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社宅の入居条件を決める7つの項目と公平な制度設計のポイント

社宅は従業員の住居に関する福利厚生として喜ばれる制度の一つです。住居に関する金銭的な負担を抑えられることから、地方または遠方に住む求職者の採用促進や、離職の防止につながることが期待できます。

社宅制度を運用する際は、従業員間で不公平感が生まれないように一定の入居条件を定めておくことが重要です。

これから社宅制度の導入を検討している人事総務部門のご担当者さまのなかには、「社宅の入居条件にはどのような項目があるか」「不公平感やトラブルを生まないようにするためのポイントはあるか」など気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、社宅の一般的な入居条件と公平な制度設計を行うポイントについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.一般的な社宅の入居条件は7つ
    1. 1.1.①入居の対象者
    2. 1.2.②年齢や役職
    3. 1.3.③同居人の範囲
    4. 1.4.④家賃上限
    5. 1.5.⑤物件の間取り・広さ
    6. 1.6.⑥入居エリア
    7. 1.7.⑦そのほかの入居条件
  2. 2.公平な社宅運用を行うための制度設計のポイント
  3. 3.まとめ


一般的な社宅の入居条件は7つ

社宅制度を運用する際は、福利厚生費を適正に管理するとともに、従業員間で不公平感が出ないように一定の入居条件を定めておく必要があります。

一般的な入居条件として定められている項目には、以下が挙げられます。


①入居の対象者

人事院の『令和3年 民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要』によると、社宅制度がある企業のうち、入居対象者を限定している企業は82.2%となっています。


▼対象者の例

  • 人事異動による転居を伴う転勤者
  • 通勤可能区域外に自宅がある従業員
  • 地方や遠方からの転居を伴う新規採用者
  • 独身・単身者
  • 扶養家族を持つ従業員(世帯主) など


通勤可能区域については明確な定義はなく、会社までの通勤時間を考慮して、ワークライフバランスを確保できる範囲で決定します。

出典:人事院『令和3年 民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要


②年齢や役職

人事院の同調査結果によると、年齢によって社宅の利用を制限している企業は22%、役職段階では5.0%となっています。

年齢の制限については、新規採用者や若手従業員の住宅に関する経済的な負担を軽減したり、持ち家の取得を支援したりする目的があります。

役職による制限は、合理性に欠ける基準を設けるとトラブルにつながることもあるため、公平性を担保することが求められます。


▼年齢や役職による対象者の制限例

  • 単身かつ30歳までの従業員
  • 夜間や休日対応が発生する○○部署の管理者 など


なお、年齢や役職の入居条件ではなく、“入社○年まで”といった一定の入居期限を設けている場合もあります。

出典:人事院『令和3年 民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要


社宅の入居期限については、こちらの記事で解説しています。

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③同居人の範囲

単身者を対象とした社宅の場合は、同居を認めないように定めていることが一般的です。世帯者を対象とする社宅の場合には、どこまでの同居人を許可するか範囲を明確にしておくことが重要です。


▼同居人の範囲に関する条件の例

  • 単身者のみ
  • 配偶者や扶養家族
  • 3親等内の親族 など


なお、社宅での同棲についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

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④家賃上限

賃貸物件を借り上げて社宅として貸し出す場合には、家賃の一部を会社側が負担することになるため、家賃上限がなければ物件によって負担する金額が異なってしまいます。

従業員ごとに負担する金額が異なると、不公平感を生み不満につながりやすくなります。このようなトラブルを防ぐために、エリアの家賃相場や入居する人数に応じて、家賃上限を設定しておくことが重要です。


⑤物件の間取り・広さ

借上社宅において従業員が賃貸物件を選べるようにする場合には、間取りや広さの条件についても定めておきます。

物件の間取りや広さは家賃にも影響するほか、退去時の原状回復費用が増加する可能性などがあるため、制限を設けることが一般的です。また、単身者とそうでない場合で、間取りの種類や広さの上限を定めることも必要です。


▼間取り・広さに関する条件の例

入居対象者
間取り
広さ
単身者向け
1R~1LDK
25m2程度
世帯向け
2DK~3LDK
約30〜50m2


なお、平米数と間取りの関係性については地域によって差があることから、上記の条件はあくまで目安としてお考えください。

社宅の平均的な間取りについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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※賃貸物件の居住・使用によって発生した損耗や破損などを復旧する工事のこと。賃借人の故意・過失や不注意などによって生じた損耗・破損については、復旧工事にかかる費用を賃借人が負担することが定められています。


⑥入居エリア

社宅の入居条件を定める際は、具体的なエリアまたは駅数などを定めることが必要です。会社までの距離が遠くなりすぎると、従業員に支給する交通費の額が増加して企業側の負担が増えます。


▼入居エリアに関する条件の例

  • 会社の所在地となる○○区内または○○市内
  • 会社の最寄りとなる○○駅から3駅以内


入居エリアを定める際に「○○km以内」と距離を制限することで、通勤手当を抑制しやすい、マイカーによる通勤手当の非課税限度額が算出しやすいなどのメリットがあります。

その反面、線引きが曖昧になりやすく、賃貸物件の情報によって記載内容・距離の計測方法が異なることから判断が難しくなります。社宅担当者の目線で判断を求められる業務が発生すると、業務の負担にもつながります。

そのため、入居条件を明確にするには、住所または最寄り駅を設定するほうがよいと考えられます。


⑦そのほかの入居条件

会社が必要に応じて定める入居条件もあります。


▼そのほかの入居条件

  • ペットの飼育
  • 物件の築年数や構造
  • 物件の階数 など


社宅への入居を希望する従業員のなかには、現在ペットを飼っている、またはこれから飼う予定があるという人もいると考えられます。

賃貸物件でペットの飼育が認められている場合でも、騒音やにおい、原状回復の範囲などについてトラブルにつながるため、あらかじめ飼育の可否と条件について定めておくことが重要です。

また、安全管理や防犯、災害対策などの観点から、物件の築年数・構造・階数について一定の条件を設けるケースもあります。社宅を運用する際は、従業員の安全な暮らしに配慮することが求められます。

なお、社宅でのペット飼育についてはこちらの記事で解説しています。

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公平な社宅運用を行うための制度設計のポイント

社宅の入居条件を設定する際は、公平性を保ちつつ事情に応じて柔軟に対応できる制度設計を行うことがポイントです。


▼公平かつ柔軟性のある制度設計のポイント

  • 入居条件に合理性があり明確に判断できるようにする
  • 個別の事情がある場合は相談に応じる
  • 業種や地域などの特性を考慮する


一部の従業員が優遇されたり、線引きが曖昧で判断が難しかったりする入居条件は、トラブルにつながりやすくなります。入居条件を定める際は、合理性があり、条件に当てはまるかどうかを明確に判断できる内容にすることが必要です。

また、入居条件を満たさない場合でも、やむを得ない事情がある場合には条件の緩和を柔軟に検討することが望まれます。さらに、職種特有の事情や会社がある地域の特性なども考慮して、できるかぎり住みやすい環境で物件を選べるようにすることも重要です。


▼入居条件を考慮する必要がある事情

  • 親の介護や通院が必要な場合には、定められた入居エリアよりも離れた地域にある物件への入居を認める
  • 繁華街が近く防犯上の不安があるため、家賃の上限を超えるが防犯設備が整った物件への入居を認める
  • 交代制勤務で朝勤・夜勤がある部署または職種のため、終電・始発の時間を考慮して駅数の条件を緩和する など



まとめ

この記事では、社宅の入居条件について以下の内容を解説しました。


  • 一般的な社宅の入居条件
  • 公平な社宅運用を行うための制度設計のポイント


社宅制度を運用する際は、福利厚生費の適正化を図り、従業員の不公平感が生まれないように一定の入居条件を定める必要があります。

入居条件を定める際は、合理性があり明確に入居の有無を判断できる内容にするとともに、個別の事情や業種・地域などの特性に考慮して柔軟に対応することがポイントです。

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