
内見をしないで賃貸借契約を締結できる? 借上社宅の内見ができない際の対処方法
※2025年3月11日更新
賃貸物件を借りる際には、直接物件まで足を運んで部屋の内部を確認する“内見”を行うことが一般的です。内見を行うことで、写真または物件資料で把握するのが難しい部屋の細部や日当たりなどの情報を把握できます。
しかし、借上社宅の場合にはお部屋探しができる期間中に、内見可能な物件がない場合や、遠方にある物件まで足を運べない場合など、内見を実施できないケースもあります。
また、既存物件においては、前入居者の退去予定期間から次回入居の募集が始まるため、募集中だからといって必ずしも内見可能とは限りません。特に不動産の繁忙期には、内見が可能になる前に次回の入居が決まる状況もあるため、内見待ちのままお気に入りの物件がほかの人に申し込みされてしまう可能性も考えられます。
借上社宅にする賃貸物件を探している人事総務部門ご担当者さまのなかには「内見をしないで賃貸借契約を交わせるのか」「内見をしないで契約する際にはどのように対処すればよいのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、内見をしないで賃貸借契約を締結するケースやリスク、内見ができない際の対処方法について解説します。
目次[非表示]
- 1.内見をしなくても賃貸借契約をさせてもらえる場合がある
- 2.内見を行わずに賃貸借契約を締結する場合の効果
- 3.内見をしないで賃貸借契約を締結することによる入居者へのリスク
- 3.1.写真や物件資料の印象と実物が異なる場合がある
- 3.2.周辺環境を確認できない
- 3.3.設備の劣化や傷を見逃してしまう
- 4.社宅を借り上げる際に内見ができない場合の対処方法
- 4.1.①対象の物件と同じ・似ている間取りの部屋を内見する
- 4.2.②地図や口コミサイトで周辺地域を調査する
- 4.3.③物件の場所まで出向いて近隣環境を確認する
- 4.4.④物件の内装・設備に関する詳細な資料をもらう
- 4.5.⑤オンライン内見を依頼する
- 5.内見できない物件を選ぶ場合の申し込み・契約
- 6.まとめ
内見をしなくても賃貸借契約をさせてもらえる場合がある
賃貸借契約は、内見を実施しなくても締結することがあり得ます。内見なしでの賃貸借契約が生じるケースとしては、以下が考えられます。
▼賃貸物件の内見を実施しないケース
- 新築工事やリフォームの実施中で、部屋への立ち入りができない場合
- 物件が遠方にあり、現地に出向くことが難しい場合 など
内見を行わずに賃貸借契約を締結した場合、さまざまな効果が期待できる一方で、写真や物件資料の情報のみで契約することによるリスクも生じます。
内見を行わずに賃貸借契約を締結する場合の効果
内見を行わずに賃貸借契約を締結する場合、物件を探している人や企業にとって以下の効果につながると考えられます。
▼内見を行わずに賃貸借契約を締結する場合の効果
- 内見できない物件を選択肢に含められる
- 遠方の物件を契約しやすくなる
内見を行わずに賃貸借契約が締結できる場合、居住中の物件や建設中で内見できない物件などを物件探しの選択肢に含めやすくなります。
加えて、内見を行うために現地まで行く必要がなくなるため、遠方の物件を契約しやすくなります。現地までの移動時間や交通費、宿泊費なども抑えられます。
なお、内見せずに賃貸借契約を締結できるかは家主や管理会社、仲介会社次第です。物件を探している側が望んだとしても、必ず行えるわけではありません。
内見をしないで賃貸借契約を締結することによる入居者へのリスク
内見をしないで賃貸借契約を締結すると、住み始めてから「思っていた部屋と違った」と感じたり、写真や物件資料では把握できなかった問題が明らかになったりするリスクが入居者に生じます。
写真や物件資料の印象と実物が異なる場合がある
内見をしない場合、写真や物件資料で見た部屋の印象と実物が異なる可能性があります。
▼実物と印象が異なる例
- 写真では部屋の内部が広く見えるけれど、入居してみると狭く感じる
- 写真では明るく見えるけれど、入居してみると日光が入らずに暗い
また、不動産の情報には、写真や物件資料と実物が異なる場合に実物を優先する“現況優先”という但し書きが記載されていることがあります。
現況優先の但し書きがある場合には、写真や物件資料と実物が異なっていても現況のまま引き渡されることになります。
周辺環境を確認できない
遠方の物件で現地に足を運べないケースでは周辺環境を確認できないため、入居してから住みにくさやプライバシーの問題に気づくリスクがあります。
現地に出向かないと確認が難しい情報には、以下が挙げられます。
▼現地に出向かないと確認が難しい情報
- 隣家や周辺の施設からの騒音
- 日当たり
- 夜間の通行量
- 隣家や通行人による視線 など
設備の劣化や傷を見逃してしまう
内見をせずに写真または物件資料だけ確認を済ませると、設備の劣化や傷を見逃してしまうリスクが生じます。
物件資料に導入されている設備の種類が記載されていても、劣化状況や細かな傷などの情報については記載されていないこともあります。また、湿気によるカビや排水溝のにおいなどについても、現地でなければ確認が難しくなります。
社宅を借り上げる際に内見ができない場合の対処方法
社宅を借り上げる際に内見を実施できない場合には、その事情に応じてほかの確認方法を取り入れることが重要です。
①対象の物件と同じ・似ている間取りの部屋を内見する
対象となる賃貸物件がリフォーム中で内見ができない場合には、同じ建物にある同じ間取りの部屋を内見する方法があります。
また、新築工事中でほかの物件も内見できない場合には、同じシリーズの賃貸物件の内見を依頼して、間取りや広さを確認する方法もあります。別の部屋を代わりに内見をすることで、写真や物件資料では把握しにくい情報を収集できます。
②地図や口コミサイトで周辺地域を調査する
物件が遠方にあり現地に足を運べない場合には、地図や口コミサイトで周辺地域を調査する方法があります。
▼地図や口コミサイトを用いて確認できること
- 周辺道路の規模から交通量を推測する
- 日光を遮る高い建物がないかを確認する
- 生活に利用する施設までの距離を確認する
- 対象の物件に住んでいる、または住んでいた人の口コミから、物件の管理状況や入居者同士でのトラブルの有無を確認する
物件の周辺地域を調査することで、その地域の治安や生活環境を調査して、暮らしやすい場所かどうかを判断する一助となります。
③物件の場所まで出向いて近隣環境を確認する
物件までの距離が遠くなければ、物件の場所まで直接出向いて近隣環境を確認する方法が有効です。
物件の周辺を実際に歩いてみることで、地図や口コミサイトだけでは分かりにくい情報についても確認できます。
▼現地で確認できる近隣環境
- 物件周辺の騒音・におい
- 坂の有無や道路状況を踏まえた移動のしやすさ
- 夜間における道の明るさ・人通りの数 など
④物件の内装・設備に関する詳細な資料をもらう
不動産会社に物件の内装・設備に関する詳細な資料をもらうことで、内見できない物件でも詳しい情報が把握できます。
▼内装・設備に関する詳細な資料の例
- 設備の配置や製造年月日などを確認できる写真
- 導入予定の設備に関する詳細資料
- 物件の間取り図
- 建物の設計図・施工図 など
可能な限り多くの資料を確認することによって、部屋の様子が具体的にイメージしやすくなります。
⑤オンライン内見を依頼する
遠方にある物件で現地に出向くことが難しい場合や、現地で内見するスケジュールを確保できない場合には、オンライン内見を依頼することも一つの方法です。
オンライン内見とは、不動産会社のスタッフが現地に足を運んで、ビデオ通話を介して入居希望者に物件を案内するサービスのことです。
現地に行かずに物件の内部をオンラインで確認できるため、写真や物件資料と比べると内部の劣化状況、日当たりなどを把握しやすくなります。
オンライン内見を依頼する際は、確認したい内容を不動産会社のスタッフに伝えておくことがポイントです。
なお、オンライン内見の注意点はこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
内見できない物件を選ぶ場合の申し込み・契約
内見できない物件に決める場合、内見と申し込みの順序を入れ替える“先行申込”と、内見せずに賃貸借契約を締結する“先行契約”の二つの方法が考えられます。
なお、先行申込や先行契約が行えるタイミングは管理会社や仲介会社側の判断となり、入居者側では決められません。
先行申込
先行申込とは、内見の前に入居の申し込みと入居審査を行う方法です。
先行申込をすることで、まだ内見できない物件について、内見が可能になるよりも早い段階で申し込めます。
先行申込の場合、可能になり次第内見を行います。内見をしたうえで物件が気に入らなければ、キャンセルが可能です。
先行契約
内見せずに賃貸借契約を締結することを、先行契約と呼びます。
先行契約においては、入居の申し込みや入居審査、契約書の署名捺印までを内見せずに行います。先行契約のあとでキャンセルする場合は、違約金が必要です。
先行契約を行う際は、内見を行わずに賃貸借契約を締結するメリット・リスクを把握したうえで、内見以外の手段で情報を収集することが重要です。
まとめ
この記事では、借上社宅の内見について以下の内容を解説しました。
- 内見なしでの賃貸借契約の可否
- 内見を行わずに賃貸借契約を締結する場合の効果
- 内見をしないで賃貸借契約を締結することによる入居者へのリスク
- 社宅を借り上げる際に内見ができない際の対処方法
- 内見できない物件を選ぶ場合の申し込み・契約
賃貸借契約は内見をしなくても締結できる可能性があります。内見できない物件や遠方の物件を契約しやすくなる一方で、実物と印象が異なったり、写真や物件資料では分からなかった問題が明らかになったりするリスクも生じます。
このようなリスクを防ぐには、内見ができない事情に応じて、ほかの方法で物件や周辺環境について調査・確認することが効果的です。ただし、内見をした場合でも、見落としがあったり、入居後に周辺環境が変わったりするため、すべてのリスクを防ぐことを目的にせず、譲れない条件や最低限回避したいリスクだけを明確にして確認することが望ましいといえます。
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