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退職時に起こりやすい社宅のトラブルと対策法

社有社宅または借上社宅では、入居する従業員が転職や結婚などの諸事情によって退職することになった際に、退去を依頼することになります。そして、社宅退去の際、費用面などでさまざまなトラブルが発生することも少なくありません。

人事総務部門のご担当者さまのなかには、社宅に入居している従業員が退職する際に「どのようなトラブルが起こり得るのか」「トラブルを防ぐためにどのような対策が必要なのか」と対応を検討されている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、従業員が退職する際に起こりやすい社宅のトラブルと対策法について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.退職時に起こりやすい社宅のトラブル
    1. 1.1.①すぐに退去できない
    2. 1.2.②原状回復工事の費用を支払ってくれない
    3. 1.3.③社宅使用料を徴収できない
  2. 2.退職による社宅のトラブルを防ぐための対策法
    1. 2.1.①退職決定時に誓約書を締結しておく
    2. 2.2.②退職時の退去ルールを明示する
    3. 2.3.③原状回復工事の費用負担を定める
    4. 2.4.④社宅使用料を徴収するタイミングを変更する
  3. 3.まとめ


退職時に起こりやすい社宅のトラブル

社宅に入居している従業員が退職することになった際には、物件の退去や原状回復費用、社宅使用料などに関するトラブルが起こりやすくなります。


①すぐに退去できない

退職する従業員に社宅の退去を依頼したものの、「次の新居が見つかっていない」「引越し費用が足りない」などの理由ですぐに退去できないことがあります。

社宅は従業員に対する福利厚生の一つとなり、企業が家賃または使用料の一部を負担しています。退職する従業員に退去してもらえないとなると、企業の費用負担が増加します。また、社有社宅の場合にはほかの入居希望者が社宅に住めない状況となります。

借上社宅の場合は、賃貸借契約の名義を企業から個人へ変更して「社宅に継続して住みたい」と申し出られることも考えられます。しかし、貸主側の承諾が得られず、従業員とのトラブルにつながる可能性があります。


②原状回復工事の費用を支払ってくれない

退去後に行う原状回復工事にかかる費用の支払いを従業員に依頼したにもかかわらず、支払ってもらえないというトラブルも考えられます。

賃貸物件では、借主の故意または過失によって生じた住宅の汚損・破損を復旧する“原状回復義務”が定められています。

借上社宅の場合、借主は企業に当たりますが、原状回復工事にかかる費用について、故意または過失による汚損・破損部分は、従業員が負担するように定めていることが一般的です。また、従業員が退職する際に、費用の負担割合についてトラブルになったり、退職後の最終給与で徴収ができないことがあります。


③社宅使用料を徴収できない

従業員が退職する際には、退去日までの社宅の使用料を徴収しますが、退職後に連絡が取れなくなり徴収できなくなるトラブルが起こることも少なくありません。

また、賃貸物件の契約内容によっては半年~2年以内での解約を短期解約の期間としており、解約違約金が設定されていることもあります。

短期解約に伴う違約金の負担について従業員と取り決めをしていない場合は、費用の徴収をめぐってトラブルに発展することも考えられます。

なお、短期解約の違約金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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退職による社宅のトラブルを防ぐための対策法

退職による社宅のトラブルは、企業が従業員に対して退職する際の社宅の取り扱いについて明確な取り決めをしていない場合に発生しやすくなります。

退職から社宅の退去までの流れや費用負担などについてあらかじめ明示しておくことで、円満な退去と話し合いによるトラブルの解決を図ることが期待できます。


①退職決定時に誓約書を締結しておく

退職が決まった段階で、社宅の退去に伴って従業員に請求する費用の説明と誓約書の締結を行います。

同時に、退職後の連絡先と請求先を確認して、最終給与からの天引き、あるいは口座引き落としなどの支払い方法についても取り決めておく必要があります。

また、短期解約違約金に限らず、賃貸借契約時の契約書を踏まえたうえで、社宅の入居時に従業員負担となる費用について説明をするとともに、社宅使用誓約書の取り交わしをすることも重要です。


▼誓約書で取り決めておく内容

  • 最終請求する社宅の使用料(金額・徴収方法)
  • 短期解約による違約金の金額と負担者
  • 原状回復費用の請求先


なお、社宅使用誓約書の内容と注意点については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。

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②退職時の退去ルールを明示する

社宅規程には、退職に伴う社宅の退去ルールについて明示・共有しておくことが重要です。退職時の退去ルールとして規定する項目には、以下が挙げられます。


▼退職時における退去ルールの規程項目

  • 退去の対象となる退職事由(自己都合・会社都合・定年による退職)
  • 退職事由別での退去の猶予期間
  • 賃貸借契約における名義変更の可否(借上社宅の場合)
  • 退去までの猶予期間の延長事由


従業員の自己都合による退職の場合は、2週間〜1ヶ月程度の猶予期間を設けることが一般的です。会社都合や定年による退職では、1〜3ヶ月以内の猶予期間を設定している企業もあります。

また、従業員のなかには病気やけが、親族の介護などの理由で退職することもあるため、事情を踏まえて猶予期間の延長についても考慮することが大切です。

なお、借上社宅の名義変更についてはこちらの記事で解説しています。

  【借上社宅の名義変更】個人契約に変更する方法と注意点 社宅として契約している場合でも、さまざまな事情により状況が変化することがあります。借上社宅の名義を法人から個人に変更するというケースもその一つです。 名義を変更する程度であれば手間はかからないように感じますが、実際は煩雑な書類の手続きや金銭などが発生する場合があります。 従業員から名義変更の申し出があり、「名義変更の方法を知りたい」「名義変更をする際の注意点を把握しておきたい」と考える担当者の方もいるのではないでしょうか。 この記事では、借上社宅の名義を法人から個人に変更する方法と注意点について解説します。 リロの社宅管理│業務削減効果90%以上のアウトソーシングサービス


③原状回復工事の費用負担を定める

社宅の退去時にかかる原状回復工事をめぐるトラブルを防ぐために、社宅規程で費用負担の割合や範囲を具体的に明記しておく必要があります。

従業員による故意または過失によって生じた汚損・破損の修繕費用については、従業員の自己負担とすることが一般的です。

借上社宅の賃貸物件によっては、契約時に原状回復の特約が設けられている場合もあるため、入居時・退職時に費用の負担について説明したうえで、誓約書にも記載しておくことが重要です。

また、入居時に社宅の損耗・劣化に関する状況をチェックリストで記録しておくことで、原状回復工事の範囲や金額をめぐるトラブルの防止につながります。


▼原状回復工事に関する社宅規程の内容

  • 原状回復工事にかかる費用の負担区分
  • 従業員が負担する原状回復工事の範囲
  • 企業が負担する原状回復工事の範囲
  • 原状回復工事にかかる費用の徴収方法 など


社宅の原状回復については、こちらの記事をご確認ください。

  社宅の修理・原状回復費用は誰が負担する? トラブルを防ぐ方法 社宅を含めた賃貸住宅の懸念事項の一つに、退去後に必要となる修理費用が挙げられます。一般的にこの修理費用のことを、“原状回復費用”と呼びます。 普通の物件であれば賃貸人と賃借人の問題ですが、不動産会社や個人を問わず、貸主から借り入れた物件を従業員に貸し出す借上社宅の場合は企業も関係します。 そのため、「修理・原状回復費用は誰が負担するのだろう」「トラブルを回避するために原状回復について把握しておきたい」という担当者の方は多いのではないでしょうか。 この記事では、社宅の原状回復の概要や、費用の負担、トラブルを防止するための方法について解説します。 リロの社宅管理│業務削減効果90%以上のアウトソーシングサービス


④社宅使用料を徴収するタイミングを変更する

従業員の退職によって社宅使用料を徴収できなくなるトラブルへの対策として、徴収のタイミングを変える方法が考えられます。

社宅使用料の支払いには、当月負担・前月負担・後払いの3つの方法がありますが、当月または前月負担であれば退職までの分を徴収しやすくなります。

これから社宅制度を導入する場合には、社宅使用料を当月または前月払いにしておくことも一つの方法といえます。



まとめ

この記事では、退職時に起こりやすい社宅のトラブルについて以下の内容を解説しました。


  • 退職時に起こりやすい社宅のトラブル
  • 退職による社宅のトラブルを防ぐための対策法


社宅に入居していた従業員が退職する際には、退去や原状回復工事の費用、社宅使用料の徴収をめぐってトラブルにつながりやすくなります。

円満な退去や話し合いによるトラブルの解決を図れるように、退去が決まった段階で誓約書を締結するとともに、事前に退去ルールを明示したり、原状回復工事の費用負担を定めたりする対策が求められます。社宅使用料の徴収については、当月または前月の支払いへと徴収するタイミングを変えることも一つの方法です。

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