
2024年問題とは。物流業界からの影響で転勤者の引越しが困難になる?
引越し業界では、例年3月から4月にかけて就職や転勤、入学などによって新生活を始める人が増えることから、引越し需要が高まり繁忙期を迎えます。
人事異動による転勤に伴って従業員の引越しが行われる企業では、赴任日に間に合うように引越しの手続きを進める必要があります。
しかし、2025年の春に繁忙期が迫るなか、物流業界の“2024年問題”に直面することによって引越し業界にも影響があると懸念されています。これにより、企業の引越し手続きにも影響が生じる可能性があります。
この記事では、物流業界の2024年問題を踏まえたうえで、2025年の引越し業界にもたらす影響や人事総務部門が行える引越し難民対策について解説します。
なお、物流業界の2024年問題についてはこちらの資料にまとめております。ぜひご活用ください。
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2024年問題とは
2024年問題とは、2018年6月に施行された働き方改革関連法に基づく“時間外労働の上限規制”がドライバーに適用されることによって生じる諸問題です。
これまで自動車運送事業では、時間外労働の上限規制について5年間の猶予期間が設けられていましたが、2024年4月より適用が開始されました。それに伴せて、厚生労働省は『改善基準告示』(※1)を見直し、ドライバーの拘束時間・運転時間に関する基準も強化しています。
▼2024年4月からドライバーに適用された主な改正内容(赤字は改正部分)
改正内容 |
現行 |
2024年4月から |
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時間外労働の上限
(労働基準法)
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なし |
年960時間 |
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拘束時間
(改善基準告示)
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1日 |
原則13時間以内(最大16時間以内)(※2)
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原則13時間以内(最大15時間以内)
宿泊を伴う長距離運行は週2回まで16時間(※3)
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1ヶ月 |
原則293時間以内(※4)
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原則284時間・年3,300時間以内(※5)
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厚生労働省『物流の2024年問題について』を基に作成
※1…正式名称は『自動車運転者の労働時間等の改善のための基準』といい、ドライバーの健康確保や労働条件の向上を図るために定められた拘束・休息期間の基準。
※2…15時間を超える場合は1週間に2回以内
※3…14時間を超える場合は1週間に2回以内
※4…労使協定により、年3,516時間を超えない範囲内で320時間まで延長可
※5…労使協定により、年3,400時間を超えない範囲で310時間まで延長可
出典:厚生労働省『改善基準告示』『物流の2024年問題について』
物流業界に及ぼす3つの影響
ドライバーに時間外労働の上限規制が適用されたことで、物流業界では輸送力が低下して「モノが運べなくなる」といった影響が懸念されています。
▼物流業界に及ぼす影響
- 自動車運送事業者の利益減少
- ドライバーの不足
- 物流の停滞による機会損失
時間外労働が規制されると、1人のドライバーが運べる荷物量が減少します。人口減少に伴う慢性的な人手不足の問題を抱えている事業者では、現状の輸送力を維持するためのドライバーを確保できず、輸送サービスを縮小せざるを得なくなる可能性があります。その結果、自動車運送事業者の利益が減少することが考えられます。
また、ドライバーの時間外労働が減少すると、その従業員が受け取れる残業代も少なくなります。収入の減少を理由とした離職によってさらに人手不足が進行する可能性があります。
さらに、法令を遵守するために長距離輸送の見直しや納期の延長が必要になることで物流の停滞が起こり、輸送の需要に対して供給が追いつかなくなる問題も懸念点の一つです。
出典:国土交通省 東北運輸局『物流の「2024年問題」とは』/厚生労働省『物流の2024年問題について』
2025年の春から転勤者の引越しにも影響する可能性がある
2024年4月以降、ドライバーに対する時間外労働が規制されてから最初の引越し繁忙期を迎えるのが2025年の春です。
物流業界で「モノが運べなくなる」問題が懸念されるなか、引越し会社においても人手不足や労働時間の制限によってサービスの縮小が必要になり、繁忙期の引越し需要に対応できなくなるおそれがあります。
▼引越し会社への影響
- 対応できる引越し件数の減少
- 長距離輸送にかかる日数の延長
- 引越し料金の高騰 など
転勤に伴って引越しが必要になる従業員は、繁忙期に引越しの手配が難しくなったり、引越し費用の負担が増えたりする可能性があります。
企業が行える転勤者の引越し難民対策
2025年の春に迎える引越し業界の繁忙期に備えて、企業では転勤者が引越し難民にならないように対策を講じておくことが重要です。
➀引越しの準備期間を長く設定する
転勤の辞令を出す際には、赴任日までの準備期間を長めに設定しておくことが理想といえます。繁忙期には引越し枠が早く埋まりやすいため、余裕を持って準備期間を確保することで希望日時を調整しやすくなります。
また、引越し会社の予約は、希望日の2週間前ごろまでに完了させておくことが重要です。特に3月下旬は引越し需要が集中しやすいため、転勤が決まった段階ですぐに予約を取る必要があります。
なお、転勤の準備を円滑に進めるためのスケジュールについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
②家具・家電付きの社宅を提供する
生活に必要な家具・家電を備え付けてある社宅を提供することで、「最小限の荷物だけ自分で運ぶ」といった対応ができ、引越し自体が不要になることがあります。
また、引越会社に依頼する場合でも輸送する荷物量を減らせるため、引越し費用の負担を抑えることが可能です。
▼家具・家電付きの社宅を貸与する方法
- 企業が家具・家電を購入またはレンタルして備え付ける
- 家具・家電付きの賃貸物件を借り上げる
なお、家具・家電付き社宅のメリットや引越し難民への対策についてはこちらの記事でも解説しています。併せてご確認ください。
転勤者の引越しをスムーズにするサービスを紹介
リロケーション・ジャパンでは、転勤で引越しが必要になった従業員をサポートするさまざまなサービスを提供しております。転居先での物件探しから引越しの手配まで、従業員に一貫した支援を実施できます。
リロネット(物件探し・引越しサポート)
リロネットは、転勤者向けの借上社宅において物件探しや引越しの手配などをサポートするサービスです。
▼リロネットのイメージ
3月から4月にかけては、引越し需要の増加によって不動産業界も繁忙期を迎えるため、「なかなか物件が見つからず引越しが間に合わない」といった問題が生じやすくなります。
リロネットでは、全国3,700店舗以上の優良不動産会社と40社以上の引越し会社と提携しており、業界最大のネットワークを構築しています。繁忙期でも借上社宅の物件や引越しの手配をスムーズに行うことが可能です。
家具・家電付き賃貸
家具・家電付き賃貸は、全国にある住みたい物件に好きな家具・家電を選んで利用できるサービスです。不動産市場には現在、家具・家電が備わった物件の供給数は少なく、賃貸物件全体の約3%とごくわずかとなっています。
借上社宅の運用管理をアウトソーシングいただくことで、市場に流通する物件のほとんどに家具・家電を備え付けられるため、物件探しや引越しの負担を軽減できるようになります。
▼家具・家電付き賃貸の特徴
- 選択できる家具・家電の自由度が高い
- 賃貸物件のほぼすべてが対象
- 単身~世帯向けの間取りまで手配可能
- アパート・マンション・一戸建てなどの物件タイプに対応
詳しくは、こちらをご確認ください。
まとめ
この記事では、2024年問題について以下の内容を解説しました。
- 2024年問題の概要
- 2024年問題が物流業界に及ぼす影響
- 2025年の春から転勤者の引越しに及ぼす影響
- 企業が行える転勤者の引越し難民対策
- 物件探しや引越しをサポートするサービス
ドライバーの時間外労働が規制されたことで、2025年の春に繁忙期を迎える引越し業界においても、サービスの縮小や引越し料金の高騰などの影響がおよぶと懸念されています。
転勤者が引越し難民にならないためには、転勤の辞令から赴任日までの準備期間を長めに設定するほか、家具・家電付きの社宅を提供することも一つの方法です。
『リロケーション・ジャパン』では、社宅管理のアウトソーシングを承っております。転勤者の物件探しと引越しをサポートする『リロネット』や、市場に流通する物件を家具・家電付きにするサービスを提供しています。
2025年の春に発生する引越しをスムーズに進めるために、ぜひご活用ください。詳しくは、こちらの資料にまとめております。