社宅使用料は会社が何割負担する? 賃貸料相当額の計算方法や課税の仕組み
社宅制度の運用においては、会社が家賃の一部を負担したうえで社宅使用料を従業員から徴収します。社宅使用料は、一定の要件をかなえれば、会社が自由に設定することが可能です。
通常の家賃に対して設定する社宅使用料の割合によって、所得税の課税対象や社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額の扱いなどが変わります。
人事総務部門のご担当者さまのなかには「社宅使用料の負担割合はどのように設定するのか」「会社の負担割合によって所得税や社会保険料にどう影響するのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、社宅使用料の一般的な負担割合や、所得税の課税と社会保険料の算定に関する仕組みなどについて解説します。
なお、リロケーション・ジャパンの社宅管理サービスについてはこちらの資料をご覧ください。
目次[非表示]
- 1.社宅使用料の一般的な負担割合
- 2.所得税や社会保険料との関係性
- 2.1.所得税の課税に関する仕組み
- 2.2.社会保険料の算定に関する仕組み
- 3.そのほかの費用に関する負担区分
- 4.まとめ
社宅使用料の一般的な負担割合
通常の従業員に対する法定外福利厚生として社宅を貸与する際には、1ヶ月当たりの社宅使用料を賃貸料相当額の50%以上に設定することが一般的です。
賃貸料相当額とは、以下の1~3の合計額を指します。
▼賃貸料相当額
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(m2)/3.3(m2))
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
固定資産税の課税標準額とは、固定資産税の税額を決定する基礎となる金額を指します。
従業員に貸与している社宅の条件が以下の場合、賃貸料相当額は以下のように計算します。
▼固定資産税の場合の計算例
条件 |
例 |
総床面積 |
22m2 |
建物に対する固定資産税の課税標準額 |
700万円 |
敷地に対する固定資産税の課税標準額 |
900万円 |
▼賃貸料相当額の計算例
計算項目 |
計算式 |
1 |
700万円×0.2%=1万4,000円 |
2 |
12円×(22m2/3.3m2)=80円 |
3 |
900万円×0.22%=1万9,800円 |
1~3の合計 |
1万4,000円+80円+1万9,800円=3万3,880円 |
例えば、賃貸料相当額が3万3,880円の社宅を貸与する場合は、従業員から徴収する社宅使用料を1万6,940円以上に設定します。
家賃は家主が任意で設定するもので、必ずしも家賃が賃貸相当額とイコールになっているわけではありません。そのため、会社側が負担する金額は、賃貸料相当額の残額であるとは限らないことを理解することが重要です。
賃貸料相当額の算出については、会社が所有する社宅・社員寮だけでなく借上社宅でも同様の方法となります。借上社宅に関する固定資産税の課税標準額は、管理会社や家主への確認が必要です。
なお、役員に貸与する豪華社宅については、賃貸料相当額の算出方法が異なります。詳しくは、こちらの記事をご確認ください。
出典:国税庁『No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき』/総務省『固定資産税』
所得税や社会保険料との関係性
賃貸料相当額に対して社宅使用料を何割設定するかによって、所得税の課税対象や社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額の扱いなどが変わります。
所得税の課税に関する仕組み
従業員から社宅使用料として賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば、会社負担分については給与として所得税が課税されなくなります。
例えば、賃貸料相当額が6万円の社宅を貸与する場合には、従業員から3万円以上の社宅使用料を徴収すると、残りの会社負担分は給与として課税されません。ただし、会社負担分が家賃の50%だとは限らないことに注意が必要です。
▼【例】賃貸料相当額が6万円の社宅を貸与する場合
社宅使用料の徴収額 |
課税の有無 |
無償 |
会社の全額負担分となる6万円が給与として課税される |
2万円 |
会社負担の差額分となる4万円が給与として課税される |
4万円 |
徴収額が賃貸料相当額の50%以上となるため、会社負担の差額分となる2万円は給与として課税されない |
ただし、職務の遂行上、やむを得ない理由によってその場所に居住することが必要と認められるケースでは、会社が無償で社宅を提供しても課税対象にならない場合もあります。
出典:国税庁『No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき』
社会保険料の算定に関する仕組み
会社と従業員が半分ずつ負担する社会保険料は、従業員に支払った給与の複数月平均から算出した“標準報酬月額”を基礎として算定します。この標準報酬月額には、毎月の現金給与だけでなく、社宅や食事の提供なども“現物給与”も含まれます。
従業員に社宅を貸与している会社では、都道府県ごとに定められた“現物給与価額”を基に通貨へ換算してから標準報酬月額を計算する必要があります。
この際に、都道府県が定めた現物給与価額以上の社宅使用料を従業員から徴収していれば、標準報酬月額の計算対象外となります。
例えば、東京都で定められている社宅の提供による1ヶ月分の利益額は、一畳当たり2,830円(※)です。なお、部屋の広さは、キッチンや廊下、浴室、トイレ等を除いて計算されます。
たとえば、キッチンや廊下、浴室、トイレ等を除いた部屋が13畳の社宅を貸与した場合の現物給与価額は、[2,830円×13畳=3万6,790円]となります。
▼【例】東京都で13畳の社宅を貸与する場合の社会保険料の算定方法
社宅使用料の徴収額 |
社会保険料の算定方法 |
無償 |
現物給与価額の全額となる3万6,790円を標準報酬月額として算定する |
2万円 |
現物給与価額との差額となる1万6,790円(3万6,790円-2万円)を標準報酬月額として算定する |
4万円 |
徴収額が現物給与価額を超えているため、標準報酬月額に合算しなくてよい |
なお、現物給与価額の計算については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
※2024年4月に厚生労働省告示によって改正された現物給与価額
出典:厚生労働省『「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について(健康保険法)』『現物給与の価額改定について(令和6年度)』
そのほかの費用に関する負担区分
社宅の運用にあたっては、毎月徴収する社宅使用料のほかにもさまざまな費用が発生します。どこまでを会社側で負担するか自由に設定できますが、費用項目や割合については社宅規程で明確に定めておくことが重要です。
▼借上社宅の費用に関する一般的な負担区分
費用項目 |
負担者 |
敷金・礼金 |
会社 |
仲介手数料 |
会社 |
管理費・共益費 |
どちらのケースもある |
更新料 |
会社 |
水道光熱費 |
従業員 |
借上社宅の費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
まとめ
この記事では、社宅使用料について以下の内容を解説しました。
- 社宅使用料の一般的な負担割合
- 所得税や社会保険料との関係性
- そのほかの費用に関する負担区分
社宅を貸与する際に従業員から毎月一定以上の社宅使用料を徴収すると、所得税が課税されないほか、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額の計算対象外になります。
所得税が非課税となる基準や社会保険料の計算対象外となる仕組みを踏まえたうえで、社宅使用料を適正に設定することが重要です。
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