役員社宅とは? 社宅使用料の設定方法や導入時の注意点
※2024年6月1日更新
社宅制度は、企業が所有あるいは外部から借り上げた物件を従業員に貸与して、一定の使用料を徴収する福利厚生の一種です。
役員にも社宅を貸し出すことは可能ですが、住宅の種別によって税制上の取り扱いが異なるため、社宅使用料を設定する際には注意が必要です。
人事総務部門のご担当者さまのなかには「役員社宅を貸し出す際の社宅使用料はどのように設定するのか」「役員社宅を導入する際に注意しておくことはあるか」など気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、役員社宅を提供するメリットや社宅使用料の計算方法、役員社宅を導入する際の注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.役員社宅とは
- 2.役員社宅を導入する2つのメリット
- 2.1.①社会保険料の負担軽減
- 2.2.②役員の手取りが増える
- 3.役員社宅の社宅使用料を計算する方法
- 4.役員社宅を導入する際の注意点
- 5.まとめ
役員社宅とは
役員社宅とは、役員に提供する社宅のことです。役員の範囲には、以下の2つが挙げられます。
▼役員の範囲
- 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人
- 上記以外で以下のいずれかに該当する人
a.法人の使用人
b.同族会社の使用人
役員社宅として提供する物件には、企業が所有する物件のほか、不動産会社または家主から借り上げた物件も含まれます。
ただし、企業が役員へ無償で社宅を貸し出したり、賃貸借契約を役員個人で契約していたりする場合には、社宅制度として認められません。
役員社宅を運用する際には、役員から一定割合以上の社宅使用料を徴収する必要があります。また、賃貸借契約を交わす際は会社名義での契約が必須です。
出典:国税庁『No.5200 役員の範囲』『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』
役員社宅を導入する2つのメリット
役員社宅を導入すると、社会保険料の節減効果や役員の手取り増加といったメリットがあります。
①社会保険料の負担軽減
会社が役員社宅の家賃を一部負担することで、社会保険料の負担軽減につながります。
社会保険料は、役員・従業員・会社がそれぞれ負担するものですが、給与や報酬額が高くなれば、その分だけ支払う社会保険料も高くなります。
しかし、役員社宅の家賃の一部を会社が負担した場合は、その分だけ役員報酬を引き下げることができるため、社会保険料の負担額を減らすことが可能です。
②役員の手取りが増える
役員社宅を導入することで、役員の手取りが増える可能性があります。
役員個人が社宅の契約者である場合、家賃は役員の全額自己負担になりますが、会社が家賃を一部負担する場合は役員の家賃負担が減ります。
また、役員が負担する社宅使用料(賃貸料相当額)と会社が負担する賃料の差額分を役員報酬から引き下げることで、社会保険料などの負担軽減につながります。その結果、役員の可処分所得が増えることになります。
役員社宅の社宅使用料を計算する方法
従業員を対象とした通常の社宅と役員社宅では、社宅使用料に関する税制上の取り扱いが異なります。
従業員に社宅を貸与する際に、毎月一定額の社宅使用料(以下、賃貸料相当額)を徴収している場合には、給与として課税されなくなります。
賃貸料相当額の取り扱いは、物件の種別によって3つに分類されています。
▼小規模な住宅
対象の物件 |
法定耐用年数が30年以下:床面積132㎡以下 |
賃貸料相当額の算出方法 |
以下、1~3の合計額
|
▼小規模ではない住宅
対象の物件 |
法定耐用年数が30年以下:床面積132㎡超 |
賃貸料相当額の算出方法 |
【社有社宅の場合】 A. その年度における建物の固定資産税の課税標準額×12%(※)
|
※法定耐用年数が30年を超える建物の場合には10%を乗じる
▼豪華住宅
対象の物件 |
床面積が240㎡超(※) |
賃貸料相当額の算出方法 |
【社有物件の場合】
|
※取得額・賃料・内外装の状況などを総合的に勘案して判断されます。床面積が240㎡以下であっても、一般に貸与される住宅にはない豪華な内装やプールなどを備えた住宅は、豪華社宅に該当する可能性があります。
なお、豪華社宅についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:国税庁『No.2600 役員に社宅などを貸したとき』
役員社宅を導入する際の注意点
役員社宅は、通常の従業員に提供する社宅制度と対象者が異なるため、運用時にはトラブルを防ぐための対策が求められます。
役員社宅に関する社宅規程を作成する
所得税法上の取扱いが異なる従業員向けの社宅制度と区別し、適正な運用が行えるように、役員社宅に関する社宅規程を作成しておくことが重要です。
役員と従業員は税務上の扱いが異なり、制約される部分が大きくなります。税務調査でのトラブルを防ぐために、対象者の条件や社宅使用料の計算方法などについて明確に定めておく必要があります。
▼役員社宅の社宅規程に記載する内容
- 対象とする役員の条件と範囲
- 社宅使用料に関する役員と企業の負担割合
- 社宅使用料の計算方法
- 社宅使用料の徴収方法 など
個人所有の物件を法人名義の賃貸物件に変更するのは難しい
役員が個人で所有している物件を法人名義に変更することは難しくなります。
役員社宅に限らず、社宅は一般的に会社が用意し貸与するものという側面を持っています。そのため、会社がその物件を所有しているか、不動産会社をはじめとする外部から会社が借り受けた物件でなければならないとされています。
役員が所有する物件を法人名義に変更して役員社宅にしようと考えている場合には、一度、税理士や社会保険労務士などにご相談することを推奨いたします。
まとめ
この記事では、役員社宅について以下の内容を解説しました。
- 役員社宅の概要
- 役員社宅を導入する3つのメリット
- 役員社宅の社宅使用料を計算する方法
- 役員社宅を導入する際の注意点
役員社宅を導入すると、課税所得を減らして社会保険料の負担を軽減したり、役員の手取り額が増えたりするメリットが期待できます。
ただし、従業員向けの社宅制度とは税制上の扱いが異なるため、対象者や社宅使用料の設定には注意が必要です。法令に基づいた適正な社宅制度の運用につなげるには、専門知識を有する外部の事業者にサポートを依頼することも一つの方法です。
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