賃貸物件の解約予告期間が過ぎたらどうなる? 解約時に気をつけるポイント
賃貸物件を解約する際は、事前に退去の意思を通知する“解約予告期間”が定められています。
社宅として賃貸物件を借り上げている会社では、従業員の転勤や退職によって急に退去が決まることもあるため、解約予告期間を過ぎてトラブルにつながるケースも考えられます。
人事・総務部門では、解約に関するトラブルを防ぐために、賃貸物件の解約予告期間と、期間を過ぎた場合にどうなるのかについて把握しておくことが重要です。
この記事では、賃貸物件の一般的な解約予告期間をはじめ、期間が過ぎた場合の対応や解約時に気をつけるポイントについて解説します。
なお、社宅に関する基本的な情報は下記の記事で解説しています。併せてご覧ください。
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賃貸物件の一般的な解約予告期間
賃貸物件の解約予告期間は、借主都合と貸主都合の場合で異なります。それぞれの一般的な解約予告期間は、以下のとおりです。
▼解約予告期間の目安
解約理由 |
期間 |
借主都合 |
解約日の1~3ヶ月前まで |
貸主都合 |
解約日の6ヶ月~1年前まで |
テナントや貸オフィスについては、解約予告期間が3~6ヶ月前までと居住用の賃貸物件よりも長めに設定されていることが一般的です。
賃貸物件の解約予告は法律によって期間が定められています。
『民法』第617条では、賃貸借契約に契約期間の定めがない場合においては、借主・貸主は3ヶ月前までの申し入れで解約できると定められています。
▼民法 第617条
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
引用元:e-Gov法令検索『民法』
また、賃貸借契約の期間が定められている場合でも、期間内に解約できる旨の条項が設けられていれば、同じく3ヶ月前での申し入れによって解約することが可能です。
ただし、貸主都合によって簡単に解約できるとなると、借主にとって不利益が大きくなるため、借主を保護するためのルールが『借地借家法』によって定められています。
同法第27条では、貸主からの解約の申し入れは6ヶ月前までに行うことが定められています。さらに同法第28条では、貸主による解約の申し入れは、正当な事由がなければできないと規定されています。
▼借地借家法 第27条
第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
引用元:e-Gov法令検索『借地借家法』
▼借地借家法 第28条
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
引用元:e-Gov法令検索『借地借家法』
解約予告期間が過ぎたらどうなる?
社宅として借り上げた賃貸物件の解約申し入れを行う際、賃貸借契約の解約予告期間が過ぎた場合は、違約金として過ぎた分の日割り家賃を請求されるケースがあります。
また、解約予告期間を過ぎており、なおかつ解約の申し入れをしたタイミングが賃貸借契約更新時期と重なる場合には、更新料の支払いを求められる可能性もあります。
賃貸借契約の内容によって対応が異なるため、事前に解約予告期間を過ぎた場合の家賃の支払いや、違約金の有無などを確認しておくことが重要です。
例えば、解約予告期間が2ヶ月前と定められており、借主都合により3月末で解約(退去)する場合、同年の1月末までの申し入れが必要となります。
賃貸物件の解約時に気をつけるポイント
社宅として借り上げている賃貸物件を解約する際には、解約予告期間のほかにも気をつけるポイントがあります。
①途中解約には違約金が発生するケースがある
賃貸借契約書において、契約期間内での途中解約に違約金が発生する旨が記載されている場合には、違約金の支払いが必要になります。
賃貸借契約では、約1~2年の契約期間が定められていることが一般的です。契約期間内での途中解約や入居後の短期解約に対しては、違約金が設定されていることがあるため注意が必要です。
事前に賃貸借契約書と重要事項説明書を確認して、違約金が発生するかどうかを調べておくことが重要です。
なお、こちらの記事では、短期解約による違約金の基本情報や物件の注意点、社宅規程を定める際の注意点について解説しています。併せてご覧ください。
②原状回復の範囲を確認しておく
退去の際に実施する原状回復工事に関して、どの範囲まで借主の費用負担になるのか、賃貸借契約の内容を確認しておくことが必要です。
賃貸物件を解約して退去する際、借主には原状回復義務があります。原状回復義務とは、入居時に生じた損傷を修繕する義務のことです。
この原状回復にかかる修繕費用の負担区分は、国土交通省住宅局の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に示されています。
▼原状回復にかかる修繕費用の負担
区分 |
内容 |
借主負担 |
借主の故意・過失、契約違反行為や善管注意義務違反などによって生じた傷・汚れ |
貸主負担 |
通常の使用や経年劣化による傷・汚れ |
退去時に物件の損傷がある場合、通常の使用や経年劣化によってできたものかどうかが争点となり、費用負担についてトラブルにつながるケースがあります。
こうしたトラブルを防ぐためには、賃貸借契約の原状回復範囲を確認して、入居前の損耗箇所・程度をチェックリストや図面に記録しておくことがポイントです。
原状回復の基礎知識については、こちらから資料をダウンロードしていただけます。社宅管理にぜひご活用ください。
出典:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』
③電気・水道・ガスの停止連絡をする
賃貸物件の解約時には、電気・水道・ガスの停止連絡を忘れずに行うことが重要です。電気・水道・ガスの停止手続きは、退去する1ヶ月〜2週間前までに行うことが一般的とされています。
いずれも電話連絡やインターネットで停止の申し込みができますが、ガスについては現地での立会いが必要なケースもあるため事前に確認しておく必要があります。
まとめ
この記事では、賃貸物件の解約予告期間について以下の内容を解説しました。
- 一般的な解約予告期間
- 解約予告期間を過ぎた場合の対応
- 解約時に気をつけるポイント
賃貸物件には解約予告期間が定められており、借主都合による解約の場合には、一般的に解約日の1~3ヶ月前までとされています。
借上社宅の解約申し入れを行う際、解約予告期間を過ぎた場合には、違約金を請求される可能性があるため注意が必要です。
人事・総務部門が借上社宅を契約する際は、解約予告期間と期間が過ぎた場合の対応について事前に確認することが重要です。
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