転勤を拒否されたらどう対応する? トラブルになる前に注意すること
転勤制度は、人材の育成や従業員の適性・能力を発揮できる人材配置を行い、組織力の強化を図るためにさまざまな企業で取り入れられています。
しかし、勤務場所や居住地が変わることへの不安、育児・介護といった家庭の事情などにより、転勤の辞令を拒否する従業員もいると考えられます。
人事総務部門のご担当者さまのなかには「転勤を拒否されたらどうすればよいのか」「トラブルを防ぐためにできることはあるか」と悩まれている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、転勤を拒否する従業員への対応方法や辞令を出す際の注意点について解説します。
なお、転勤のスケジュールについてはこちらの記事で解説しています。
目次[非表示]
- 1.転勤を拒否する従業員への対応
- 1.1.➀転勤の理由を説明する
- 1.2.②転勤によるメリットを伝える
- 1.3.③転勤を拒否する理由の解消方法を探る
- 1.4.④物件探しや引越しをサポートする制度を設ける
- 2.転勤の辞令に関する注意点
- 2.1.労働契約や就業規則を確認する
- 2.2.適切な期間を定めて内示を行う
- 2.3.個別の事情に配慮する
- 3.まとめ
転勤を拒否する従業員への対応
転勤は、使用者の人事権に基づいて行われるため、正当な理由がない限り従業員が辞令を拒否することはできないとされています。
従業員が転勤を拒否する場合には、「基本的に拒否はできない」旨を伝えるとともに、人事異動の不満・不安を取り除くためのフォローを行うことが求められます。
➀転勤の理由を説明する
従業員への内示・辞令を行う際は、「なぜ転勤をしてもらいたいのか」といった理由を具体的に説明する必要があります。
▼転勤理由の例
- 現在と異なる現場でスキルを磨いてほしい
- これまでの経験や能力を生かして新規事業のリーダーになってほしい
- 事業拡大に伴ってエリアでの人員を増やしたい など
転勤の対象者に選んだ背景や新たな職場での役割、期待していることなどを説明することで、従業員が人事異動を前向きに捉えられるようになります。その結果、拒否していた従業員に転勤を受け入れてもらえることが期待できます。
②転勤によるメリットを伝える
転勤によるメリットを伝えることも重要といえます。従業員のなかには「転勤しても大変なだけではないのか」と不安を持つ人もいます。
従業員のモチベーションを高めるメリットを提示することで、円満に転勤を受け入れてもらいやすくなります。
▼転勤によるメリットの例
- 給与・賞与の増額
- 役職手当の付与
- キャリア形成に役立つスキルの習得
- 転勤者を対象とした福利厚生の利用 など
③転勤を拒否する理由の解消方法を探る
転勤を拒否する従業員には、「なぜ拒否するのか」といった理由を聞き、懸念点を解消できる方法はないか一緒に探ることも重要です。
▼従業員が転勤を拒否する理由と解決策の提案例
転勤を拒否する理由 |
解決策の提案例 |
子どもが小さく、家族と離れて暮らすのが難しい |
家族で入居できる社宅を提供して、入園手続きをサポートする |
現在着手中のプロジェクトがあり、自分の手で最後までやり遂げたい |
転勤の時期を調整する |
親の介護をしており、実家から離れられない |
要介護認定の手続きや、通所型または入居型の介護施設を利用する選択肢について伝える |
従業員が抱える不安や懸念点を解消できれば、転勤に納得してもらえることが期待できます。
④物件探しや引越しをサポートする制度を設ける
転勤先での物件探しや引越しをサポートする制度を設ける方法があります。
転居を伴う転勤では、現在の職場で引き継ぎをしながら物件探しや引越しの手続きを進める必要があり、従業員の負担になります。
「時間や金銭的な理由で転勤したくない」と考える人もいるため、できる限り負担を抑えられるように企業がサポートすることが必要です。
▼転勤をサポートする制度の例
- 社宅の貸与
- 家賃補助の支給
- 引越し費用の補助
- 赴任旅費の支給
- 帰省手当の支給
- 転園・転学費用の補助 など
なお、転勤時に必要な手続きや手当についてはこちらの記事で解説しています。
転勤の辞令に関する注意点
転勤の辞令を出す際は、法令を遵守できているかを確認するとともに、従業員の事情を踏まえて内示や個別対応を行うことが重要です。
労働契約や就業規則を確認する
使用者の人事権として転勤の辞令を出すには、労働契約や就業規則に転勤に関する規定を定めている必要があります。転勤の辞令が認められないケースには、以下が挙げられます。
▼転勤の辞令が認められないケース
- 労働契約や就業規則に転勤についての記載がない
- 職種・勤務地を限定する規定があり、その範囲外で転勤の辞令を出す など
人事異動の目的が不当な場合や、業務において必要性がない転勤についても認められない可能性があるため、注意が必要です。
なお、2024年4月からは労働条件の明示に関する制度が改正されており、新たに追加された明示事項の一つに“就業場所・業務の変更範囲”が含まれています。
出典:厚生労働省『2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました』
適切な期間を定めて内示を行う
転勤の対象となる従業員には、転勤までの時間に余裕を持ち、適切な期間を定めて内示を行います。
転居を伴う転勤では、物件探しや引越しの手配、子どもの転園・転学申請などのさまざまな手続きが発生します。
従業員の負担が増えないように、転勤の1ヶ月前くらいには内示を行うことが必要です。特に家族と一緒に引越しをする場合には、1〜6ヶ月前に余裕をもって内示を行うことが望ましいといえます。
なお、転勤の時期や内示のタイミングについてはこちらの記事で解説しています。
個別の事情に配慮する
転勤の辞令を出す際は、個別の事情に配慮することが求められます。
出産や育児、介護、療養中の病気などの関係でどうしても転居が難しい場合には、事情に応じて以下の対応を検討します。
▼転勤が難しい場合の対応例
- 企業が保育・介護・医療サービスの使用料を補助する
- 転勤の時期をずらす
- 現住居から通勤可能な範囲での異動で代替する
- 配偶者の転勤先を考慮して勤務地を調整する など
また、定期的に従業員へのヒアリングを行い、転勤の支障となる事情がないかを確認しておくと、候補者の選定や転勤の時期・場所の調整を行いやすくなります。
なお、転勤による単身赴任の注意点についてはこちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、転勤の辞令について以下の内容を解説しました。
- 転勤を拒否する従業員への対応
- 転勤の辞令に関する注意点
転勤は、勤務地や生活環境が変わることによってさまざまな不安・不満が生まれるほか、時間的・金銭的な負担も伴います。
従業員に納得してもらうには、転職の理由・メリットを丁寧に伝えるとともに、懸念点や個別の事情を踏まえて負担を減らすためのフォローを行うことが重要です。
なかでも転居先での住居に関する費用は、従業員の負担も大きくなりがちです。社宅を提供すると、従業員自身で賃貸住宅を契約する必要がないほか、毎月の住居費を抑えられるようになり、負担の削減につながります。
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