BCP(事業継続計画)で不測の事態に備えを!
自然災害・火災・テロなどの非常事態はいつ発生するか分かりません。不測の事態が発生した際に、迅速に中核事業の継続あるいは復旧を図りつつ、企業の経営資産や従業員の生命を守るには、日頃から緊急時における事業継続のための対策や方法などを決めておくことが重要です。つまり、“BCP(事業継続計画)“を策定し、実行できるようにしておくことが求められます。
人事総務部門のご担当者さまのなかには、「どのような流れでBCPを策定・運用するのか」「緊急時に備えてどのような対策をとればよいのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、企業におけるBCPの目的や策定する流れ、具体的な対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.危機的状況に備える“BCP”とは
- 2.企業がBCPに取り組む目的
- 3.BCPを策定・運用する流れとポイント
- 3.1.①基本方針の立案
- 3.2.②リスクの洗い出しと優先順位の設定
- 3.3.③平常時における対策の策定
- 3.4.④緊急時における対応体制の整備
- 3.5.⑤計画の文書化と定期的な見直し
- 4.まとめ
危機的状況に備える“BCP”とは
BCPとは、自然災害をはじめとする非常事態が発生した際に、事業の継続や迅速な復旧を図るための対策と対応方法を定めた計画のことです。“Business Continuity Planning(事業継続計画)”の頭文字をとり、BCPと呼ばれています。
▼BCPの概念
画像引用元:内閣府『事業継続ガイドライン』
近年、日本では大地震や豪雨などの自然災害によって甚大な被害が発生しています。このような大規模な自然災害が発生すると、インフラや流通の停止によって事業活動に影響を及ぼすリスクがあります。
また、自然災害のみならず、パンデミックやテロ、サプライチェーンの途絶、サイバー攻撃などによっても事業の中断を余儀なくされることもあります。
このような不測の事態が発生した際に、経営資産への損害を最小限に抑えるには、BCPによって「どのように備えるか」「そのときに何をするか」を具体的に定めておくことが重要です。
BCPを策定する際は、災害別のリスクを踏まえてそれぞれの対策や対応方法、復旧手順などをマニュアル化することが求められます。
▼BCPマニュアルの種類
種類 |
例 |
自然災害 |
地震、津波、豪雨、台風、洪水、竜巻 など |
内的要因による災害 |
設備の不具合、システム障害、ヒューマンエラー など |
外的要因による災害 |
取引先の倒産、未知の感染症などの大規模流行、サイバー攻撃による情報漏えい・通信障害・テロ・事故などの人為的災害 など |
出典:画像引用元:内閣府『事業継続ガイドライン』
企業がBCPに取り組む目的
企業がBCPに取り組むことには、次の目的があります。
▼BCPに取り組む目的
- 従業員の命を守る
- 事業への損害を最小限に抑える
- 社会やサプライチェーンの信頼を高める
自然災害や感染症の流行の発生により、従業員の命と健康が脅かされます。BCPを策定して、防災計画・感染症対策や緊急時の対応フローなどを定めておくことで、従業員の安全を守ることにつながります。
また、災害が発生した際に事業継続と迅速な復旧を行える体制を整えることによって、事業への損害を最小限に抑えられます。自社だけでなく取引先や顧客への影響を抑えられるように取り組むことは、自社に対する信頼の向上にも結びつくと考えられます。
BCPを策定・運用する流れとポイント
BCPに取り組む際は、基本方針と運用体制を確立させたあとに日常的な運用のサイクルを回すことが重要です。
①基本方針の立案
BCPの基本方針は、災害などの非常事態に備えた具体的な対策と運用体制を検討する土台となります。自社の事業や取り巻く環境を踏まえたうえで、「何のためにBCPを策定するのか」「BCPで何を可能にするのか」といった目的と達成する目標を明確にします。
▼ポイント
- 経営方針や事業戦略と照らし合わせて自社が果たす役割・責任を考える
- 事業の中断による取引先や従業員、社会への影響を考慮して、BCPの対象とする中核事業と範囲を決める
②リスクの洗い出しと優先順位の設定
基本方針を策定したら、BCPの対象とする中核事業において、自社に大きな影響を及ぼすと考えられる災害とリスクをすべて洗い出します。
災害に対して想定されるリスクの発生頻度や影響度などを踏まえて、優先的に対応する業務の特定と順位づけを行うことがポイントです。
災害発生時のリスクや影響度を分析する際には、BIA分析を行うことがポイントです。BIA分析とは、評価軸と時間軸の2つを照らし合わせて、災害による被害の影響度を分析する方法です。
▼BIA分析
軸 |
分析対象 |
評価軸 |
|
時間軸 |
|
③平常時における対策の策定
災害発生時に優先的な対応が必要となる重要な業務とリスクを明らかにしたあとは、平常時の対策を検討します。
平常時から災害のリスクを踏まえた対策と経営資源の確保に取り組むことで、緊急事態が発生した際に事業継続または早期の復旧につなげられます。
▼平常時の対策例
- オフィスや作業場所における建物・設備の安全対策
- 電気・ガス・水道が止まった際の代替設備の準備
- 通信障害が発生した際の連絡手段の確保
- サーバ・システムが停止した場合の切り替え手段の整備とバックアップの実施
- 災害用備品や食料品、衛生用品の備蓄
- 防災拠点としての機能を持つ社宅の導入 など
④緊急時における対応体制の整備
災害発生時に迅速な初動対応をとれるように、要員を配置して社内体制を整備します。部署またはチームごとに責任者や役割分担を決めておくことで、緊急時の混乱を防いで一人ひとりが速やかに行動・判断できるようになります。
▼ポイント
- BCPの発動基準を明確にして、災害対応における各部署の役割やフローをまとめたマニュアルを作成する
- 責任者が不在の場合に備えて権限譲渡や代行順位を定める
- オフィス内外での避難場所・避難経路を共有する
- 従業員とその家族の安否確認方法と報告先を定める
また、緊急時の対応体制を整備したあとは、各役割・フローに応じて行動できるように社内で教育・訓練を実施することも重要です。
なお、企業が防災対策に取り組む理由と社宅の対策方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
⑤計画の文書化と定期的な見直し
平常時の対策と緊急時の対応について実施計画を定めたあとは、文書化して組織全体で共有します。
必要に応じて部署・拠点別・役割別のマニュアルを作成しておくと、従業員自身が災害時にとる行動が明確になります。文書化した計画どおりに実行されているかどうか、運用状況を検証して定期的に見直しを行います。
まとめ
この記事では、BCPについて以下の内容を解説しました。
- BCPの重要性と種類
- 企業がBCPに取り組む目的
- BCPを策定・運用する流れとポイント
自然災害やパンデミック、サイバー攻撃などの非常事態が発生した際に、従業員と経営資源を守り事業継続と被害の最小化につなげるには、BCPの策定・運用が重要になります。
BCPの策定・運用に取り組む際は、基本方針と運用体制を定めたうえで、日常的に運用のサイクルを回すことがポイントです。
また、災害発生時の防災拠点や業務継続の場として社宅を導入する方法もあります。社宅は、社内インフラの代替設備や非常食の備蓄、帰宅できない従業員の宿泊施設などに役立てられます。
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詳しくは、こちらの資料をご確認ください。
なお、社宅の火災保険についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。