社宅制度にデメリットはあるのか。メリットや運用課題を解決するための対応策
法定外福利厚生の一環として導入される社宅制度は、入社や転勤のタイミングでスムーズに従業員の住居を確保したり、生活費の負担を削減して安定した暮らしをサポートしたりする目的があります。
社宅制度の導入を検討している人事総務部門のご担当者さまのなかには、「メリットよりもデメリットが大きくならないか」「現状の業務に忙しく、社宅担当者の負担にならないか」と不安がある方もいるのではないでしょうか。
この記事では、社宅制度を運用するデメリットや企業・従業員が得られるメリット、運用課題を解決するための対応策について解説します。
なお、社宅制度の管理業務についてはこちらの記事で解説しています。
社宅制度のメリット・デメリットについてはこちらの資料でも詳しく解説しています。
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企業が社宅制度を運用するデメリット
社宅制度の運用形態には、企業が所有する物件を貸与する“社有社宅”と、企業名義で賃貸物件を借りて貸与する“借上社宅”の大きく2つの種類があります。いずれも企業の考え方によっては、以下のような内容のデメリットとなり得ます。
導入・運用コストがかかる
社宅制度の導入・運用にあたっては、社有社宅・借上社宅ともにさまざまなコストが発生します。
▼社宅の種類別にかかるコストの項目例
種別 |
導入・運用にかかるコスト |
社有社宅 |
物件の建築費・購入費、点検・メンテナンス費、大規模修繕費、維持管理の人件費 など |
借上社宅 |
敷金・礼金、仲介手数料、原状回復費用、契約管理の人件費 など |
ほかの法定外福利厚生に予算の大部分を割り当てている場合には、社宅制度の導入・運用が経営面の負担となってしまう可能性があります。
従業員のニーズやほかの法定外福利厚生の利用状況を踏まえたうえで、社宅制度の対象者・運用規模・予算配分などを決定することが必要です。
福利厚生としての目的を果たせない可能性がある
社宅制度を導入したものの利用する従業員が少ない場合には、福利厚生として期待した効果を得られない可能性があります。
社宅制度が利用されない原因には、以下が考えられます。
▼社宅制度が利用されない原因
種別 |
原因 |
社有社宅 |
従業員が契約したい物件を選べる規定になっていない |
借上社宅 |
従業員が住みたいと思う物件がない |
従業員のニーズを満たせる社宅制度でなければ利用者が現れず、働きやすさやエンゲージメントの向上といった法定外福利厚生の目的を達成することが難しくなります。社宅制度を利用してもらうには、従業員のニーズを反映して住みやすさを確保することが欠かせません。
社宅担当者の労力がかかる
社宅の種別によって発生する業務は異なりますが、社宅担当者に労力がかかることもデメリットとして挙げられます。
▼社宅制度の運用で発生する業務
種別 |
業務内容 |
社有社宅 |
共用スペースの清掃、設備の法定点検、入退去者の管理、トラブル対応、長期修繕計画の策定・実施 など |
借上社宅 |
物件探し、賃貸借契約の手続き、家賃の支払い、入退去の申請・承認、各物件の契約管理 など |
人事総務部門において兼業で社宅の運用管理を行う場合には、社宅担当者の業務負担が増加して長時間労働につながったり、コア業務に時間を割けなくなったりする可能性があります。社宅制度を導入する際は、必要なリソースを洗い出しておくことが必要です。
社宅制度は企業・従業員の双方にメリットもある!
社宅制度は、コストや労力の面で企業の負担となる可能性がある一方、効果的・効率的に運用すれば企業と従業員の双方にメリットがあります。
企業側のメリット
社宅制度を導入すると、会社としてのイメージアップや従業員の満足度向上につながるメリットが期待できます。
▼【社宅の種類別】企業側のメリット
種別 |
メリット |
社有社宅 |
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借上社宅 |
|
社宅の提供を通じて働きやすい職場を目指すことにより、仕事のモチベーション向上や人材の流出防止、優秀な人材の確保にも結びつくと考えられます。
従業員側のメリット
従業員が社宅を利用すると、個人で賃貸物件を借りる場合と比べて毎月の家賃負担を抑えられることが大きなメリットといえます。
▼【社宅の種類別】従業員側のメリット
種別 |
メリット |
社有社宅 |
|
借上社宅 |
|
入社・転勤時に引越しが必要な従業員は、自分で物件探しや契約手続きを行う必要がなくなります。余裕を持って入社・転勤準備を進められることは、従業員の負担軽減につながります。
また、職場から近いエリアで社宅を借りられる場合には、通勤時間が短縮されてワークライフバランスを確保しやすくなる効果も期待できます。
社宅制度の運用課題を解決するための対応策
これから社宅制度を導入する際は、運用にかかるコスト・労力を抑えつつ、従業員に喜ばれる住居環境や社宅規程を整備することが重要です。
➀目的や運用規模に応じて社宅の種別を選定する
自社が社宅制度を導入する目的や運用規模を踏まえて、社宅の種別を選定する必要があります。社有社宅・借上社宅が適した企業の例には、以下が挙げられます。
▼社宅種別ごとに適した企業の例
種別 |
適した企業 |
社有社宅 |
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借上社宅 |
|
なお、人事院がまとめた令和4年度の『民間企業の勤務条件制度等調査』によると、社宅制度がある企業のうち36.3%が社有社宅、80.7%が借上社宅を運用していると報告されています。
出典:人事院『民間企業の勤務条件制度等調査』
②住みやすい間取り・設備を備える
従業員に社宅制度を利用してもらうには、住みやすい間取り・設備を備えることがポイントです。特に社有社宅の導入後は、柔軟に間取り変更や設備の買替えを行うことは難しいため、対象者の家族構成や生活スタイルを考慮する必要があります。
▼【社宅の種類別】間取り・設備を選定する際の考え方
種別 |
間取り・設備の考え方 |
社有社宅 |
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借上社宅 |
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なお、社宅の平均的な間取りや家具・家電つきの社宅についてはこちらの記事で解説しています。
③従業員のニーズを踏まえて社宅規程を策定する
社宅規程を作成する際は、従業員のニーズを反映させることも重要といえます。
「入居対象者の範囲が狭い」「契約できる物件が限られる」といった社宅規程を定めると、従業員間で不公平感が生まれたり、社宅の入居希望者が集まらなかったりする可能性があります。
社宅の提供を通じて企業と従業員の双方がメリットを享受するには、公平性を保ちつつも事情に合わせて柔軟に対応できる運用体制を整えることがポイントです。
社宅規程の作成についてはこちらの記事をご確認ください。
④社宅管理代行サービスを活用する
社宅担当者の負担を軽減するには、社宅管理代行サービスを活用することも一つの方法です。負担の大きい業務を外部の事業者に委託することで、社宅担当者がコア業務に注力できるようになります。
『リロケーション・ジャパン』では、社宅制度を円滑に運用するためのサービスを提供しております。自社管理と比較して大幅な業務削減効果を実現します。
▼社宅管理代行サービスの主な種類
- 社有社宅の運用代行サービス
- 借上社宅の包括転貸方式によるフルアウトソーシングサービス
なかでも借上社宅の運用を外部に委託する際は、家主との契約を事業者に任せられる包括転貸方式でのサービスがおすすめです。家主と直接契約を締結しなくてよいため、敷金・礼金の負担軽減や契約をめぐるトラブルの防止につながります。
社宅管理代行サービスによって外部委託するメリットは、こちらの記事で解説しています。
まとめ
この記事では、社宅制度について以下の内容を解説しました。
- 企業が社宅制度を運用するデメリット
- 企業・従業員が得られるメリット
- 社宅制度の運用課題を解決するための対応策
社宅制度の運用には、コスト・労力の負担がかかるほか、従業員のニーズを満たさない場合には法定外福利厚生としての目的を果たせなくなる可能性があります。
満足度の向上につなげるには、従業員に喜ばれる住居環境や社宅規程を整備することが重要です。また、自社のみで運用リソースの確保が難しい場合には、外部の事業者に委託することも有効です。
『リロケーション・ジャパン』の社宅管理サービスでは、社有社宅の運用代行や括転貸方式による借上社宅の運用管理を行っております。物件の手配や入退去の手続き、入居中のトラブル処理に至るまで一括で対応しており、貴社に合った社宅制度の構築を支援いたします。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。