社有社宅とは? 借上社宅と比較した管理コストの違いとメリット・デメリット
※2024年5月2日更新
企業が従業員に提供する福利厚生の一つに社宅制度があります。社宅を貸与して住居に関する経済的なサポートを行い、従業員の定着化や人材採用にもよい影響をもたらすことが期待できます。
社宅には、企業が保有する建物を従業員へ貸し出す“社有社宅”のほか、賃貸物件を企業が借り上げて従業員へ貸し出す“借上社宅”があり、運用方法や管理コストなどに違いがあります。
この記事では、社有社宅の概要や借上社宅との違い、運用するメリット・デメリットについて解説します。
なお、福利厚生における社宅制度の位置づけについては、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
目次[非表示]
- 1.社有社宅とは
- 2.借上社宅との違い
- 3.社有社宅を運用するメリット
- 3.1.企業視点
- 3.1.1.①会社の資産になる
- 3.1.2.②家賃や短期解約による違約金が発生しない
- 3.1.3.③コミュニケーションの活性化が期待できる
- 3.2.従業員視点
- 3.2.1.①空室があればすぐに入居できる
- 3.2.2.②食事の提供を受けられる場合がある
- 4.社有社宅を運用するデメリット
- 4.1.企業にとってのデメリット
- 4.1.1.①固定資産税がかかる
- 4.1.2.②維持管理や修繕が必要
- 4.1.3.③居室数の過不足が生じるリスクがある
- 4.2.従業員にとってのデメリット
- 4.2.1.①入居する物件の選択肢が限られる
- 4.2.2.②仕事とプライベートの切り分けが難しい
- 5.リロケーション・ジャパンの社宅管理サービスで運用管理を効率化
- 6.まとめ
社有社宅とは
社有社宅とは、自社で購入または建設して保有する不動産を従業員に貸し出す社宅制度のことです。アパートやマンションなどの住居を一棟単位やフロア単位で一括借り上げして一棟単位で運用する場合のほか、土地や建物を所有して運用するケースがあります。
従業員から徴収する社宅使用料については、周辺相場にある賃貸物件の家賃よりも安く設定して従業員の経済的な負担を軽減することが目的です。
福利厚生の一環として社有社宅を導入することで、入社・転勤の際にスムーズに住居を確保でき、従業員満足度の向上や優秀な人材の獲得につながります。
借上社宅との違い
借上社宅とは、企業が不動産管理会社や物件オーナーから賃貸物件を借り上げて従業員に貸与する形式の社宅制度です。社有社宅と比較して管理コストに含まれる項目に違いがあります。
▼社有社宅と借上社宅の管理コスト
社宅制度の |
所有者 |
管理コスト |
社有社宅 |
自社 |
土地(建物)の購入費、建設費、 |
借上社宅 |
不動産管理会社や |
敷金・礼金、仲介手数料、家賃、 |
社有社宅では、土地・建物を取得するための初期費用がかかるほか、建物の維持管理や修繕も自社で行うため、計画的な資金の積み立てと運用が必要になります。
一方の借上社宅では、法人名義で賃貸物件を借りて、契約時の諸費用や入居後の家賃を支払います。物件に関する費用の負担区分や割合については企業が任意で定められますが、社内規程・内規で明文化しておく必要があります。
社有社宅を運用するメリット
社有社宅は、企業と従業員の両方にとってさまざまなメリットがあります。
企業視点
社有社宅は、借上社宅とは異なり企業が保有する資産となるため、長期的に安定した運用ができます。
①会社の資産になる
社有社宅は、土地や建物の所有者となる企業の不動産資産になります。そのため、取得費用の減価償却や維持管理費の計上ができます。
▼経費として計上できる項目
- 借入金の利息
- 不動産取得税
- 登記料
- 印紙代
- 固定資産税
- 修繕費 など
また、従業員だけでは満室にならない場合でも、空室を賃貸物件として一般の消費者に貸し出すことで収益を得ることも可能です。
②家賃や短期解約による違約金が発生しない
企業が所有者となる社有社宅では、不動産管理会社あるいは物件オーナーと賃貸借契約を交わす必要がないため、家賃や短期解約による違約金が発生しません。
従業員から徴収する使用料や入居期間は一定の条件下において企業が自由に設定できるため、より柔軟でニーズに沿った運用を行えます。また、賃貸借契約で発生する更新料や管理費・共益費なども不要となります。
③コミュニケーションの活性化が期待できる
一棟単位のアパートやマンションで部屋を貸与する社有社宅では、同じ建物に従業員が居住することになるため、コミュニケーションの活性化を図れます。
職場以外の場所で会話や交流ができる機会があると、良好な人間関係が構築されて働きやすさにつながると考えられます。
また、近くに先輩や同僚が暮らしていると気軽に相談・意見交換ができるようになり、仕事のモチベーション、企業への貢献度の向上にも結びつきます。
従業員視点
従業員のメリットは、住居に関する経済的な負担を抑えられるだけではありません。住居探しの労力を軽減したり、生活に関するサポートを受けたりすることができます。
①空室があればすぐに入居できる
社有社宅の場合、新たに借り上げる物件を探す必要がなく、部屋が空いてさえいればすぐに入居手続きをすることが可能です。
急な入社や転勤時にも住居を確保できるため、「条件に合う賃貸物件が見つからない」といった事態を防げます。
②食事の提供を受けられる場合がある
社有社宅においては、従業員への福利厚生を充実させるために食事の提供サービスを導入することがあります。
単身赴任者や一人暮らしをする従業員のなかには、「仕事が忙しい」「自炊が苦手」などの理由から外食が中心になってしまうことがあります。外食で食事を済ませたり、弁当や惣菜を買ったりする食生活が多くなると、栄養バランスが偏りがちになります。
社宅で栄養バランスに配慮した食事を提供すると、生活習慣病の予防や健康の維持・増進につながると期待できます。
なお、社有社宅・社員寮における食事提供サービスについては、こちらの記事をご確認ください。
社有社宅を運用するデメリット
社有社宅には、運用管理の負担や維持管理のコスト、稼働率の低下リスクなどのデメリットがあることを理解しておく必要があります。
企業にとってのデメリット
企業側のデメリットには、主に運用管理の労力やコストなどが挙げられます。
①固定資産税がかかる
社有社宅は企業の固定資産に該当するため、固定資産税が発生します。
固定資産税とは、土地や建物などの固定資産を所有する人に課税される税金です。所有する固定資産の評価額に標準税率となる1.4%(※)を掛けた税額を毎年市町村などの行政に納める必要があります。
なお、借上社宅の場合、所有者が不動産管理会社または物件オーナーとなることから、借主による税金の負担はありません。
※自治体によって1.5%または1.6%の場合もあります。
②維持管理や修繕が必要
維持管理や修繕に関する労力や費用を自社で負担する必要があることもデメリットの一つです。
借上社宅の場合、建物を所有する不動産管理会社または物件オーナーが建物の維持管理や修繕、設備のメンテナンスなどを行います。
一方の社有社宅では、自社で維持管理や修繕を行う必要があるため、日頃の清掃といった労力や定期的な繕費用といったコストが発生します。大規模な修繕だけでなく、共用部の清掃や設備のメンテナンスなどにも費用がかかるため、日常のメンテナンスや計画的に資金を確保しておくことが必要です。
③居室数の過不足が生じるリスクがある
社有社宅には、居室数の過不足が生じるリスクがあります。
退職や結婚によって入居者が退去したり、採用人数が減少して入居希望者が少なくなったりすると、稼働率の低下につながります。反対に満室の場合には、入社・転勤の際に社宅へ入居できなくなる問題が発生します。
入居者数が変動しやすい企業では、空室のリスクを防ぐための対策や安定した居室数を供給できる仕組みを整えることが重要です。
従業員にとってのデメリット
貸与する社有社宅のエリアや居住環境によっては、従業員が不便・不満に感じることがあります。
①入居する物件の選択肢が限られる
従業員が自由に入居する物件を選択できないことは、社有社宅のデメリットといえます。間取りや設備、築年数などが従業員の希望に沿わない場合には、社宅制度を利用してもらえない可能性があります。
なかには、社有社宅から借上社宅制度へと移行することで、社宅規程の範囲内で入居したい物件を従業員が選べるようにしている企業も見られます。
②仕事とプライベートの切り分けが難しい
建物内に同じ職場の従業員が入居すると、プライベートな時間も顔を合わせる機会が増えることで、仕事とプライベートの切り分けが難しくなる場合があります。
プライバシーを優先したい従業員のなかには、社有社宅への入居を避けたいと考える人もいます。従業員が入居しやすい環境をつくるには、社宅内での生活に関するルールを定めてプライバシーを確保することが求められます。
なお、従業員が社宅への入居を避ける原因についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
リロケーション・ジャパンの社宅管理サービスで運用管理を効率化
『リロケーション・ジャパン』では、社宅の運用管理をトータルサポートしています。貴社の課題やニーズに応じたサービスによって、社宅担当者の業務改善と従業員満足度の向上を図ります。
社有社宅の運用代行サービスでは、運用管理や維持管理に関する多岐にわたる業務を依頼いただけます。
▼社有社宅の運用代行サービスで依頼できる業務の例
- 入退去管理
- 入居物件の差配
- 社宅使用料の計算
- 法定点検を含む設備点検
- 設備故障や不具合の修理
- 清掃業務
- 中長期修繕計画の立案 など
社有社宅の運用管理に関する業務を委託することで、社宅担当者の負担が軽減されて、より生産性が高い業務に注力できるようになります。
詳しくは、こちらのページをご確認ください。
まとめ
この記事では、社有社宅について以下の内容を解説しました。
- 社有社宅の概要
- 借上社宅との違い
- 社有社宅を運用するメリット・デメリット
- リロケーション・ジャパンの社宅管理サービス
社有社宅は、物件探しや賃貸借契約の手続きが必要ないため、入社・転勤の際にスムーズに住居を確保できるメリットがあります。
ただし、建物の維持管理や修繕、日常的な清掃などを自社で行う必要があるため、社宅担当者の業務負担が増加します。効率的な運用を行うには、社宅管理のアウトソーシングを活用することも一つの方法です。
『リロケーション・ジャパン』では、社有社宅の運用代行サービスを提供しております。入退去管理をはじめ、清掃や設備のメンテナンス、長期修繕計画に基づく工事の実施に至るまでトータルサポートしています。
詳しくは、こちらから資料をご確認ください。