
借上社宅の賃貸借契約に必要な書類! 契約前に行っておく準備とは?
※2025年9月18日更新
企業が借上社宅を利用する場合は、物件の家主と企業との間で賃貸借契約を締結します。その際、法人名義で賃貸物件を借りることになるため、個人で契約する場合と異なり、さまざまな書類の提出が求められます。
社宅担当者のなかには、スムーズな借上社宅の利用を目指して、「どのような書類が必要なのか確認しておきたい」「書類以外の準備も進めておきたい」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、借上社宅の賃貸借契約を法人名義で締結する際の必要書類と準備について解説します。
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目次[非表示]
- 1.借上社宅の賃貸借契約に必要な書類と用意するもの
- 1.1.入居審査時
- 1.1.1.会社登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 1.1.2.会社概要・会社案内
- 1.1.3.決算報告書
- 1.1.4.入居者の本人確認書類・社員証の写し
- 1.1.5.連帯保証人の本人確認書類
- 1.2.賃貸借契約時
- 1.2.1.法人印鑑証明書
- 1.2.2.連帯保証人の印鑑証明書(保証会社を利用しない場合)
- 1.2.3.入居者全員の住民票
- 1.2.4.印鑑・銀行口座印
- 2.企業が賃貸借契約を締結するまでの流れ
- 3.借上社宅の契約前に行っておく準備
- 3.1.初期費用の確認・交渉を行う
- 3.2.社内規程を作成する
- 3.3.包括保険を検討する
- 3.4.運用体制を整える
- 4.まとめ
借上社宅の賃貸借契約に必要な書類と用意するもの
借上社宅にする賃貸物件が決まったら、不動産仲介会社を介して以下の流れで契約を交わします。
▼賃貸借契約の流れ
- 入居申し込み
- 入居審査
- 賃貸借契約の締結
上記の入居審査と賃貸借契約のタイミングで以下の書類の提出が求められる場合があるため、事前に準備しておく必要があります。
- 会社登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 会社概要・会社案内(パンフレット、自社Webサイトなど)
- 決算報告書
- 代表者の経歴書
- 入居者の本人確認書類の写し
- 入居者の社員証の写し
- 連帯保証人の本人確認書類
入居審査時
法人名義で賃貸物件を借りる際は、会社の規模や業績などの情報を基に入居審査が行われます。入居審査時に提出を求められる可能性のある書類には、以下が挙げられます。
▼提出を求められる可能性のある書類
- 会社登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 会社概要・会社案内(パンフレット、自社Webサイトなど)
- 決算報告書
- 代表者の経歴書
- 入居者の本人確認書類の写し
- 入居者の社員証の写し
- 連帯保証人の本人確認書類 など
新規での起業や開業して間もない場合には、事業計画書の提出が求められるケースがあります。会社登記簿謄本は、原則3ヶ月以内に取得した書類が一般的です。
なお、賃貸借契約では、家賃滞納をはじめとする債務不履行のリスクに備えて、賃借人に連帯保証人の用意または保証会社への加入を求められます。
ただし、法人名義で契約する借上社宅の場合には、連帯保証人の用意や保証会社への加入が不要な場合もあります。
どちらが必要になるかは物件によって異なりますが、連帯保証人が必要な場合には連帯保証人の本人確認書類も必要になります。借上社宅の場合は、法人の代表者が連帯保証人となるケースもあります。
会社登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
会社登記簿謄本(履歴事項全部証明書)は、法人の正式な登記内容を証明する書類です。法務局で取得でき、会社の設立日や所在地、代表者、資本金などが記載されています。
貸主や管理会社は、この書類で法人の実在性や代表者の権限を確認します。発行から3ヶ月以内のものが求められることが多いため、取得時期に注意しましょう。
会社概要・会社案内
会社概要や会社案内は、企業の事業内容や規模、沿革などをまとめた資料です。パンフレットやホームページの印刷物でも代用できる場合があります。
貸主は、どのような事業を行っている会社なのか、安定した経営をしているかを判断する材料とします。
特に新設法人や中小企業の場合は、会社案内の内容が審査に影響することもあるため、最新の情報を用意しましょう。
決算報告書
決算報告書は、企業の財務状況を示す重要な書類です。
直近1〜3期分の提出を求められることが多く、売上や利益、資産状況などが審査のポイントとなります。
経営が安定しているかどうかを判断するため、赤字決算の場合は補足説明資料を添付するのも有効です。
決算報告書のコピーで対応できる場合がほとんどですが、必要に応じて原本の提示を求められることもあります。
入居者の本人確認書類・社員証の写し
入居予定者の本人確認書類(運転免許証、健康保険証、パスポートなど)と、社員証の写しが必要です。これにより、入居者が実際にその会社に勤務していることを証明します。
本人確認書類は有効期限内のものを用意し、社員証がない場合は在籍証明書などで代用できる場合もあります。複数名が入居する場合は、全員分の書類が必要となるため注意しましょう。
連帯保証人の本人確認書類
連帯保証人を立てる場合、その方の本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)の提出が求められます。保証会社を利用する場合は不要なこともありますが、個人保証の場合は必須です。
保証人の年齢や職業、収入状況なども審査の対象となるため、必要に応じて追加書類を求められることもあります。事前に保証人の了承を得て、スムーズに書類を集められるよう準備しておきましょう。
賃貸借契約時
賃貸借契約を締結する際には、会社や代表者に関する書類の提出が必要です。
▼提出を求められる可能性のある書類の例
- 法人印鑑証明書
- 連帯保証人の印鑑証明書(保証会社を利用しない場合)
- 入居者全員の住民票
- 印鑑・銀行口座印
これらの公的書類は、原則としてすべて原本かつ3ヶ月以内に取得することが必要です。入居審査の際に会社登記簿謄本の写しを提出している場合には、契約時には原本での提出が求められることもあります。
物件や会社によってほかの書類の提出が必要になるケースもあるため、申し込みや入居審査の前に確認しておくことがポイントです。また、契約書への捺印は実印が必要になりますが、2022年における宅地建物取引業法の改正以降は電子契約も認められています。
なお、賃貸借契約時に気をつけるポイントについて詳しくは、こちらの記事で解説しています。
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法人印鑑証明書
法人印鑑証明書は、会社の実印が正式に登録されていることを証明する書類です。
法務局で取得でき、契約書に押印する印鑑が正しいものであることを証明します。
発行から3ヶ月以内のものが一般的に求められるため、契約日程に合わせて取得しましょう。
印鑑証明書がない場合、契約が無効となる可能性もあるため、必ず用意してください。
連帯保証人の印鑑証明書(保証会社を利用しない場合)
保証会社を利用せず、個人の連帯保証人を立てる場合は、保証人の印鑑証明書が必要です。これは、保証人が契約書に実印を押したことを証明するための書類です。
市区町村役場で取得でき、発行から3ヶ月以内のものが一般的です。保証人の印鑑証明書が揃わないと契約が進まないため、早めに依頼しておきましょう。
入居者全員の住民票
入居者全員分の住民票は、現住所や家族構成を確認するために必要です。住民票は市区町村役場で取得でき、発行から3か月以内のものが求められます。
単身赴任や家族帯同など、入居形態によって必要な人数分を用意しましょう。住民票の写しで対応できる場合もありますが、原本が必要なケースもあるため、事前に確認しておくと安心です。
印鑑・銀行口座印
契約書への押印や、家賃の口座振替手続きのために、法人の実印や銀行口座印が必要です。
印鑑は契約書類ごとに異なる場合があるため、どの印鑑が必要か事前に確認しましょう。印鑑を忘れると手続きが進まないため、忘れずに持参しましょう。
企業が賃貸借契約を締結するまでの流れ
企業が借上社宅の賃貸借契約を締結するまでには、いくつかのステップがあります。
まずは物件の選定と条件交渉から始まり、入居審査、契約書類の準備、そして契約締結へと進みます。
各段階で必要な書類や手続きが異なるため、事前に全体の流れを把握しておくことが重要です。
▼契約までの一般的な流れ
ステップ | 主な内容 | 一般的な期間 |
物件選定・条件交渉 | 希望条件の整理、物件の内見、賃料や契約条件の交渉 | 〜3週間 |
入居申込・審査 | 必要書類の提出、貸主・管理会社による審査 | 3日〜10日間 |
契約書類準備 | 契約書の確認、必要書類の収集・押印 | 1週間〜10日間 |
契約締結・初期費用支払い | 契約書への署名・押印、初期費用の支払い | 3日〜1週間 |
入居・運用開始 | 鍵の受け渡し、入居開始、社宅運用スタート | 契約締結から1週間 |
期間に関しては、最短で3週間、通常は1ヶ月程度ですが、会社の稟議フローや、物件の空室状況・審査スピードによって大きく変動します。
特に「物件選定」と「契約書類準備」のフェーズに時間がかかる傾向があるため注意しましょう。
賃貸借契約をオンラインで行う際の注意点はこちらの記事をご確認ください。
借上社宅の契約前に行っておく準備
借上社宅の賃貸借契約を締結する前には、事前に社宅運用のルールや体制などを整えておくことが重要です。
初期費用の確認・交渉を行う
借上社宅の契約時には、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃など、さまざまな初期費用が発生します。
これらの費用は物件や契約内容によって大きく異なるため、事前に詳細を確認し、必要に応じて交渉を行いましょう。
また、法人契約の場合は個人契約よりも条件が優遇されるケースもあるため、複数の物件で比較検討するのもおすすめです。初期費用の見積もりを社内で共有し、予算内で契約できるかどうかを確認しておくことが大切です。
▼賃貸借契約にかかる初期費用
初期費用 | 詳細 |
敷金・礼金 | 敷金:物件の家主に担保として預けるお金 礼金:賃貸借契約時に物件の家主へ支払う謝礼金 相場は家賃1〜2ヶ月程度 |
仲介手数料 | 不動産仲介会社へ物件紹介から契約締結まで取引成立に際して支払う謝礼金 宅地建物取引業法により家賃の1ヶ月分+消費税まで |
前家賃 | 入居を開始する月の家賃を事前に支払う |
管理費・共益費 | マンションやアパート共用部の清掃や電気代、保守点検・定期点検といった建物の維持管理費 |
火災保険料 | 火災・台風、水害などの自然災害・落雷などによって住宅・家財が損害を受けた場合に、修理や他人への損害賠償を行うための費用を補償する保険料 |
そのほかの費用 | そのほかの保証料や鍵交換費用、引越し費用など |
初期費用の負担区分についてはこちらの記事をご確認ください。
社内規程を作成する
賃貸借契約を締結する前に、社内規程を作成しておく必要があります。
社内規程とは、借上社宅の物件条件や入居制限、賃料の負担割合、退去・入居に関するルールなどを定めた規程です。
借上社宅の物件を選定する際は、社内規程の内容と賃貸借契約書の内容を照らし合わせて、契約できるかを確認することが重要です。
また、物件によって更新料や退去時の解約通知期日・方法、入居制限(単身者専用、同居不可、ペット不可など)が異なります。
社宅を利用する従業員との間で認識の違いが生まれないように、社宅使用誓約書を作成して、個別の注意事項についても伝えておく必要があります。
なお、社宅使用誓約書の内容と注意点については、こちらの記事をご確認ください。
包括保険を検討する
賃貸借契約を交わす際は、万が一の災害に備えて、物件ごとに火災保険の加入を求められることが一般的です。
社宅制度を運用する際は、物件ごとに火災保険に加入することになりますが、社宅利用者が多数になると、加入・更新手続きに負担がかかります。また、更新漏れや手続きの不備が発生して、保険未加入の状態となるリスクもあると考えられます。
火災保険の管理を円滑に行うために、すべての社宅の火災保険を1本化できる包括保険(火災保険の総括契約)を検討することが重要です。
包括保険に加入すると、契約内容の確認や更新・加入手続き、経費処理などの業務をスムーズに行えるようになり、社宅担当者の負担軽減、加入漏れの防止につながります。
なお、包括保険の詳しい内容はこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
運用体制を整える
借上社宅を利用する際は、社内の人事・総務部での運用体制を整えておくことも欠かせません。借上社宅を運用するには、以下のような業務が発生します。
▼借上社宅の運用に関する業務
- 社内規程に沿った社宅物件の選定
- 物件ごとの賃貸借契約の締結
- 契約書類の管理
- 契約金/賃料の支払い
- 入居者使用料の徴収
- 従業員の入退去管理
- 敷金の残高管理・回収
- 退去時における原状回復費の精算
- 更新や解約の手続き
- 支払調書の作成 など
借上社宅の数が多くなるほど、運用業務が煩雑化しやすく社宅担当者の負担も大きくなります。社内での運用が難しい場合には、アウトソーシングサービスを活用することも一つの方法です。
社宅管理のアウトソーシングについてはこちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、借上社宅の賃貸借契約について以下の内容を解説しました。
- 借上社宅の賃貸借契約に必要な書類
- 企業が賃貸借契約を締結するまでの流れ
- 借上社宅の契約前に行っておく準備
借上社宅の賃貸借契約を締結する際は、入居審査時と賃貸借契約時にさまざまな書類の提出が求められます。スムーズに契約を進めるためには、不動産会社に確認をして、事前に書類を準備しておく必要があります。
また、借上社宅の契約前には、社内規程を作成して従業員に共有するとともに、包括保険を検討すること、運用体制を整えることも重要です。
社宅管理業務の課題と業務改善のコツについては、こちらの資料をご確認ください。
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