
借上社宅で起こりやすい賃貸トラブルとは? 担当者が知っておくべき解決策と予防法
従業員のエンゲージメント向上や、転勤時のスムーズな住環境整備に欠かせない「借上社宅制度」。福利厚生として人気の高い制度ですが、実際の運用では、原状回復費用をめぐるトラブルや近隣住民からのクレームなど、さまざまな問題に直面することがあります。
こうしたトラブルが発生するたびに、人事・総務担当者は、管理会社や貸主と従業員の間に入って調整を行う必要があります。自社で社宅管理を行っている企業では、専門知識が求められる対応に追われ、本来のコア業務に支障が出るケースも見受けられます。
この記事では、借上社宅の運用で起こりやすい賃貸トラブルをカテゴリ別に紹介し、社宅管理担当者が押さえておきたい解決策と予防法について解説します。
借上社宅で起こりやすい賃貸トラブルの全体像
借上社宅の運用が一般的な個人賃貸借契約と大きく異なる点は、契約の主体(名義人)が「企業(法人)」という点です。そのため、物件内で何か問題が発生した場合、貸主や管理会社からの連絡や修繕の請求は、契約者である企業宛てに届きます。担当者は、実際に居住している従業員と、貸主・管理会社との間に立ち、三者間の調整役として対応しなければなりません。
借上社宅で発生しやすいトラブルは、主に以下の3つに分類されます。
▼借上社宅で発生しやすいトラブル
種類 | トラブルの概要 |
金銭トラブル | 従業員が負担すべき費用の未納、退去時の原状回復費用や敷金精算をめぐる意見の相違 |
退去時の手続きトラブル | 急な人事異動や退職に伴う退去遅延、法人契約から個人契約への切り替え希望に関する調整 |
居住中の生活トラブル | 騒音やゴミ出しルール違反による近隣からのクレーム、室内の設備故障に伴う修理費の負担 |
これらのトラブルは、発生後の対応だけでは担当者様の負担が増すばかりです。トラブルの構造を正しく理解し、社宅規程(内規)や入居時のルールなどを整備し、事前に対策をしておくことが重要です。
金銭トラブル(未納・原状回復費用・敷金)
借上社宅特有の金銭トラブルとして、従業員が負担する費用の未納や、退去時の原状回復費用をめぐる貸主・管理会社との認識の相違があります。
企業が家賃を支払っていることから、「会社がすべて負担してくれる」と誤解されやすい点も、トラブルの原因の一つです。
個人負担分費用の未納トラブル
毎月の家賃本体は企業の口座から引き落とされるケースが一般的ですが、物件によっては「駐車場代」「町内会費・自治会費」「一部のライフライン料金(水道光熱費など)」を、従業員が個別に支払う必要があります。
これらの個人負担分の費用が未納になるケースも少なくありません。背景には、「会社がすべて払ってくれると思っていた」という従業員の認識のズレがあります。未納状態が続くと、管理会社から企業へ督促が届き、契約者である企業の信用問題につながる可能性もあるため注意が必要です。
原状回復費用・敷金に関するトラブル
退去時に揉めやすいのが、原状回復費用の精算をめぐるトラブルです。経年劣化(通常損耗)によるものか、入居者の過失(故意・不注意)によるものかで、負担区分の認識が分かれることがあります。
国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に基づき、経年劣化や通常損耗の修繕費用は貸主(オーナー)負担、故意・過失や善管注意義務違反による損耗は借主(企業・従業員)負担となるのが原則です。
詳細な原状回復費用の考え方や退去費用の種類については、以下の記事も併せてご確認ください。
出典:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について』
【対応策】費用ルールの明文化と負担区分表
未納や原状回復費用に関するトラブルを防ぐためには、社宅規程で個人負担となる費用の範囲を明確にし、入居前に「社宅使用誓約書」などで従業員から同意を得ることが有効です。
原状回復費用の負担区分については、以下のような目安を従業員に周知しておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。
▼原状回復費用の負担区分の目安
損耗・汚れの例 | 原因 | 負担者 |
家具の設置による床のへこみ、日焼けによるクロスの変色など | 経年劣化・通常損耗 | 貸主 |
たばこのヤニ汚れ、ペットによる傷や臭い、カビやシミの放置拡大など | 故意・過失 | 借主(企業・従業員) |
引越し作業等で生じた引っ掻き傷、清掃不足による油汚れ | 故意・過失・善管注意義務違反 | 借主(企業・従業員) |
残置物・備品持ち出しトラブル
退去時に個人の私物を室内に残したり、備え付けの備品を持ち出したりするトラブルも少なくありません。
よくある事例と発生原因
自分で購入・設置した照明器具や物干し竿、エアコンなどを置いたまま退去する「残置物」のトラブルがあります。一方、備え付けの備品(エアコンのリモコンや照明など)を引越し荷物と一緒に持ち出してしまう「備品持ち出し」トラブルも起きています。
これらは、入居者が「私物」と「物件の備え付け」の区別が十分にできていないことが原因となるケースが多いのが特徴です。
【対応策】三者立ち会いと入退去時記録の運用
入居時に備品リスト(設備台帳)を作成し、入居者に確認のうえ署名してもらう運用が有効です。
また、入居時および退去時に、部屋の傷や汚れ、設備の状況をチェックリストや写真で記録しておくことをおすすめします。
可能であれば、退去時に企業担当者(または代行業者)、入居者、管理会社の「三者立ち会い」を実施することで、認識のずれを未然に防ぐことができます。
退職・異動時の退去トラブル
退職や急な人事異動に伴う退去では、退去期間や契約の切り替えをめぐって調整が難航することがあります。
退去遅延と猶予期間の設定
「次の家が見つかるまで待ってほしい」と要望され、予定どおりに退去が行われないケースがあります。退去が遅延すると、退職後も会社が余分に家賃を負担する可能性があります。
そのため、社宅規程で「退職日から14日以内」「退職月内」など、具体的な猶予期間をあらかじめ定めておくことが重要です。
個人契約への切り替え希望への対応
法人名義で借りていた物件について、「退職後も住み続けたい」という申し出がある場合、貸主の合意があれば個人契約への切り替えが可能なケースもあります。
これについて、企業として原則不可とするか、条件付きで認めるのかを事前に決めておく必要があります。認める場合は、「貸主の承諾が必要であること」「会社は切り替え手続きに関与しないこと」などの条件を明記してください。
【対応策】規程での退去期限・契約切替条件の明記
退去期限、猶予期間、個人契約への切り替え可否については、あらかじめ社宅規程に記載しておくことが重要です。
また、退職が決定したタイミングで誓約書を締結しておくことで、スムーズな退去を促すことができます。
近隣トラブル・設備故障
借上社宅では、金銭面や退去時以外にも、日常生活に関するトラブルが発生します。
騒音・生活マナートラブル
生活音やゴミ出しのルール違反、ペットの無断飼育などによって、近隣からのクレームが入ることがあります。
当事者間で解決が難しい場合は、契約主体である会社としての対応が求められます。企業は速やかに事実確認を行い、必要に応じて従業員への注意・指導などを行います。
設備故障トラブル
エアコンや給湯器などの設備が故障した際、修理費の負担区分をめぐってトラブルになることがあります。
経年劣化による自然故障なのか、使用者の過失による故障なのかによって負担区分が変わるため、速やかな状況確認が必要です。
煩雑なトラブル対応を軽減する社宅管理のアウトソーシング
社宅のトラブル対応を自社のみで行うのは、担当者にとって大きな負担となります。
トラブル対応は社宅担当者の大きな業務負担に
トラブルが発生するたびに、管理会社・物件オーナー・従業員の間で調整を行う必要があります。
特に、原状回復費用の精査や交渉には専門知識が必要であり、通常業務を圧迫する要因となります。
リロケーション・ジャパンの「借上社宅プラン」によるサポート
リロケーション・ジャパンの「借上社宅プラン」では、転貸方式により企業に代わって当社が貸主と契約します。
入居中のトラブル対応や退去時の原状回復費用に関する交渉など、煩雑な社宅管理業務を包括的にサポートいたします。
専門的な知識に基づく対応により、社宅担当者の業務負担軽減とリスク低減を実現し、最大90%以上の工数削減に貢献します。
まとめ
この記事では、借上社宅で起こりやすい賃貸トラブルについて以下の内容を解説しました。
借上社宅で起こりやすい賃貸トラブルの全体像
金銭トラブル(未納・原状回復費用・敷金)
残置物・備品持ち出しトラブル
退職・異動時の退去トラブル
近隣トラブル・設備故障
煩雑なトラブル対応を軽減する社宅管理のアウトソーシング
借上社宅の運用には、金銭面や退去時、生活マナーなどさまざまなトラブルがつきものです。こうしたトラブルを防ぐには、社宅規程でルールを明文化し、原状回復費用の負担区分などを事前に従業員へ周知しておくことが重要です。
実際にトラブルが起きた場合は、管理会社やオーナーとの交渉、従業員との調整などが必要になります。これらを自社だけで対応するのは、人事・総務担当者にとって負担になりやすい業務です。そのため、社宅管理アウトソーシングを活用する企業も増えています。
『リロケーション・ジャパン』では、独自の「転貸方式」を採用し、企業に代わって当社が貸主と直接契約します。入居中のトラブル対応はもちろん、退去時に発生しやすい原状回復費用の確認や交渉まで、社宅管理業務を包括的にサポートします。
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