
企業が防災対策に取り組む理由と社宅の対策方法について解説
企業は、自然災害が発生した場合に備えて対策を講じる必要があります。そのような対策のことを“企業防災”と呼び、災害被害を最小限に抑える“防災”と企業の活動維持・早期回復を目指す“事業継続”の観点から対策を考えます。
近年、在宅勤務やリモートワークが浸透しており、自宅である借上社宅を職場として利用するケースもあります。しかし、従来の防災対策では不十分な可能性も考えられることから、「社宅の防災対策を強化したい」と検討している担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、企業が防災対策に取り組む理由や実施の流れ、社宅における防災対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.企業に防災対策が求められる理由
- 1.1.法律の観点から考えられる理由
- 1.2.自然災害の観点から考えられる理由
- 2.企業が防災対策に取り組む際の流れ
- 3.社宅における防災対策
- 3.1.①非常用防災バッグの用意
- 3.2.②緊急避難場所やハザードマップの確認
- 3.3.③家具に転落防止金具の設置
- 4.まとめ
企業に防災対策が求められる理由
企業に防災対策が求められる理由は一つではありません。ここでは、法律と自然災害の2つの観点から理由を考えてみます。
法律の観点から考えられる理由
『労働契約法』第5条では、企業が従業員に対して安全に労働するための配慮を行うことが義務づけられています。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
引用元:e-Gov法令検索『労働契約法』第5条
実際に、防災に関する安全配慮を怠っていたことから、損害賠償責任があると判断されたケースもあります。対策が不十分であることで従業員や事業に被害が出ると、リスクマネジメントの低さを社会へアピールすることになるため、防災対策は欠かせない取組みといえます。
出典:e-Gov法令検索『労働契約法』
自然災害の観点から考えられる理由
日本が地震や台風、洪水などの自然災害が発生しやすい土地であるということも、防災対策が必要な理由の一つです。
内閣府の『令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査』によると、東日本大震災以降に発生した地震や水害などの自然災害が原因で、半数以上の企業が事業の継続に影響を受けていることが分かっています。
このような結果から、自然災害が発生しても事業を継続できるような対策を事前に整えておくことが重要です。
企業の防災対策として、以下のような取組みが挙げられます。
▼企業の防災対策の例
- 備蓄品の見直しと購入
- 安否確認・連絡のための電子システム・アプリの導入
- 安否確認や帰宅方法などの訓練
- 災害発生時のマニュアル作成
- BCP(事業継続計画)の策定 など
BCPの策定は、企業の防災対策のなかでも特に重要視されます。
出典:内閣府『令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査』
企業が防災対策に取り組む際の流れ
防災対策を立案・実行する際は、起こり得る災害や被害を想定して計画することが大切です。
自社だけではなく、自社が受ける被害により周辺の住民や建物などにどのような影響を及ぼすかという点も意識して対策を検討します。
また、運用状況や訓練などを踏まえながら、定期的な見直しを図り、随時アップデートを行うことも忘れてはいけません。
▼防災・事業継続対策の流れ
対策 |
流れ |
防災対策 |
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事業継続の対策 |
|
内閣府 防災情報のページ『防災 初めての方へ』『事業継続 初めての方へ』を基に作成
出典:内閣府 防災情報のページ『防災 初めての方へ』『事業継続 初めての方へ』
社宅における防災対策
在宅勤務やリモートワークが浸透した現在、従業員を災害から守り、被害を最小限に抑えるには、オフィスへの出勤を前提としていた従来の防災対策では不十分だといえます。
企業には、社宅に住んでいる従業員が安心して暮らしたり、働いたりできる環境を整備するための対策も求められます。
ここでは、社宅における3つの防災対策について解説します。
①非常用防災バッグの用意
企業名義で契約する借上社宅では、必要最低限の飲食料や備品を含んだ防災グッズを手配して、日ごろから従業員が安心して勤務できるように支援することが理想です。
災害時にすぐに持ち出せるように、入居時に防災グッズ一式をバッグに詰めて配布する方法もあります。
▼配布する防災グッズ例
- 飲料水
- 非常食
- モバイルバッテリー
- 防災ラジオ
- 防災ヘルメット
- 防災ライト
- 簡易トイレ
- 救急用品 など
水だけで調理できる米、乾パン、レトルト食品、缶詰などが代表的な非常食として挙げられます。災害時は断水の可能性もあるため、簡易トイレの用意も必要です。
②緊急避難場所やハザードマップの確認
緊急避難場所やハザードマップを、社宅に暮らす従業員が普段から目にする場所へ掲示して、確認するように伝えます。
従業員にハザードマップを確認してもらうことで、普段からリスクの高い場所を把握できるため、有事の際の行動シミュレーションに役立てられます。
また、実際の状況ですぐ行動に移せるように、定期的に避難訓練を実施することも重要な取組みです。
③家具に転落防止金具の設置
社宅に設置されている家具は、地震による二次被害を防止するために転落防止の金具で固定することも対策方法の一つです。
転倒・落下・移動防止の対策はネジ止めが基本で、強度を高めるならL字金具が適しています。物件によって間取り上ネジ止めが難しい場合や、借上社宅などで貸主の許可が得られない場合には、突っ張り棒や粘着マット、滑り止めシートなどの活用がおすすめです。
転落防止金具の設置以外では、ドアや避難経路を塞がないようにするためのレイアウトのポイントを従業員へ共有することも大切です。
まとめ
この記事では、企業の防災対策について、以下の内容を解説しました。
- 企業に災害対策が求められる理由
- 災害対策に取り組む際の流れ
- 社宅の防災対策
企業には、労働における従業員の安全確保のほか、災害時に事業への影響を最小限に押さえるための事業継続計画を策定しておくことも重要です。
また、テレワークの普及により、社宅をオフィスとして利用するケースも見られるため、社宅における安全対策やBCP対策も講じる必要性が高まりつつあります。新入社員や転勤者などは、不安やストレスを抱えていることが少なからずあると思いますが、防災対策を通じて、会社から大切にされていると感じてもらえたら嬉しいですよね。
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