
不動産会社の繁忙期と閑散期とは? それぞれの時期に物件を探すメリット・デメリットを解説
※2025年11月25日更新
不動産賃貸業には、繁忙期と閑散期があります。そのため、時期によって物件数や物件価格が異なります。借上社宅を提供している企業では、時期を考慮せずに物件を探すと費用が高くなったり、希望する物件が見つからなかったりする可能性があります。
人事総務部門のご担当者さまのなかには、「不動産会社の繁忙期と閑散期を知って、適切な価格で物件を借りたい」「不動産会社の繁忙期でも、費用を抑えて物件を押さえたい」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、不動産会社における繁忙期と閑散期の概要やそれぞれの時期に物件を探すメリット・デメリット、繁忙期に物件の費用を抑える方法、法人契約における早期物件の確保ポイントについて解説します。
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不動産の繁忙期と閑散期
賃貸市場における不動産は1年間を通して取引が行われていますが、繁忙期と閑散期が存在します。
繁忙期と閑散期では、不動産会社の混雑具合だけでなく、流通する物件数やほかの入居希望者との競争率に違いが生じます。
一般的に、繁忙期は2〜3月と9〜10月、閑散期は5〜8月といわれています。
▼不動産における繁忙期と閑散期の時期
2~3月 | 大学の合否や企業における早期の異動辞令などによる繁忙期 |
5~8月 | 春に出た優良物件が埋まり、市場に流通する物件数が少なくなる閑散期 |
9~10月 | 企業の転勤シーズンと重なる繁忙期 |
また、不動産の契約形態別で見ると、繁忙期は以下のようなスケジュールが考えられます。
▼賃貸・売買・法人契約それぞれの繁忙期スケジュール
契約形態 | 繁忙期 | 備考 |
賃貸借契約 | 1〜3月 | 新学期・新年度の開始に向けて需要が高まる |
売買契約 | 1〜3月、9〜11月 | 新年度前やボーナス時期、年度末に駆け込み需要がある |
法人契約(社宅・オフィス) | 1〜3月、9月 | 年度末決算期に合わせたオフィス移転などがあるため9月も小規模な繁忙期になる |
さらに、総務省統計局の『サービス産業動向調査』によると、繁忙期と閑散期では、不動産会社の売上に以下のような差があることが分かります。
▼繁忙期と閑散期における不動産会社の売上
月 | 不動産取引業(百万円) | 不動産賃貸業・管理業(百万円) |
1~3月期 | 1,556,099 | 1,957,218 |
4~6月期 | 1,109,915 | 1,911,956 |
7~9月期 | 1,183,550 | 1,928,974 |
10~12月期 | 1,260,190 | 1,972,768 |
総務省統計局『「サービス産業動向調査」2024年(令和6年)4月分(速報)』を基に作成
繁忙期には不動契約取引が多く発生していると推測できます。
出典:総務省統計局『「サービス産業動向調査」2024年(令和6年)4月分(速報)』
繁忙期に物件を探すメリット・デメリット
不動産の繁忙期には、就職・転勤・進学により新生活に向けた動きが活発になります。入退去者が多いことから市場に物件が流通しやすいものの、入居希望者も多くなり競争が激しくなります。
メリット:選択肢が豊富で新着情報が多い
この時期は卒業、就職、異動、企業の年度末の動きなどにより、多くの人が現行の物件から退去し、結果として大量の空室情報が市場に出回ります。繁忙期に物件を探すメリットは以下が挙げられます。
- 物件情報が多く、優良物件を見つけられる可能性がある
- 繁忙期に合わせて新築物件が建てられることがある
通常時よりも多くの物件が募集されることがあるため、間取り、築年数、設備、立地など、細部にわたる希望条件を妥協せずに満たす物件に出会える確率が高まります。
また、賃貸人やデベロッパーもこの需要の高まる時期に合わせて、新築物件や人気エリアの優良物件の募集を開始する傾向があります。普段はなかなか市場に出ない希少な物件や、条件のよい新着情報をリアルタイムで得られる可能性が高まります。
デメリット:競争率の高さと家賃上昇リスク
一方で、繁忙期に物件を探すデメリットは以下が挙げられます。
- 競争が激しく、物件をゆっくりと選ぶことができない
- 退去前物件も多いため、内見ができない物件も多く存在する
- 家賃や初期費用が通常期よりも高めに設定される傾向があり、契約条件の交渉が難しい
よい物件は早期に申し込みが入り、事実上『先着順』の状況が常態化しています。内見中にほかの希望者から申し込みが入るケースも珍しくなく、比較検討の時間が確保できず、迅速な意思決定を迫られることが多いのが現状です。
さらに、需要と供給のバランスにより、賃貸人側は強気な条件設定を行う傾向があり、家賃や初期費用(敷金・礼金)が通常期より高めに設定されるケースが目立ちます。このため、契約条件の交渉は困難で、提示条件を受け入れざるを得ない状況になりがちです。
加えて、不動産会社も繁忙期には担当者一人当たりの顧客数が増加し、きめ細やかな対応や迅速な内見手配が難しくなる場合があります。
こうした要因は、コスト意識の高い企業や慎重に物件を選びたい個人にとって、物件選定の大きな障害となる可能性があります。
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閑散期に物件を探すメリット・デメリット
閑散期(主に6~8月、11~12月)は不動産会社が落ち着いており、物件選びの相談がしやすい時期です。繁忙期と比較すると物件数は限られるものの、転居者の母数が少なく需給バランスが働くため、交渉によって費用を抑えられる場合があります。
また、繁忙期と比べて競争率が低く、自社のペースで物件選定を行いやすくなります。
メリット:家賃交渉・フリーレントなど条件改善が可能
閑散期に物件を探す大きなメリットは、賃貸人との交渉が有利に進みやすい点です。
- 空室が続いている物件であれば、家賃を交渉できる場合がある
- 不動産会社が落ち着いており、時間をかけて物件探しを行いやすい
- 敷金・礼金の一部免除や、「フリーレント」(入居後の一定期間の家賃を無料にする)といったサービスを引き出しやすくなる
閑散期は空室期間の長期化リスクが高まるため、賃貸人は早期に入居者を確保したいと考える傾向があります。この結果、家賃の数百円〜数千円程度の引き下げや管理費のサービスなど、家賃交渉に応じてもらいやすくなります。
また、不動産会社の営業担当者も比較的余裕があるため、顧客一人当たりに割ける時間が増え、丁寧な物件紹介や内見手配、契約サポートを期待できます。
さらに、敷金・礼金の一部免除やフリーレントなどの特典を引き出しやすく、特にフリーレントは初期費用を抑えたい企業や個人にとって、数万円〜数十万円のコスト削減につながる大きなメリットとなります。
デメリット:物件数が少なく選択肢が限定される
閑散期におけるデメリットは、市場に出回る物件数が少なく、選択肢が限定されてしまう点です。「この条件だけは譲れない」という優先順位を明確にし、物件を探す姿勢が重要となります。
- 繁忙期と比べて、条件に合う物件を見つけるのが難しい
- 繁忙期と比べて、空室や新築物件などの選択肢が限られる
- 物件探しが長期化するリスクがある
閑散期は賃貸市場の流動性が低下するため、人気エリアや特定条件(例:ペット可、築浅)を満たす優良物件は市場に出回りにくい状況です。
また、閑散期に残存する物件は、繁忙期に契約が成立しなかった背景を持つ可能性があり、立地や間取りの制約、家賃の過剰設定、設備の老朽化など、需要が低かった理由を考慮する必要があります。
この結果、希望条件を満たす物件探しが長期化するリスクが高まり、特に企業のオフィス移転など期限が明確なケースでは、計画全体の遅延につながる可能性があります。
不動産の繁忙期に物件の費用を抑える方法
企業においては人事異動の時期をずらすことが難しいことから、繁忙期に物件を探す必要があります。不動産の繁忙期に物件の費用を抑えるには、以下の方法が考えられます。
敷金・礼金がかからない物件を探す
敷金・礼金がかからない物件を選ぶことで、賃貸物件を借りる際の初期費用を抑えることができます。
敷金・礼金が求められる物件では、家賃の1~2ヶ月分の支払いが必要になるケースもあるため、物件を探す際に確認しておくことが必要です。
仲介手数料が安い不動産会社を利用する
仲介手数料が安い不動産会社を利用して物件を契約できれば、その分だけ費用を抑えることができます。
同じ物件であっても、契約する不動産会社によって仲介手数料は異なることがあります。複数の不動産会社の契約条件を比較することがポイントです。
フリーレント物件を活用する
フリーレント物件を活用することで、物件の家賃を抑えられます。フリーレント物件とは、入居後の数ヶ月間における家賃が無料となる物件です。
ただし、フリーレント物件には最低契約期間が定められていることがあります。急な転勤によって短期での退去が必要になると違約金を請求される場合もあるため、自社の人事状況と照らし合わせて判断することが重要です。
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法人契約における早期物件の確保ポイント
企業の社宅契約や支店開設に伴うオフィス契約など、法人契約は個人の賃貸借契約とは重要事項が異なります。特に繁忙期(1〜3月)は複数企業による物件確保の競争が激化するため、早期の情報収集と内見の実施が不可欠です。
また、法人契約においては、専門知識を有する仲介会社の活用や迅速な意思決定が、繁忙期における物件確保の成否を左右する重要な要素となります。
まとめ
この記事では、不動産の繁忙期・閑散期と物件探しについて以下の内容を解説しました。
- 不動産の繁忙期と閑散期
- 繁忙期に物件を探すメリット・デメリット
- 閑散期に物件を探すメリット・デメリット
- 不動産の繁忙期に物件の費用を抑える方法
- 法人契約における早期物件の確保ポイント
賃貸市場における不動産には繁忙期と閑散期があり、それぞれの時期に物件を探すメリットとデメリットがあります。新築や優良物件を確保したい場合は繁忙期、時間をかけて選びたい場合は閑散期に探すのが望ましいといえます。また、転勤シーズンに合わせて社宅を導入する場合は、早めの準備と対策が必要です。
繁忙期でも物件の費用を抑えたい場合には、敷金・礼金がかからない物件を探すほか、仲介手数料が安い不動産会社を利用したり、フリーレント物件を活用したりする方法が考えられます。また、社宅の導入にかかるさまざまな業務を自社のみで対応することが難しい場合には、社宅管理サービスを利用する方法もあります。
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