
新リース会計基準の公表に伴う中小企業への影響
2024年に公表された新リース会計基準は、上場企業だけでなく、中小企業の経営管理や社宅運用にも間接的な影響を及ぼします。特に人事・総務部や社宅管理担当者にとっては、借り上げ社宅や不動産契約の扱いがどのように変わるのかを把握しておくことが重要です。
この記事では、中小企業の立場から新リース会計基準の概要と実務への影響を詳しく解説します。
なお、新リース会計基準による借上社宅の会計処理への影響については、こちらをご確認ください。
新リース会計基準とは
新リース会計基準とは、2024年9月に公表されたリース取引に関する新しい会計基準であり、借手は原則としてすべてのリースについて、貸借対照表に「使用権資産」と「リース負債」を計上することが求められる点が特徴です。
従来、不動産の賃貸借契約や社宅契約は、リース資産・リース債務を計上しない「オペレーティング・リース」扱いが一般的でした。貸借対照表に資産・負債を計上せず、支払賃料を費用として処理するだけという形をとっていたため、財務諸表に十分反映されていないと指摘されてきました。
こうした課題を是正するため、国際会計基準(IFRS)と整合的な「使用権モデル」の考え方が取り入れられました。新リース会計基準での変更点として、借手は原則、すべてのリースをオンバランス化(使用権資産・リース負債を計上)することが求められます。そのため、一定の条件を満たす場合には不動産の賃貸借や社宅契約も対象になります。
本基準の導入は、単なる会計処理の変更にとどまらず、契約管理や社内フローの見直しにも影響を与える点がポイントです。
中小企業における適用対象
新リース会計基準は、すべての企業に一律で強制適用されるわけではありません。中小企業の多くは新リース会計基準の強制適用対象外です。原則として、上場企業、その連結子会社、会計監査人設置会社などが強制適用の対象となります。
一方で、会計監査人を設置していない中小企業等については、任意で会計監査人を置くことを定款で定めている場合を除き、新リース会計基準の強制適用対象外とされています。そのため、引き続き「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」に基づいた従来のリース会計処理を行うことが可能です。直ちに使用権資産やリース負債を計上する対応を求められるわけではありません。
ただし、親会社が上場企業である場合や、将来的にIPO(上場)を目指している場合には、連結決算や開示の観点から、新リース会計基準に沿った数値の提出を求められるケースがあります。中小企業であっても、自社の立場や将来の事業計画を踏まえ、影響の有無を整理しておくことが重要です。
会計処理と財務指標の変化
新リース会計基準の適用により、財務諸表の見え方が大きく変わります。借主は、一定の例外を除き、リース取引を「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上することが求められます。
これまで賃貸借として処理していたリース料や家賃は、単純な費用計上ではなくなり、「使用権資産」にかかる減価償却費と、「リース負債」に対応する支払利息に区分して計上されます。その結果、損益計算書における費用の性質や表示区分が変わる点が特徴です。
このオンバランス化により、貸借対照表では資産と負債の双方が増加するため、自己資本比率が低下する傾向があります。また、従来は販売費及び一般管理費として計上しいた支払家賃(社宅で福利厚生費として処理されるケースでも、区分上は販管費に含まれます)が、会計基準上は減価償却費と支払利息に振り替わることになります。そのため、費用の表示方法が変わる結果として、営業利益やEBITDAは見かけ上増加する場合があります。
このように、事業の実態が変わらなくても各種指標が変動する可能性があるため、金融機関や親会社などのステークホルダーに対して、変更内容や影響を丁寧に説明することが、これまで以上に重要となります。
リースの識別と不動産・社宅への影響
社宅管理担当者にとって特に重要なのが、どの契約が「リース」に該当するかという点です。契約名称が「賃貸借」であっても、特定の資産を一定期間にわたり使用する権利と支配権を有していると判断される場合には、リースとみなされる可能性があります。
この考え方は、事務所や借り上げ社宅にも及びます。特定物件を継続的に社宅として使用する契約は、使用権資産とリース負債の計上対象となる可能性があります。そのため、社宅や不動産の管理戸数が多い企業ほど影響は大きくなります。
一方で、リース期間が12ヶ月以内の短期リースや少額リースに該当するものについては、例外として従来どおりオフバランス処理が認められています。どの契約がオンバランス対象となるのかを早期に整理することが、今後の社宅契約の設計にも影響を与える重要なポイントです。
中小企業が準備すべき実務対応
新リース会計基準の強制適用対象外である中小企業であっても、事前の準備を進めておくことは大切です。将来的に親会社からの要請や金融機関対応、IPO(上場)準備などの場面で、新基準ベースの情報提出を求められる可能性があるためです。
まず取り組むとよいのが、既存の賃貸借契約の棚卸しです。不動産、社宅、車両、OA機器など、現在締結している契約を洗い出し、どの契約が新基準の影響を受ける可能性があるのかを整理します。これにより、オンバランス化した場合の影響額を概算で把握できます。
また、使用権資産の管理やリース負債の利息計算に対応できる会計フローや外部サービスの検討も重要です。さらに、今後の新規契約については、リース期間や解約条件が財務諸表に与える影響を意識した契約設計を行うことで、将来の負担を抑えることにつながります。
まとめ
この記事では、新リース会計基準が中小企業に与える影響について以下の内容を解説しました。
新リース会計基準の概要
中小企業における新リース会計基準の適用対象
新リース会計基準による会計処理と財務指標の変化
リースの識別と不動産・社宅への影響
中小企業が準備すべき実務対応
新リース会計基準は、中小企業に直ちに強制適用されるケースは限定的ですが、社宅や不動産契約を多く抱える企業ほど間接的な影響を受けやすい制度です。特に借り上げ社宅は、リース識別や契約条件次第で財務諸表への影響が大きくなります。
自社の賃貸借契約を一度整理し、新基準が求められた場合にどの程度影響が出るのかを把握しておくことです。そのうえで、社宅管理や契約設計に強い外部パートナーの活用を検討することが、実務負担を抑える有効な選択肢となります。
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