引越し費用の値上げが起こる理由。社宅へ入居する際の負担軽減対策
入社や転勤に伴って現在の住居から引越しが必要になった際に、従業員が「引越し費用が負担となり心配」「予算を超えてしまい、引越しができなくなる」などの悩みを抱えていることがあります。
特に近年では、引越し費用の値上げによって従業員の金銭的な負担となっている事例も少なくありません。また、企業が引越し費用の一部を補助する場合にも、値上げによって企業側の負担増加につながっていると考えられます。
企業の人事総務部門のご担当者さまのなかには「引越し費用の値上げはなぜ起こるのか」「引越し費用の負担を抑えるための対策はないのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、引越し費用の決まり方や値上げが起きている理由、金銭的な負担を軽減するための対策について解説します。
なお、引越し難民になる原因や対策についてはこちらの記事をご確認ください。
目次[非表示]
- 1.引越し費用の決まり方
- 2.引越し費用の値上げが起こる理由
- 2.1.引越し会社の繁忙期
- 2.2.エネルギー価格の高騰
- 2.3.人手不足の深刻化
- 3.社宅の入居による引越し費用の負担を軽減する対策
- 3.1.①繁忙期を避ける
- 3.2.②荷造りに関するマニュアルを従業員に周知する
- 4.まとめ
引越し費用の決まり方
引越し会社が提示する引越し費用は、以下の3つの項目から構成されています。
▼引越し費用に含まれる項目
- 基準運賃
- 実費
- 付帯サービス料 など
基準運賃は、トラックによる運送に対して定められた標準的な運賃を指しており、荷物を運ぶ時間や距離、トラックの大きさによって決定されます。2020年4月からは国土交通省によって標準的な運賃が告示されているため、引越し会社ごとに大幅に変動することはありません。
ただし、休日や深夜・早朝に輸送する場合には、2割の運賃割増率が定められているほか、当日に待機時間が発生した場合には追加料金が請求されることがあります。
実費は、引越し作業にかかる費用に当たり、燃料費や有料道路の走行費、荷役・荷造りなどの運搬以外にかかる人件費が含まれます。また、付帯サービス料は、クーラーの取りつけやピアノの輸送など、引越しの際に付帯して行う業務のサービス料を指します。
引越し費用に含まれる3つの項目のうち、実費と付帯サービス料については引越し会社や外部環境によって変動しやすいとされています。また、同じ方面の引越しが同日にあるかといった理由で引越し費用が変動することもあります。
出典:近畿運輸局『引越料金のしくみ』/国土交通省『トラック輸送の「標準的な運賃」が定められました』
引越し費用の値上げが起こる理由
引越し費用の値上げが起こる理由には、引越しのタイミングによるものと社会的背景による影響が挙げられます。
引越し会社の繁忙期
引越し会社では、繁忙期以外の期間に割引を行い、繁忙期には相対的に値上げを行うことがあります。
引越し会社の繁忙期は、入社や転勤などのタイミングと重なる3〜4月・9〜10月となっており、特に3月中旬から4月初旬にかけては引越しの依頼が集中します。
▼2022年度における引越し件数
画像引用元:国土交通省『引越時期の分散に御協力をお願いします!』
なお、繁忙期ではドライバーや車両の確保が難しくなることから、希望する日程で引越しの予約が取れなくなることも想定されます。
出典:国土交通省『引越時期の分散に御協力をお願いします! 』
エネルギー価格の高騰
近年、エネルギー価格が世界的に高騰しており、運送時における燃料価格の上昇に伴って引越し費用の値上げが行われるケースが見られています。
燃料価格は引越し事業を含むトラック運送の主要費用となるため、経営に与える影響は大きいといえます。
▼軽油価格の推移
画像引用元:経済産業省『我が国の物流を取り巻く現状と取組状況』
エネルギー価格が高騰している背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大から世界経済の回復に伴って原油の需要が高まっていることや、産油国の一部で生産が停滞していることが関係しています。
出典:農林水産省『原油価格高騰対策』/経済産業省『我が国の物流を取り巻く現状と取組状況』
人手不足の深刻化
引越し費用の値上げには、物流業界の人手不足も関係しています。
引越し事業を含む物流事業は慢性的な人手不足となっており、トラックドライバーの有効求人倍率は全産業平均と比べて約2倍も高くなっています。
▼トラックドライバーにおける有効求人倍率の推移
画像引用元:国土交通省 中部運輸局自動車交通部『物流2024年問題について』
人手不足が深刻化する背景には、労働環境や業務負荷などによって人材の採用が難しいことが考えられます。なかでもドライバーの年収は、全産業平均と比べて5~10%低い状況です。
▼トラックドライバーにおける年間所得額の推移
画像引用元:経済産業省『我が国の物流を取り巻く現状と取組状況』
物流事業者には、人材の確保に向けた賃金の見直しが求められており、引越し会社においては原資となる引越し費用の値上げが行われると考えられます。
さらに、2024年4月1日からは、働き方改革による改正労働基準法が物流事業にも適用されます。ドライバーに対して時間外労働の規制が設けられることで、1日に運搬できる荷物の量が減少して、引越し会社の売上・利益の減少につながる可能性が懸念されています。
ドライバーに対する労働時間の規制による売上の減少に対応するために、引越し費用が値上げされることが考えられます。
出典:国土交通省『物流2024年問題について』『物流の「2024年問題」とは』/経済産業省『我が国の物流を取り巻く現状と取組状況』
社宅の入居による引越し費用の負担を軽減する対策
引越し費用の値上げは、社宅に転居する従業員への負担を招きます。入社・転勤に伴う社宅への入居をスムーズに進めるには、金銭的な負担を軽減するための対策が求められます。
①繁忙期を避ける
従業員が社宅に入居する時期を調整して、繁忙期を避けて引越しできるようにスケジュールを設定する方法があります。
特に3〜4月にかけての繁忙期を避けるには、2月以前または5月以降の引越しがよいとされています。
社宅を運用する企業においては、一般的に人事異動が行われる4月・10月の時期を一括で切り替えることは難しいものの、なかには異動の時期を分散させているケースも見られます。
また、以下の方法で引越しの混雑を避ける方法もあります。
▼引越しの混雑を避ける方法
- 新卒入社の研修終了時期をずらす
- 転勤者を対象に赴任期間を取り入れる
- 土日祝日ではなく平日に依頼する
- 月初・月末の依頼ではなく月中に変更する など
新卒で入社する従業員を対象とした社宅の契約や引越し手続きについては、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
出典:国土交通省『引越時期の分散に御協力をお願いします! 』
②荷造りに関するマニュアルを従業員に周知する
引越し費用を最小限に抑えるために、荷造りに関するマニュアルを作成して従業員に周知しておくことも一つの方法です。
引越し会社では、荷物の運搬のみを行うプランを用意している場合があります。荷造りは従業員自身で行い、引越し会社の人件費がかかりにくいプランを選択することで引越し費用を抑えられる場合があります。
また、トラックの運送にかかる基準運賃は、小型車・中型車・大型車などの大きさによって異なります。引越し費用を抑えるには、積載する荷物の量を減らして小さなトラックで運べるようにしておくことも必要です。
▼従業員に周知しておく内容
- 引越し先で使用しない家具・家電は前日までに処分する
- 粗大ゴミの処分方法と各地域での連絡先を記載する
- 余裕をもって荷造りをはじめ、当日に待機時間や引越しスタッフによる荷造りが発生しないようにする
なお、引越しが決まったときにやることについては、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
出典:国土交通省『トラック輸送の「標準的な運賃」が定められました』
まとめ
この記事では、引越し費用について以下の内容を解説しました。
- 引越し費用の決まり方
- 引越し費用の値上げが起こる理由
- 社宅の入居による引越し費用の負担を軽減する対策
引越し会社の繁忙期やエネルギー価格の高騰、トラックドライバーの人手不足などを理由に引越し費用の値上げが起こることがあります。
社宅に転居する際の引越し費用を抑えるには、引越し会社の繁忙期を避けることや、荷造りに関するマニュアルを従業員に周知して荷物の量や人件費を抑えることがポイントです。
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詳しくは、こちらの資料をご確認ください。