単身赴任のときに住民票を移す必要はある? 会社側の住所変更手続きも解説
従業員の人事異動が決まり、単身赴任をすることになった際、住民票を赴任先に移す必要があるのかどうか対応に悩まれるケースも多いのではないでしょうか。
住民票は、本人の氏名や生年月日、住所などが記録されており、その現地に居住している証明となるほか、各種行政に関する事務処理の基礎となります。そのため、法令に基づいた正しい手続きが求められます。
会社の人事・総務部門では、単身赴任をする従業員への正しい情報提供を行うために、赴任先に住民票を移す必要があるのか、また移さなかった場合の注意点について理解を深めておくことが重要です。
この記事では、単身赴任時における住民票の取扱いをはじめ、会社側で必要になる住所変更の手続きについて解説します。
出典:総務省『住民基本台帳等』
目次[非表示]
- 1.単身赴任のとき住民票を移す必要はある?
- 2.住民票を移さない場合の注意点
- 2.1.行政サービスの利用が制限される
- 2.2.赴任先で公的書類の発行ができない
- 2.3.運転免許証の更新はがきが届かない
- 2.4.選挙投票に手続きが必要になる
- 3.単身赴任が決まったときに会社側で必要になる手続き
- 3.1.健康保険・厚生年金保険の住所変更
- 3.2.雇用保険の転勤届
- 4.まとめ
単身赴任のとき住民票を移す必要はある?
引越しで住所が変わる場合、原則として転入先の住所に住民票を移す必要があります。
『住民基本台帳法』第21条の4・第22条では、就職や転勤などに伴う引越しで住所が変わる場合、転入した日から14日以内に市区町村に届け出る義務が定められています。正当な理由がなく住民票を移さない場合には、5万円以下の過料に処されるおそれがあるため注意が必要です。
▼住民基本台帳法 第21条の4
第二十一条の四 住民としての地位の変更に関する届出は、全てこの章及び第四章の三に定める届出によつて行うものとする。
引用元:e-Gov法令検索『住民基本台帳法』
▼住民基本台帳法 第22条
第二十二条 転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。以下この条及び第三十条の四十六において同じ。)をした者は、転入をした日から十四日以内に、次に掲げる事項(いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者にあつては、第一号から第五号まで及び第七号に掲げる事項)を市町村長に届け出なければならない。
引用元:e-Gov法令検索『住民基本台帳法』
ただし、単身赴任の場合には住民票を移さなくてもよいケースがあります。
▼単身赴任で住民票を移さなくてよいケース
- 赴任期間が1年以内
- 生活の拠点が変わらない
赴任期間が1年以内と決まっている場合には、『住民基本台帳法』第22条で定められる“転入”に該当しないため、住民票を移す必要はありません。
また、「赴任中に定期的に帰省する」「週末のみ帰る」などのように、生活の拠点が元の家にある場合も住民票を移さなくてもよいとされています。
出典:総務省『住所の異動届は正しく行われていますか?』/e-Gov法令検索『住民基本台帳法』
住民票を移さない場合の注意点
赴任期間が1年以内の場合や、生活の拠点が元の家にある場合には住民票を移さなくてもよいとされていますが、いくつか注意点があります。
人事・総務担当者は、単身赴任する従業員に対して、住民票を移さない場合の注意点を伝えておくことが大切です。
行政サービスの利用が制限される
住民票を移していないと、赴任先の市区町村が実施している行政サービスを利用できない、または制限される可能性があります。
市区町村のなかには、その地域に住民票の住所を登録している住民のみが無料で利用できる図書館やスポーツ施設があったり、公共施設の割引サービスを提供したりしているところがあります。
市区町村の行政サービスを受けてお得に公共施設を利用したい場合には、赴任先に住民票を移す必要があります。
赴任先で公的書類の発行ができない
住民票がある市区町村の役所でなければ発行ができない公的書類があることも注意点の一つです。
住民票を移していない場合、赴任先で住民票の写しや印鑑証明などの公的書類が必要になったときに、元の住所にある役所まで出向かなければならない可能性があります。各種証明書をコンビニで取得できるサービスもありますが、市区町村によって取得できる証明書が異なるため、事前の確認が必要です。
住民票を赴任先に移していれば、赴任先の地域にある役所でスムーズに公的書類を取得できるようになります。
運転免許証の更新はがきが届かない
住民票を移さない場合、運転免許証の更新通知はがきが元の住所に送付されてしまいます。赴任先に通知はがきが届かないため、更新手続きを忘れてしまう可能性があります。
赴任先で免許更新を行いたい場合には、住民票の異動とともに、運転免許証の記載事項変更を行うことが望ましいです。
出典:岐阜県警察『更新連絡書(はがき)が届かない方』
選挙投票に手続きが必要になる
選挙権は住民票に登録された住所がある市区町村のみで行使できるため、住民票を赴任先に移していない場合、別途手続きが必要です。
選挙投票を行う際は、元の住所に出向くか、不在者投票(※)制度を利用するかのどちらかで投票を行います。住民票を赴任先に移してから3ヶ月が経過したら、新しい住所地での選挙投票が可能です。
※不在者投票とは、選挙期間中にほかの市区町村に滞在している場合に、滞在中の市区町村の選挙管理委員会で投票できる制度のこと。
出典:総務省『住所の異動届は正しく行われていますか?』
単身赴任が決まったときに会社側で必要になる手続き
単身赴任が決まり従業員が転勤することになった際は、従業員の健康保険・厚生年金保険と雇用保険に関する手続きが必要です。
健康保険・厚生年金保険の住所変更
転勤する従業員が、マイナンバーと基礎年金が結びついていない被保険者の場合、健康保険・厚生年金保険の住所変更の手続きを行う必要があります。
事業所の所在地を管轄する年金事務所に、速やかに『健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届』を提出します。
被扶養配偶者も一緒に赴任先に転居する場合には、『国民年金第3号被保険者住所変更届』を併せて提出します。
雇用保険の転勤届
ハローワークに雇用保険の転勤届を提出することも必要です。
転勤が決まった日の翌日から10日以内に、事業所の所在地を管轄するハローワークに『雇用保険被保険者転勤届』を提出します。
転勤が決まったあとの手続きと流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:厚生労働省『手続き一覧表』
まとめ
この記事では、従業員が単身赴任する際の住民票の取扱いについて、以下の内容を解説しました。
- 住民票を異動する義務の有無
- 住民票を移さない場合の注意点
- 会社側で必要になる手続き
単身赴任で別の市区町村へ引越しをする際、原則として転入先で届出を行い、住民票の異動が必要です。
ただし、赴任期間が1年以内の場合や、生活の拠点が変わらない場合には、住民票を移す必要はないとされています。
住民票を移さなかった場合、赴任先での行政サービスを利用できない、役所で各種証明書を取得できない、運転免許証の更新や選挙投票に手間がかかるなどの注意点があります。
人事・総務担当者は、「赴任期間が1年以上または未定」「定期的に帰省しない」という従業員には、住民票を移すことを勧めるのが望ましいといえます。また、単身赴任が決定した際は、会社側で健康保険・厚生年金の住所変更、雇用保険の転勤届を忘れずに行うことも重要です。
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なお、単身赴任に必要な家具・家電の費用を抑える方法については、こちらの記事で解説しています。