
従業員の引越し時に社内で行う手続きと注意点
雇用している従業員が引越しを行う場合、従業員本人だけでなく企業側でもさまざまな手続きが必要となります。例えば、納税や保険・福利厚生などに関わる登録の変更や、企業で登録している名簿の変更などが挙げられます。
人事総務部門のご担当者さまのなかには、「従業員が引越しする際に社内ではどのような手続きが必要なのか」「従業員の引越しに関する注意点が知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、従業員の引越し時における社内の変更手続きや注意点を解説します。
なお、引越しの際に従業員側でやることについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
目次[非表示]
- 1.従業員の引越し時に社内での変更手続きが必要なもの
- 1.1.社会保険・住民税の住所
- 1.2.各種保険や福利厚生サービスの住所
- 1.3.労働者名簿の住所
- 1.4.通勤手当の額
- 2.従業員が引越しを行う際の注意点
- 2.1.補助する費用の範囲を明確にする
- 2.2.見積書や領収書の提出を依頼する
- 2.3.火災保険や地震保険への加入を促す
- 3.まとめ
従業員の引越し時に社内での変更手続きが必要なもの
従業員の引越しに際しては、社会保険や住民税、独自加入の保険・サービスにおける住所の変更手続きが必要です。また、労働者名簿の更新や通勤手当の再設定なども求められます。
社会保険・住民税の住所
従業員の社会保険料や住民税は給与からの天引きで納付・納税を行うため、企業側で住所変更の手続きが求められます。
ただし、社会保険については従業員側でマイナンバーと紐づけていれば、企業側での住所変更手続きは不要です。
また、住民税の納税を行う住所は、住民票住所に合わせる必要があります。したがって、従業員が引越し時に住民票の異動を行わない場合には、企業側で納税手続きを行う住所も変更せずに元のままにしておきます。
住民票の異動を始めとする役所での手続きについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
各種保険や福利厚生サービスの住所
社会保険以外の各種保険や福利厚生サービスに従業員を加入させている場合、登録住所の変更手続きが必要です。
ただし、企業単位で加入する労災保険や、住所の登録がない雇用保険については住所変更の手続きは必要ありません。
労働者名簿の住所
引越しで従業員の住所が変更された場合、労働者名簿に登録されている住所を更新する必要があります。
労働者名簿の作成は『労働基準法』第107条によって規定されており、同条第2項において記入事項に変更があった場合の速やかな訂正が義務づけられています。
▼労働基準法第107条
(労働者名簿)
第百七条 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
② 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』
通勤手当の額
従業員の引越しによる住所変更に伴って、通勤手当の額が変動する可能性もあります。改めて通勤ルートを確認して通勤手当の額を計算することが必要です。
また、通勤手当の額は社会保険料を算定する際の計算にも影響するため、速やかな手続きが求められます。
従業員が引越しを行う際の注意点
従業員が引越しを行う際は、補助する費用を明確にしたり、見積書や領収書を提出させたりする必要があります。また、火災保険・地震保険への加入を促すことも重要です。
補助する費用の範囲を明確にする
引越しの際に企業側で負担する費用について、明確にしておくことが重要です。
従業員の引越しにおいては、企業側でさまざまな費用のサポートを行うケースがあります。しかし、その範囲や条件が明確でない場合、従業員との間でトラブルが生じやすくなります。
▼一般的に企業側で補助する費用の例
- 引越し会社の利用料金
- 引越しする際の交通費・宿泊費
- 借上社宅に入居する場合の敷金・礼金 など
また、従業員に単身赴任をさせる場合には、単身赴任手当を支給するケースもあります。単身赴任手当の内容についても法令に定めがないため、トラブルを避けるには就業規則で明確化しておくことが欠かせません。
▼単身赴任に関する手当の例
手当の内容 |
概要 |
支給方法 |
単身赴任手当 |
赴任先での生活費を補助するための手当 |
定例払い |
住宅手当 (または単身寮・社宅) |
赴任先での住居に関する手当・支援 |
定例払い |
帰省手当 |
帰省にかかる交通費を補助するための手当 |
一時払い |
転勤準備金 (支度金) |
引越しや物件の契約、家具・家電の購入などにかかる費用を補助するための手当 |
一時払い |
引越し費用の負担や借上社宅の初期費用、単身赴任手当についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
新卒入社の引越し費用は会社負担? 入社をサポートする福利厚生とは
見積書や領収書の提出を依頼する
企業側で引越し費用の補助を行う場合は、見積書や領収書を従業員に提出してもらうようにします。
見積書・領収書を提出してもらうことで、会社側の負担が過度に大きくなることを防ぎやすくなります。また、領収書は経費を生産するときにも必要となります。
火災保険や地震保険への加入を促す
従業員の引越し時には、火災保険や地震保険への加入を促します。火災保険や地震保険に加入しておくと、いざというときに従業員の生活の立て直しが図りやすくなります。
また、従業員が借上社宅に入居する際には、企業側のリスクを抑えるためにも火災保険・地震保険が重要です。
社宅の火災保険においては企業加入のケースと個人加入のケースがあります。個人加入としたほうが企業側の費用負担は抑えやすい一方で、加入・更新忘れも生じやすくなります。火災保険に個人加入させる際には、特に企業側で注意することが欠かせません。
なお、社宅の火災保険についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
まとめ
この記事では、従業員の引越しについて以下の内容を解説しました。
- 従業員の引越し時に社内で行う手続き
- 従業員が引越しを行う際の注意点
従業員が引越しを行う際には、企業側でも保険や住民税に関する住所変更や労働者名簿の更新、通勤手当の再計算などさまざまな手続きが求められます。
また、従業員の引越しにおいては、企業側で引越し費用の負担や社宅の提供などさまざまなサポートを実施するケースがあります。
この際、補助する範囲の明確化や見積書・領収書の確認、火災保険・地震保険への加入促進などを行っておくと、あとでトラブルが生じることを防ぎやすくなります。
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