社宅の修理・原状回復費用は誰が負担する? トラブルを防ぐ方法
社宅を含めた賃貸住宅の懸念事項の一つに、退去後に必要となる修理費用が挙げられます。一般的にこの修理費用のことを、“原状回復費用”と呼びます。
普通の物件であれば賃貸人と賃借人の問題ですが、不動産会社や個人を問わず、貸主から借り入れた物件を従業員に貸し出す借上社宅の場合は企業も関係します。
そのため、「修理・原状回復費用は誰が負担するのだろう」「トラブルを回避するために原状回復について把握しておきたい」という担当者の方は多いのではないでしょうか。
この記事では、社宅の原状回復の概要や、費用の負担、トラブルを防止するための方法について解説します。
目次[非表示]
- 1.原状回復とは
- 2.社宅の原状回復費用は誰が負担するのか
- 3.原状回復費用に関するトラブルを防止する方法
- 3.1.社宅規程で明文化する
- 3.2.チェックリストで記録する
- 4.まとめ
原状回復とは
原状回復とは、賃貸住宅の退去時に、入居中に傷や汚れをつけた部分を入居時の状態に戻すことです。
国土交通省住宅局の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』では、原状回復を次のように定義しています。
▼原状回復の定義
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること
引用元:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
賃貸借契約において、退去時の原状回復費用に関する苦情やトラブルが発生することは少なくありません。
そのため、賃借人の故意・過失・不注意などで生じた傷や汚れは賃借人の負担になります。賃貸借契約の終了後は、賃借人が原状に戻した状態で賃貸人に返還しなければいけません。
一方、先述したガイドラインでは、通常の使用による損耗の範囲においては、賃貸人が原状回復費用を負担することが判決事例とともに示されています。そのため、現状では、ガイドラインに沿った原状回復費用の精算がなされるケースを基本として、賃貸人が負担する原状回復費用の割合が大きいといえます。
ただし、例外もあります。賃貸借契約を締結する際に、特約を結んでいれば、該当項目の原状回復費用は賃借人の負担になります。特約の内容を書類に明記して、貸借人の十分な認識と了承を得て契約することが重要です。
▼特約の例
- 退去時にハウスクリーニング代〇万円を賃借人負担とする
- 台所・浴室の消毒代〇万円を賃借人負担とする など
出典:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
社宅の原状回復費用は誰が負担するのか
従業員が社宅を退去時に、賃借人が負担する原状回復費用が発生する場合、従業員と企業のどちらが費用を負担するのかについてのルールは企業によって異なります。企業が5割負担、または従業員が全額を負担するなど、企業によって対応の仕方はさまざまです。
原則として、経年劣化では原状回復費用は発生しませんが、入居者の故意、重過失、不注意などで生じた傷や汚れによる原状回復費用は、賃借人の負担となる場合がほとんどであるため、従業員が負担するのが一般的です。
しかし、借上社宅は企業が不動産会社と契約して従業員へ貸し出しているため、事前に社宅規程や内規に、原状回復費用の負担区分を明文化しておく必要があります。
原状回復費用に関するトラブルを防止する方法
国土交通省住宅局からガイドラインが公表されていることから、原状回復をめぐるトラブルが多いことが分かります。企業の社宅においても、原状回復費用に関するトラブルを未然に防ぐための対策の実施が求められます。
社宅規程で明文化する
先述のとおり、従業員が社宅を退去する際の原状回復費用についてのルールは、各企業に委ねられています。そのため、社宅規程等で明文化しておくことが重要です。
▼社宅規程の例
- 従業員と企業の原状回復費用の負担区分
- 企業が負担する項目
- 従業員が負担する原状回復費用
社宅規程は、原状回復のガイドラインの考え方に沿って作成するのが妥当といえます。
チェックリストで記録する
損耗の場所や発生時期などの事実確認を行うことが困難であることから、当事者間のトラブルに発展することがあります。
入居時と退去時に、チェックリストなどを参考材料の一つとして記録しておくことで、トラブルの防止につながります。
▼チェックリストのイメージ図
画像引用元:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
出典:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
まとめ
この記事では、社宅の原状回復費用に関する以下の情報について解説しました。
- 原状回復の基本概要
- 社宅における原状回復の費用負担について
- 原状回復費用をめぐるトラブルを防ぐ方法
社宅退去時に発生する、従業員の故意・不注意などによってできた傷や汚れの原状回復費用は、従業員が負担するのが一般的です。
原状回復費用をめぐる企業・従業員間のトラブルを防ぐには、事前に社宅規程を定める、チェックリストを活用する、などの対策を行うことが大切です。
また、こちらの記事では、社宅で起こりやすいトラブルと、社宅担当者に求められる対応について解説しています。併せてご覧ください。
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