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定期借家契約の中途解約はできる? 可能となる条件や社宅として借りるメリット

賃貸物件の契約形態の一つに、あらかじめ契約期間が定められている“定期借家契約”があります。定期借家契約は、契約期間が満了した際に更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する仕組みです。

定期借家契約の賃貸物件を借上住宅として利用する場合、「急な転勤が決まった」「契約期間中に従業員が退職した」などの理由で、契約期間の途中で解約が必要になるケースも想定されます。社宅担当者のなかには、定期借家契約の中途解約ができるか気になる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、定期借家契約における中途解約の原則や、社宅として借りるメリットについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.定期借家契約の中途解約はできる?
  2. 2.定期借家契約の中途解約が可能となる条件
    1. 2.1.①解約権留保特約を定めている
    2. 2.2.②中途解約権を行使できる
    3. 2.3.③貸主に違約金を支払う
  3. 3.定期借家契約の物件を社宅として借りるメリット
  4. 4.まとめ


定期借家契約の中途解約はできる?

定期借家契約は、貸主があらかじめ契約期間を定めている賃貸借契約のため、契約期間中の中途解約は原則的に認められていません。

理由は、借主都合で中途解約すると、残存期間の家賃収入を得られなくなり、貸主側の不利益につながるおそれがあるためです。ただし、一定の条件を満たせば中途解約ができるケースもあります。

出典:国土交通省『定期建物賃貸借 Q&A



定期借家契約の中途解約が可能となる条件

定期借家契約で賃貸物件を借りた場合、中途解約は原則できませんが、以下のいずれかの条件に当てはまる場合には解約ができる可能性もあります。


①解約権留保特約を定めている

定期借家契約書に借主の解約権留保特約を定めている場合は、契約期間中に中途解約が可能です。

解約権留保特約とは、契約期間中の解約を認める特約を指します。『民法』第617条・618条で以下のように定められています。


▼民法第617条・618条

第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

引用元:e-Gov法令検索『民法


借主による解約権留保特約がある場合には、貸主に対して解約の申し入れをしたあと、3ヶ月の経過後に契約を終了できるようになります。

出典:e-Gov法令検索『民法


②中途解約権を行使できる

定期借家契約で解約権留保特約を締結していない場合でも、中途解約権を行使できる条件を満たす場合には、中途解約が認められます。

借地借家法』第38条第7項では、以下の条件を満たす場合に借主が定期借家契約を解約できることが定められています。


▼中途解約権を行使できる条件(下記3点を満たすこと)

  • 住居用の建物
  • 床面積が200㎡未満の建物
  • やむを得ない事情で建物を生活の拠点として使用することが困難になった場


▼借地借家法第38条第7項

第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。

引用元:e-Gov法令検索『借地借家法


"やむを得ない事情”とは、転勤や療養、親族の介護などが該当します。中途解約権を行使して、定期借家契約における解約の申し入れをした際は、申し入れをした日から1ヶ月経過後に契約を終了することが可能です。

出典:e-Gov法令検索『借地借家法


③貸主に違約金を支払う

貸主に違約金を支払うことで定期借家契約を中途解約できる場合もあります。

違約金によって中途解約する場合は、定期借家契約で定める残存期間の賃料分を貸主に支払うことが一般的です。例えば、1年の定期借家契約を10ヶ月で解約したい場合、残りの2ヶ月分の賃料を違約金として支払います。

契約時に解約権留保特約を定めておらず、中途解約権を行使できない場合の解約手段です。

なお、こちらの記事では、短期解約による違約金の基本情報や物件の注意点、社宅規程を定める際の注意点について解説しています。併せてご覧ください。

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定期借家契約の物件を社宅として借りるメリット

定期借家契約の賃貸物件を社宅として借りるメリットは、以下が挙げられます。


▼メリット

  • 安い賃料で借りられる可能性がある
  • 短期間で契約できる


契約期間が定められている定期借家契約の物件は、入居できる人が限定されるため、借主を見つけやすくするために周辺相場よりも家賃が低く設定されていることがあります。社宅に入居する従業員との条件が合えば、社宅運用にかかるコストを削減できる場合があります。

また、一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、多くの場合、契約期間が1~2年で定められています。一方、定期借家契約では、普通借家契約と比較して短期間で借りられる物件もあるため、1年未満の転勤や長期出張など、入居期間と契約期間が合致する場合などに有効です。

なお、一般的な賃貸借契約となる普通借家契約と、定期借家契約の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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まとめ

この記事では、定期借家契約について以下の内容を解説しました。


  • 中途解約の原則
  • 中途解約できる条件
  • 社宅として物件を借りるメリット


定期借家契約は、原則として借主による中途解約は認められていません。ただし、場合によっては中途解約の申し入れが可能なケースがあります。

社宅として運用する際は、急な転勤や退職などで中途解約が必要になるケースもあるため、契約時に中途解約の条件を確認しておくことが重要です。

また、定期借家契約の物件は、周辺の物件よりも家賃が安く設定されていたり、短期間で契約ができたりする物件もあるため、社宅の入居期間や立地などに応じて選定することがポイントです。

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