賃貸物件でよくある4つのトラブル。社宅運用時の解決方法と対策法
賃貸物件では、賃貸人や入居者同士などの間でさまざまなトラブルが発生することがあります。借上社宅を検討または運用している企業では、賃貸物件で起こり得るトラブルを把握して、適切な対応と対策を講じることが重要です。
この記事では、借上社宅を管理する社宅ご担当者さまに向けて、賃貸物件でよくある4つのトラブルと解決方法、対策法について解説します。
目次[非表示]
- 1.賃貸物件でよくある4つのトラブル
- 1.1.①入居者同士のトラブル
- 1.2.②住宅設備に関するトラブル
- 1.3.③原状回復に関するトラブル
- 1.4.④入居者の過失によるトラブル
- 2.賃貸物件に関するトラブルの解決方法
- 3.借上社宅のトラブルを防ぐための対策法
- 3.1.①社宅規程を作成する
- 3.2.②原状回復のチェックリストを活用する
- 4.まとめ
賃貸物件でよくある4つのトラブル
賃貸物件では、生活や住宅の設備、退去に関するトラブルが起こりやすくなります。
①入居者同士のトラブル
アパートやマンションなどの賃貸物件では、同じ建物内に複数の人が暮らすことによって、生活のなかで入居者同士のトラブルが起こりやすくなります。
例えば、共用部の利用に関する規定やマナー違反、隣人の生活音に関する問題などが挙げられます。
▼入居者同士のトラブル例
- 上下左右に暮らす入居者の生活音、音楽や楽器による騒音がある
- 駐車場・駐輪場の利用ルールを守らない
- ゴミ出しの回収日時を守らない
- ペットやたばこのにおいが気になる など
②住宅設備に関するトラブル
賃貸物件に備えつけられたエアコンや給湯器などの設備が故障して、入居者と家主または管理会社との間でトラブルにつながることがあります。
また、入居者の過失・事故によって住居への火災・漏水が発生したり、近隣の住居に損害を与えてしまったりするトラブルも考えられます。
▼住宅設備のトラブル例
- 備えつけのエアコンが故障して入居者自身で修理の手配をしたが、家主や管理会社に修理費用を負担してもらえなかった
- 洗面台下の水漏れが発生して、下階の天井へ水漏れの被害が及んだ
- 給湯器が壊れてお湯がでないのでお風呂に入ることが出来ない など
③原状回復に関するトラブル
賃貸借契約では、『民法』第621条に基づいて入居者に対する原状回復義務が課せられています。この原状回復の範囲や費用の負担についてトラブルが発生する場合があります。
▼民法第621条
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索『民法』
原状回復義務とは、入居者の故意・過失や通常を超える使用によって生じた住居への損耗を修復する義務のことです。経年劣化による損耗は、入居者ではなく家主が負担しますが、この費用負担について家主や管理会社とトラブルになるケースも少なくありません。
また、社宅を運用する際には、退去時に「会社と従業員のどちらが修繕費用を支払うのか」についてトラブルが起こることもあります。
▼原状回復費用に関するトラブル
- 損耗が経年劣化によるものかどうか事実確認が難しく、費用の負担割合について家主・管理会社との合意ができない
- 契約時に支払った敷金が経年劣化による修繕費に充てられてしまい、家主から返してもらえない など
出典:e-Gov法令検索『民法』
④入居者の過失によるトラブル
入居者の過失・事故によって住居への火災・漏水が発生したり、近隣の住居に損害を与えてしまったりするトラブルも考えられます。
▼入居者の過失によるトラブル例
- 入居者の失火により、近隣住宅の一部または全部を破損してしまった
- 入居者宅からの飛来物が、近隣住宅の窓や壁など一部または全部を破損してしまった
- ベランダから落としたものがあたってしまい、隣人の所有物を壊してしまった など
賃貸物件に関するトラブルの解決方法
入居者同士や住宅設備などに関するトラブルが発生した場合、入居者同士で直接やり取りをせずに、まずは社宅担当者に相談するように伝えます。そのうえで、必要に応じて家主または管理会社に対して連絡・相談しなければなりません。
▼トラブルの内容と社宅担当者の対応例
トラブルの内容 |
解決方法 |
入居者同士や設備に関するトラブル |
|
原状回復による家主・管理会社とのトラブル |
|
|
加入している火災保険会社に連絡して判断を仰ぐ |
なお、借上社宅で利用できる賃貸借契約の火災保険については、こちらの記事をご確認ください。
出典:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
借上社宅のトラブルを防ぐための対策法
借上社宅でのトラブルを防止するには、社宅の利用規約やマナーなどについて従業員に共有しておくとともに、入居・退去時に住居の損耗状況を記録してきます。
①社宅規程を作成する
社宅規程を作成して社宅に入居する際のルールやマナーについて遵守するように従業員に共有します。
社宅物件によって賃貸借契約の内容が異なるため、個別で注意が必要な項目について記載した内規も作成しておくことがポイントです。
社宅の入居者条件・賃料などの基本項目に加えて、以下のような内容を定めておくと、入居マナーや住宅設備、原状回復に関するトラブルを防ぎやすくなります。
▼トラブル防止のために定めておくとよい項目
- 生活や共有部の使用に関するマナー
- 設備の故障・不具合・破損などが起きたときの対応フロー・連絡先
- 原状回復が必要な範囲と費用の負担者 など
なお、社宅における原状回復費用の負担についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
②原状回復のチェックリストを活用する
賃貸物件の入居時・退去時に、住居内の部位ごとの損耗状況を記録する原状回復のチェックリストを活用することがポイントです。
原状回復をめぐるトラブルでは、損耗の時期・箇所・程度などの事実を確認することが難しくなります。損耗の箇所や程度を平面図に記入したり、写真を撮って添付したりすることで、交渉を行う際の証拠資料となり迅速なトラブル解決につながると期待できます。
▼原状回復のチェックリスト(例)
画像引用元:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
画像引用元:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
なお、賃貸借契約には契約自由の原則があります。強行法規に反しない内容の特約を設けていれば、一般的な原状回復義務を超える範囲の修繕費用を入居者に負担させることも認められています。
社宅担当者は、社宅物件の賃貸借契約を交わす際に原状回復に関する特約事項がないかどうかを必ず確認しておきます。
※2023年9月4日時点での最新情報(2011年8月資料)
出典:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
まとめ
この記事では、賃貸物件でよくあるトラブルについて以下の内容を解説しました。
- 賃貸物件でよくある4つのトラブル
- 賃貸物件に関するトラブルの解決方法
- 借上社宅のトラブルを防ぐための対策法
賃貸物件では、生活音やマナー違反などの入居者同士のトラブルをはじめ、住宅設備、原状回復に関するさまざまなトラブルが起こる恐れがあります。
社宅でのトラブルを防ぐためには、社宅規程を作成して従業員への遵守を促すとともに、原状回復のチェックリストを活用して入居・退去の際に損耗状況を記録しておくことがポイントです。
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