社宅制度の成り立ちと社宅を構成する要件について解説

2022-11-24 08:00

社宅制度は福利厚生の一つであり、人材確保のためのアピールポイントとして導入する企業も少なくありません。

これまで経済状況や働き方の変化により、社宅制度の形は変わってきましたが、今後も変化する可能性があると考えられます。

そうしたなか、「社宅制度を導入したい」「社宅制度の成り立ちについて学びたい」と考えている担当者の方もいるのではないでしょうか。

この記事では、社宅制度の成り立ちと社宅を構成する要件について詳しく解説します。

なお、社宅管理の委託についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

社宅制度の歴史的背景と変遷

社宅制度は、昔から従業員の確保・維持、経済的な負担軽減などの目的で導入されてきました。

社宅制度の歴史は古く、明治時代まで遡ります。社宅制度は、高度経済成長期やバブル崩壊などによる社会の変化とともに、制度の内容や目的の改善が行われてきました。

当初は従業員の確保・維持を目的としていましたが、近年では従業員のための福利厚生へと変化しています。また、働きやすさを重視する考えや経費削減、アウトソーシングなどによって、社宅の形と運営方法は変化し続けています。

社宅制度は、労働人口の減少や働き方、経済状況の変化などによる影響を受けやすいといえます。企業の経営状況や社会経済が安定していなければ導入・維持が困難な制度です。

当然のことながら、全国的な労働人口の減少によって、一般住宅・民営賃貸物件の居住者数は減少傾向にあるため、社宅に住む従業員数も減少傾向にあるといわれています。

また、都心部でみられる規模の社宅は、商業施設や保養所などの関連施設が付随することがあるため、地域経済に影響を与えています。人材の流動化が進む現代では、社有社宅から借上社宅への移行や、社宅制度の目的を分けて社有社宅と借上社宅を併用するといった制度の見直しも選択肢の一つとして検討されています。

さらに、生活にゆとりを求める考え方や共働き世帯の増加、コロナ禍に伴う働き方の変化などにより、社宅の在り方や活用方法が変わりつつある状況です。

福利厚生には、法律により義務づけられている“法定福利厚生”と、企業が独自に設定できる“法定外福利厚生”があります。法定福利厚生は社会保険や雇用保険などが該当して、法定外福利厚生は社宅制度や家族手当、健康診断などが該当します。

社宅制度は、新しい従業員を確保するためのアピールポイントになるため、導入する企業も少なくありません。従業員においても、住む場所の確保や家賃の負担が少なくなることがメリットです。

また、社宅には単身用・転勤者用・家族用などさまざまな用途や導入目的があります。

なお、こちらの記事では、福利厚生の一つである社宅の位置づけをはじめ、基本的な社宅の種類と住宅手当との違いについて解説しています。併せてご覧ください。

社宅制度を導入する場合、所得税法や健康保険法・厚生年金保険法などの法律について把握しておくことが重要です。

社宅を貸し出す場合は、給与所得として課税されるケースがあります。

賃貸料相当額（1ヶ月当たり一定額の家賃）以上の金額を従業員から徴収する場合は、給与所得として課税されません。

一方、賃貸料相当額以下または無償提供、別途で住宅手当を支給している場合は、給与所得扱いとなるため課税対象となります。

健康保険法・厚生年金保険法上では、社宅は現物給与扱いになるため、給与と同じ報酬として加算されるケースがあります。

報酬額は、厚生労働省が定める各都道府県別の金額に換算して給与に加算されます。従業員が家賃を支払っている場合は、家賃の金額を差し引いた額が加算される仕組みです。

ほかにも、宅地建物取引業法（宅建業法）や労働者災害補償保険法（労災保険法）、法人税法、消費税法など、社宅の制度設計・実務運用上で関連する法制度が存在します。

社宅は、“借上社宅”と“社有社宅”の2種類に分けられます。また、社宅の導入企業も“民間企業”と“公営企業”の2種類あります。

このように、社宅は種類や導入企業など、さまざまな方法で分けることが可能です。

▼社宅の主な分類方法