典:人事院『令和4年民間企業の勤務条件制度等調査』『Ⅱ 調査結果



大企業が社宅制度を導入するメリット

住宅に関する福利厚生には、社宅制度のほかにも従業員の家賃や住宅ローンの一部を企業が補助する“住宅手当”があります。

生活費に関する従業員の負担を抑えられる点では同じですが、社宅の提供には以下のメリットが期待できます。


入社・転勤の準備期間を短縮できる

社宅を導入すると、入社・転勤の準備期間を短縮できます。

大企業における年度初めの入社や定期的な人事異動の際に従業員自身で住居を確保しようとすると、労力的な負担につながります。場合によっては物件が見つからずに入社日・着任日までに入居が間に合わなくなることもあります。

社宅を提供すれば、従業員は人事異動のたびに住居探しや賃貸借契約の時間が短縮されるため、短期間で住環境を整えることができます。

従業員が円滑に準備を進めることができるようになると、企業側も入社日や転勤先での着任日までの準備期間を短く設定しやすくなります。

なお、人事異動の内示タイミングについてはこちらで解説しています。併せてご確認ください。

  人事異動はいつの時期に行う? 内示のタイミングと社宅運用のポイント 人事異動が決まると、引き継ぎや関係者への連絡などの業務手続きが必要になります。社宅制度を導入している場合は、従業員が転居先の社宅へスムーズに引越しできるように、手続きやサポートを行うことが求められます。今回は、一般的な人事異動の時期と内示のタイミング、社宅への転居をスムーズに進めるポイントについて解説します。 リロの社宅管理│業務削減効果90%以上のアウトソーシングサービス


幅広いエリアの人材を採用できる

福利厚生として社宅を用意していると、幅広いエリアの人材を採用できます。

求職者のなかには、遠方に事業所・支店がある求人に興味を持ったとしても、慣れない地域での住居探しに不安を抱えることによって応募を控える人もいると考えられます。

事業所・支店があるエリアで社宅を提供すれば、新たな環境での暮らしに不安を持つ人も応募の可能性が期待できます。


税金や保険料の負担が増えない

社宅制度は、住宅手当の支給と異なり、税金の負担が増えないこともメリットといえます。

住宅手当は従業員の給与の一部として支給するため、課税所得が増えて所得税や社会保険料の負担につながります。

社宅を提供する場合には、一定の社宅使用料を従業員の給与から天引きする仕組みとなり、給与として課税されません。

大企業では福利厚生を利用する従業員の数も多いため、社会保険料の負担を抑えられることは企業側のメリットにもなります。ただし、社宅として認められるには、従業員から一定額の社宅使用料(賃貸料相当額)を徴収する必要があります。


社宅使用料の給与天引きについてはこちらをご確認ください。

  社宅使用料を給与天引きにするメリットと注意点 従業員の住居費を支援する制度は、大きく“住宅手当・家賃補助の支給(現金給与)”と“給与天引きによる社宅貸与(現物給与)”の2種類に分けられます。 どちらも福利厚生制度に関する取組みですが、それぞれの違いについて明確に把握している担当者の方は少ないのではないでしょうか。 社宅制度を導入する際は、企業側と従業員側の双方にメリットがある取組みを選択することが望ましいです。 この記事では、住宅手当支給(現金支給)と給与天引きによる社宅貸与(現物支給)の違い、給与天引きのメリットと実施時の注意点を解説します。 リロの社宅管理│業務削減効果90%以上のアウトソーシングサービス


出典:国税庁『No.2508 給与所得となるもの』『No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき



大企業で社宅制度を導入するデメリット

大企業が社宅制度を導入する際には、運用における業務負担やコストの増大が懸念されます。


運用管理に関する業務負担が増加する

大企業において、事業拠点がある地域ごとで社宅を提供する場合には、管理する物件数が増えて業務負担につながります。これにより、人事総務部門のリソースが不足したり、長時間労働を招いたりすることがあります。


▼社宅の運用管理で発生する業務の例

提供形態
業務例
社有社宅
建物・設備の維持管理、長期修繕計画の策定・運用、設備や備品の資産管理、入居物件の差配 など
借上社宅
物件の選定、賃貸借契約の手続き、契約管理、入居者の入退去管理、敷金の管理 など


導入時や運用のコストがかかる

大企業で社宅制度を導入する際は、多くの従業員が公平に制度を利用できるように物件数を確保する必要があります。社有社宅を事業拠点ごとに設置する場合には、物件の購入または建築に膨大なコストがかかります。

管理する物件数が多くなるほど、維持管理や運用などにかかるコストも増えます。



大企業が社宅制度を導入するポイント

従業員のニーズや福利厚生の目的、事業体制などに応じて自社に合った社宅制度を導入することが重要です。


▼社宅制度の導入を検討する際のポイント

提供形態
検討するときのポイント
借上社宅
  • 従業員のニーズを踏まえた社宅の提供で満足度を高めたい
  • 事業拠点のエリアが大幅に再編される可能性がある
  • 家族構成が異なる従業員にも社宅を提供したい など
社有社宅
  • 事業拠点の再編が行われる可能性が少ない
  • 地方からの入社や転勤者を対象とした社宅の提供で、採用活動の促進、人事異動の円滑化を図りたい
  • 入居者同士のコミュニケーションを促進して組織の活性化を図りたい など


借上社宅は、従業員のニーズや世帯にあわせて提供しやすいことが特徴です。賃貸住宅を借り上げる形態のため、事業拠点の再編にも柔軟に対応できます。

一方で、社有社宅の場合は物件探しや賃貸借契約の手続きが不要となり、入社・転勤の際にスムーズに住宅が確保できます。ただし、企業が所有する住宅となるため、事業拠点の再編が行われる可能性が高い企業には不向きといえます。



まとめ

この記事では、社宅制度の導入状況について以下の内容を解説しました。


  • 社宅制度の導入状況
  • 大企業が社宅制度を導入するメリット
  • 大企業で社宅制度を導入するデメリット
  • 大企業が社宅制度を導入するポイント


大企業で社宅を導入すると、入社・転勤がスムーズになるほか、人材募集の拡充や税制面でもメリットが得られます。ただし、社宅担当者の負担につながったり、コストがかかったりする点が課題です。

社宅の管理・運営にはリソースと専門的な知識が求められるため、外部への委託することも方法の一つです。『リロケーション・ジャパン』の社宅管理サービスでは、社有社宅や借上社宅の運用管理をトータルサポートしています。社宅担当者の業務負担を軽減して、従業員の満足度向上にも貢献します。

詳しくは、こちらの資料をご確認ください。

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