
家賃高騰による社宅使用料の見直しについて。更新時の値上げに対応するには
近年、賃貸物件の家賃が高騰しています。福利厚生として、賃貸物件を利用した借上社宅を運用している企業においては、借上社宅の更新時にオーナーや管理会社から家賃の値上げを要請されるケースが想定されます。
社宅担当者のなかには、「どのようなケースで家賃の値上げが生じるのか」「借上社宅の家賃が値上げされた場合、社宅使用料はどうすればよいのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、家賃の値上げについて、傾向や行われるケース、オーナー・管理会社への対応、社宅使用料の見直し方を解説します。
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賃貸物件の家賃は上昇傾向にある
賃貸物件における1ヶ月当たりの家賃は、近年上昇傾向にあります。
居住用住宅における1ヶ月当たりの家賃は、2018年から2023年にかけて7.1%増加しています。また、1畳当たりの家賃についても、3,074円から3,403円に上昇しており、10.7%の増加が見られます。
▼借家の種類別における1ヶ月当たり家賃の推移
年次 |
総数(※1)(円) |
公営の借家(円) |
都市再生機構(UR)・公社の借家(※2)(円) |
民営借家(木造)(円) |
民営借家(非木造)(円) |
給与住宅(円) |
2003年 |
51,064 |
22,014 |
58,506 |
49,626 |
64,808 |
23,752 |
2008年 |
53,565 |
22,253 |
64,048 |
51,569 |
64,722 |
28,125 |
2013年 |
54,052 |
22,394 |
67,005 |
51,030 |
63,005 |
30,684 |
2018年 |
55,695 |
23,203 |
69,897 |
52,062 |
64,041 |
34,049 |
2023年 |
59,656 |
24,961 |
71,831 |
54,409 |
68,548 |
37,993 |
総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果 』を基に作成
このため、社宅として借り上げている賃貸物件についても、オーナー・管理会社によって家賃の値上げを要請される可能性があります、
※1・・・住宅所有の関係「不詳」を含みます。
※2・・・2003年までは「公団・公社の借家」として計上されています。
出典:総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果』
オーナー・管理会社が家賃の値上げを行うケース
オーナー・管理会社が家賃の値上げを行えるケースについては、『借地借家法』第32条で条件が規定されています。
税負担の上昇や経済状況の変化が生じていたり、周辺の家賃相場を下回っていたりする場合に家賃の値上げが認められます。ただし、値上げを実施するには借主の同意が必要です。
▼借地借家法第32条
(借賃増減請求権)
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
引用元:e-Gov法令検索『借地借家法』
出典:e-Gov法令検索『借地借家法』
固定資産税額が上昇した
固定資産税とは、土地・家屋・償却資産などの固定資産にかかる税金です。賃貸物件に関連する土地・家屋の固定資産税は3年ごとに評価替えが行われます。
土地・家屋の固定資産税は借地借家法第32条の対象となるため、固定資産税額が上昇することで家賃の値上げにつながる可能性があります。
なお、賃貸物件での家賃の決め方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:総務省『固定資産税』/e-Gov法令検索『借地借家法』
経済状況が変化した
借地借家法第32条では、経済状況の変化を理由とする家賃の値上げが認められています。
▼経済状況における変化の例
- 物価の上昇
- 人件費の上昇 など
物価や人件費が上昇すると、賃貸物件の運営・管理にかかる費用も上昇します。費用の上昇に合わせて、家賃の値上げを行うケースが考えられます。
出典:e-Gov法令検索『借地借家法』
周辺の家賃相場を下回っている
現在の家賃が周辺の賃貸物件の家賃相場を下回っている場合、オーナー・管理会社は借地借家法第32条に基づく家賃の値上げを行えます。
周辺の類似物件の家賃相場よりも家賃が低い物件を借上社宅に利用している場合、更新時に家賃の値上げを要請される可能性は想定しておく必要があります。
出典:e-Gov法令検索『借地借家法』
更新時に家賃の値上げ要請が行われたときの対応
賃貸物件の更新時に家賃の値上げ要請が行われた場合、資料の確認と交渉を行うことが重要です。
▼家賃の値上げ要請への対応
- 値上げの根拠となる資料を確認する
- 値上げ幅・時期の交渉を行う
オーナー・管理会社が値上げの根拠としている資料を見せてもらい、値上げが妥当かどうかを確認します。
家賃の値上げには借主の同意が必要です。資料を確認したうえで交渉を行うことで、値上げ幅を小さくしたり、値上げの時期を遅らせたりできる可能性もあります。
借上社宅の家賃が値上げされた場合の社宅使用料の見直し方
借上社宅として利用している賃貸物件の家賃が値上げされた場合、会社で従業員から徴収する社宅使用料も見直すことが考えられます。
①社宅使用料を一定の固定額にしている場合
社宅使用料を一定の固定額にしている場合、金額の設定に家賃額が含まれないため、会社側が望まない限りは社宅使用料を変更する必要がありません。
一方で、家賃と社宅使用料の割合が変動するため、社宅が給与として非課税になる割合を越えていないかについては確認することが重要です。
社宅が非課税となるには、賃貸料相当額の50%以上の社宅使用料を徴収する必要があります。
なお、家賃の負担割合や賃貸料相当額についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:国税庁『No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき』
②社宅使用料を家賃に対する割合で設定している場合
社宅使用料を家賃に対する割合で設定している場合、オーナー・管理会社による家賃の変更に合わせて、社宅使用料も同じ割合のまま変動します。
この際、従業員に使用料変更を通知して了承を取りつけるフローだと、時間や労力がかかります。社宅に入居する段階で、使用料の変更についてあらかじめ承諾を得ておくことが有効です。
まとめ
この記事では、借上社宅における家賃の値上げについて以下の内容を解説しました。
- 賃貸物件における家賃の傾向
- オーナー・管理会社が家賃の値上げを行うケース
- 更新時に家賃の値上げ要請が行われたときの対応
- 借上社宅の家賃が値上げされた場合の社宅使用料の見直し方
賃貸物件の家賃は上昇傾向にあります。固定資産税の上昇や経済状況の変化、周辺の家賃相場などの状況によっては、借上社宅として利用している賃貸物件の更新時に、家賃の値上げを要請される可能性が考えられます。
家賃の値上げを要請された場合は、値上げの根拠となる資料を確認したうえで交渉を行うと、値上げ幅を小さくしたり、値上げの時期を遅らせたりできる可能性があります。
『リロケーション・ジャパン』では、借上社宅の物件選びから契約、運用管理に至るまでをトータルサポートしています。オーナー・管理会社との交渉も含めて社宅担当者の負担を軽減します。
詳しくは、こちらをご確認ください。