住宅手当支給で見落とされる従業員の個人契約の負荷
近年、人材獲得競争が激化する中、企業は採用強化、優秀な人材の定着に頭を悩ませています。その解決策の一つとして注目されているのが、魅力的な福利厚生制度の導入です。中でも、社員の生活を支え、ワークライフバランスの向上に大きく貢献する「住宅制度」は、採用強化と離職防止に効果的な手段と言えるでしょう。
この記事では、社宅制度と住宅手当を比較しながら、より良い住宅手当の在り方について解説しています。
目次[非表示]
- 1.住宅制度の種類
- 2.住宅手当の有効性を高めるための改善ポイント
- 2.1.支給額の増額または見直し
- 2.2.支給対象者の拡大
- 2.3.制度の簡素化
- 2.4.柔軟な支給方法の導入
- 2.5.制度の周知徹底
- 3.住宅手当に望める期待効果
- 3.1.競争優位性の確保
- 3.2.ターゲット層への訴求
- 3.3.生活安定の支援
- 3.4.転勤への抵抗感の軽減
- 3.5.従業員エンゲージメントの向上
- 4.なぜ、住宅手当が社宅制度に見劣りするのか、住宅手当の課題点
- 4.1.コスト(社会保険料、所得税)
- 4.2.手間
- 4.3.リスク
- 5.見落としがちな住宅手当の従業員負荷
- 6.まとめ
住宅制度の種類
住宅制度は大きく分けて社宅と住宅手当に分類されます。社宅には企業が所有する社有社宅と、企業が賃貸物件を借り上げて従業員に提供する借上げ社宅があります。借上げ社宅は、企業が契約を行い、従業員に住居を提供するため、従業員の負担が少なく、満足度が高い制度です。
一方、住宅手当を採用している企業も多くあります。住宅手当は従業員が個人で賃貸契約を結び、その費用の一部を企業が補助する制度です。また、転勤社宅制度がない企業では、住宅手当に加えて一時金の支給もあります。
住宅手当の有効性を高めるための改善ポイント
支給額の増額または見直し
市場調査に基づき、競合他社と比較検討し、適切な支給額を見直します。
支給対象者の拡大
単身者だけでなく、家族がいる従業員も対象に含めることで、より多くの従業員をサポートします。
制度の簡素化
手続きを簡素化し、従業員にとって分かりやすく利用しやすい制度を目指します。
柔軟な支給方法の導入
住宅手当の支給方法を柔軟化することで、従業員の多様なニーズに対応します。例えば、家賃補助だけでなく、住宅購入支援なども検討できます。
制度の周知徹底
社内報やイントラネットなどを活用し、住宅手当制度について、従業員に分かりやすく周知徹底します。
住宅手当に望める期待効果
競争優位性の確保
競合他社よりも魅力的な住宅制度を提供することで、優秀な人材の獲得競争において優位に立つことができます。特に、都市部など住宅費の高い地域では、その効果は期待できます。
ターゲット層への訴求
若手社員や子育て世帯など、住宅費の負担が大きい層への訴求に有効です。採用パンフレットや説明会などで、住宅制度を積極的にアピールすることで、応募者の増加に繋がります。
生活安定の支援
住宅費は生活における大きな負担です。住宅制度によって生活の安定を支援することで、従業員の満足度を高め、離職を防ぐことができます。
転勤への抵抗感の軽減
転勤を伴う異動の場合、住宅制度は転勤者にとって大きな安心材料となります。転勤による負担を軽減することで、円滑な異動を実現できます。
従業員エンゲージメントの向上
充実した福利厚生制度は、従業員のモチベーション向上に繋がり、企業への愛着を高めます。
なぜ、住宅手当が社宅制度に見劣りするのか、住宅手当の課題点
住宅手当は個人契約となるので従業員にとって自由度が高い反面、社宅制度に見劣りする部分があります。ここでは、「コスト」「手間」「リスク」に分け、住宅手当の制度的弱点についてご説明します。
コスト(社会保険料、所得税)
住宅手当の場合は、支給額が社会保険料や所得税の算出対象となります。その為、同額の会社負担(従業員の恩恵)であったとしても社宅と住宅手当では、従業員の可処分所得の違いがあることを理解しましょう。
手間
個人契約であれば、当然に従業員本人が契約手続きを行います。法人契約と異なり、申込時の与信審査は厳格になり、提出書類も多くなります。社宅(法人契約)の場合に会社側で行う手続きをすべて従業員本人が行う為、社宅と比較して、負荷が多いと言えるでしょう。
リスク
従業員が契約者となって家主と直接契約を結ぶため、契約上のリスクが伴います。また、家主との直接契約において、契約条件の変更やトラブルが発生した場合、従業員自身が対応しなければならないため、負荷が増加します。また、法人契約であれば、貸主に対する反社会的勢力との関係性を確認してから契約しますが、個人契約の場合は確認することは難しいと言えるでしょう。
これらの違いを踏まえてみると、社宅制度と住宅手当を併用している企業では、従業員間で不公平を感じることがあるかもしれません。
※住宅制度により従業員側の負荷が異なる。
見落としがちな住宅手当の従業員負荷
前述の社宅制度と住宅手当の違いを踏まえ、より具体的な住宅手当の穴(従業員の不満につながるポイント)について解説します。
海外からの帰任者の場合
会社からのサポートがお金だけの場合、帰国前に部屋の手配をしたい、帰国早々業務に取り掛かりたいという気持ちはあっても、住宅契約は自分自身で行わなければならないため手間やリスクが負荷となってしまいます。
社宅から住宅手当へ移行する場合
社宅の利用期限が到来したため、現在の物件は退去し新居は住宅手当に移行するケースや、結婚などの自己都合で社宅を出て住宅手当に切り替わるケースなどが挙げられます。この場合でも、家賃の補助は可能ですが契約に関わる負荷までは会社ではフォローができません。
地域限定職の場合(転居を伴わないので住宅手当の支給さえない場合がある)
最近では、転居を伴う異動がないような職種を設けている企業も多くなってきています。この場合でも、現住所から通勤できない人は入社前に引越が必要となり住宅契約の負荷がかかってしまいます。
まとめ
住宅手当は、社宅制度に次ぐ住宅系福利厚生として、採用強化と離職防止に大きく貢献します。現状の制度を分析し、貴社の実情に合わせた最適な住宅手当制度を構築することで、企業競争力の向上に繋げることが期待できます。 定期的な見直しと改善を継続することで、より効果的な制度へと進化させていきましょう。
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