社宅には住みたくない? 従業員が入居を避ける原因と対策
社宅制度は、従業員にとって住居に関する金銭的な負担を抑えられることが利点です。しかし、福利厚生の一環として社宅制度を導入しているものの、従業員が社宅に入居したくないというケースもあります。
人事総務部門の担当者のなかには、「社宅に住みたくない原因は何なのか」「社宅制度の利用を促進するためにどのような対策が有効なのか」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、従業員が「社宅に住みたくない」と考える原因と入居者を増やすための対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.従業員が社宅に住みたくない原因
- 1.1.築年数が古く住みにくい
- 1.2.ペットを飼えない
- 1.3.仕事とプライベートの切り分けが難しい
- 2.社宅の入居希望者を増やすための対策
- 2.1.①社有社宅のリフォームやリノベーションを実施する
- 2.2.②社宅制度の目的や導入背景を伝える
- 2.3.③社宅規程を見直す
- 2.4.④社宅でペットを飼えるようにする
- 3.社宅制度を利用するメリットを整理することも重要
- 4.まとめ
従業員が社宅に住みたくない原因
社宅への入居を避ける原因には、物件そのものの住みにくさや従業員のニーズに合わないことなどが考えられます。借上社宅の場合は、社宅規程(契約可能な物件の制限や条件など)によるものが主な理由です。また、社有社宅の場合は、主に物件そのもの(建物の立地や設備の有無など)によるものが主な理由となります。
築年数が古く住みにくい
築年数が30年以上の古い社宅の場合、建物や設備が老朽化していたり、間取りが現代の生活様式に合わないことが挙げられます。また、1981年以前に建てられた物件については、新しい建築基準法に則していない物件もあります。
設備・間取り・内装などが従業員のニーズに合わない場合には、社宅制度を魅力的と感じずに「住みたくない」と考える人もいると考えられます。
ペットを飼えない
従業員のなかには、ペットを飼えないことによって社宅への入居を避ける人もいると考えられます。
賃貸物件の管理規約でペットの飼育が禁止されている場合や、社宅規程でペットの飼育を不可にしている場合には、現在ペットを飼育している、またはこれから飼育しようと検討している従業員が入居できなくなります。
2020年以降、新たに犬や猫の飼育を始めた頭数は年に40万頭を超えており、住居選びにおけるペットの影響は決して小さくないと考えられます。
一方で、ペットの飼育を許可することで、敷金が高くなるなど入居時の契約条件が変化したり、退去時の原状回復工事が高額化したりする場合もあります。そのため、費用負担についての取り決めを行うとともに、ほかの社宅対象者との公平性を考慮することが必要となります。
仕事とプライベートの切り分けが難しい
社有社宅のように一棟単位で運用している社宅では、職場の同僚や上司などと顔を合わせる機会が増えることから仕事とプライベートの切り分けが難しくなります。
また、来客の制限や門限などの私生活に影響のあるルールを社宅規程で定めている場合には、プライベートの活動が制限されてしまい不満を感じる従業員もいると考えられます。
内閣府の『男女共同参画白書 令和5年版』によると、仕事とプライベートのバランスについて、“仕事を優先・専念することを理想としている”労働者の割合は少ないことが報告されています。
▼仕事・プライベート・家庭生活のバランスの理想と現実
画像引用元:内閣府 男女共同参画局『特-46図 仕事とプライベート・家庭生活のバランスの理想と現実(有業者)』
プライベートを優先したい従業員は、職場の関係者と距離が近くなり過ぎることを恐れて、一棟単位の社宅に住みたくないと考える方がいる可能性もあると考えられます。
出典:内閣府 男女共同参画局『男女共同参画白書 令和5年版』『特-46図 仕事とプライベート・家庭生活のバランスの理想と現実(有業者)』
社宅の入居希望者を増やすための対策
社宅の入居希望者を増やすには、従業員にとって魅力的な住環境に改善を図ったり、ニーズに対応できるように社宅規程を見直したりする対策が必要です。
①社有社宅のリフォームやリノベーションを実施する
社有社宅の築年数が古く老朽化が進んでいる場合には、リフォームやリノベーションを実施して住みやすい住環境へと改善を図る対策法があります。
▼社有社宅のリフォームやリノベーション例
- 水回りの設備を最新仕様のものに交換する
- 損耗した壁紙やフローリングを張り替える
- 現代の生活様式に合わせた間取りに改修する
内装・設備・間取りなどを従業員のニーズに合わせて改修することで、住みやすさや利便性が向上して、入居したいと考える人が増えると考えられます。
なお、借上社宅の場合は賃貸物件の所有者がオーナーまたは管理会社となるため、許可なくリフォームやリノベーションを実施することはできません。
社有社宅のリフォームやリノベーションについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
②社宅制度の目的や導入背景を伝える
社宅の入居希望者を増やすうえで、対象となる従業員にその魅力を伝えることも効果的な対策の一つです。
特に社宅は、住まいの提供という物理的な側面だけでなく、会社の視点や利用者である従業員の視点によってさまざまな側面を併せ持っており、社宅制度の導入目的やその内容は会社ごとに異なります。会社の方針とのつながりや、福利厚生制度としての社宅のメリットを説明することで、社宅に居住することへの不安の解消につながります。
ただし、会社方針や外部環境は変化するため、長年社宅制度を導入している場合は、導入当初の目的やメリットが薄れているおそれもあります。従業員への説明だけでなく、双方向でコミュニケーションを取ることが重要です。
▼社宅制度の目的やメリットの例
- 配属人数や年数が流動的な拠点地域でも必要分だけ住環境を確保できる(借上社宅の場合)
- 工場やインフラ環境など、近隣に居住用賃貸物件が少ない地域で安定して住環境の確保ができる(社有社宅の場合)
- 入社年月の浅い従業員の経済的負担を軽減できる
③社宅規程を見直す
従業員のワークライフバランスを向上させてプライベートの充実を図るために、社宅規程を見直すことも必要です。
▼社宅規程の見直し例
- 来客の制限や門限などの私生活に影響するルールを緩和する(社有社宅の場合)
- 社宅にできる賃貸物件の条件を広げる(借上社宅の場合)
また、社宅には、住宅1戸単位で賃貸借契約を締結する“戸別借上社宅”があります。戸別借上社宅において、社宅規程で定めた範囲で従業員に選んでもらう形式を採用すれば、一棟単位の社宅に暮らす場合と比べて、プライベートとの切り分けがしやすくなります。
これにより、職場の関係者との距離感を確保したい人や、プライベートを重視したい人も住みやすい社宅となり、入居希望者が増えることが期待できます。
なお、社宅の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
④社宅でペットを飼えるようにする
社宅に入居できる対象者を広げるために、ペットの飼育を認めることも対策法の一つです。
近年では、ペット需要の増加やワークライフバランスを重視する考えから、社宅でペットの飼育を認めるケースもあります。ペットの飼育を認めることによって、ペットとの生活を望む従業員も社宅に入居できるようになります。
ただし、ペットの飼育に関してトラブルにつながることもあるため、社宅規程でルールを明確にしておくことが重要です。
▼ペットの飼育に関するルールの例
- ペットの飼育を希望する場合は事前に申請して許可を得る
- 退去時の原状回復費用は入居者の全額負担とする
- 会社に無断でペット飼育をしていた場合の退去費用は入居者の全額負担とする
社宅でのペット飼育についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
社宅制度を利用するメリットを整理することも重要
社宅の入居希望者を増やすには、社宅制度のメリットを従業員に周知することが欠かせません。一般的な社宅制度では、入居者にとって以下のメリットがあります。
▼社宅制度による入居者へのメリット
- 個人で賃貸借契約を結ぶよりも少ない家賃の負担で入居できる
- 物件探しや賃貸借契約などにかかる労力・時間を抑えられる
また、入社または転勤に伴う社宅の物件探しや引越しの手続きなどのサポートを行い、スムーズに入居できる体制を整えることも必要といえます。
なお、社宅制度の基本情報や喜ばれる社宅の条件については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、社宅の運用について以下の内容を解説しました。
- 従業員が社宅に住みたくないと考える原因
- 社宅の入居希望者を増やすための対策
- 社宅制度を利用してもらうための取り組み
社宅に住みたくないと考える原因には、築年数が古く住みにくいことや、ペットを飼えないこと、仕事とプライベートの切り分けが難しいことなどが考えられます。
入居希望者を増やすためには、現代の生活様式と従業員のニーズに合った住環境へ改善を図ることや、社宅規程を見直してワークライフバランスの向上を図ることがポイントです。
また、社宅制度の魅力を従業員に周知したり、物件探しや引越し手続きをサポートしたりして、入居を後押しする取り組みを行うことも欠かせません。
『リロケーション・ジャパン』の社宅管理サービスでは、社有社宅の管理代行や転貸方式による借上社宅のフルアウトソーシングが可能です。社宅の入居希望者を増やすための業務改善や、満足度の向上につなげる社宅制度の見直しなどについてもご相談ください。