
賃貸物件を法人契約するメリット・デメリット。円滑な契約・運用のポイント
福利厚生の充実や単身赴任者へのサポートなどを目的とした制度に”借上社宅”制度があります。
借上社宅では、企業が借主となって法人契約で賃貸借契約を交わします。従業員側での初期費用や手続きの負担を抑えられる一方、契約をめぐってさまざまなトラブルが起こることもあるため、注意が必要です。
この記事では、人事総務部門のご担当者さまに向けて、賃貸物件を法人契約するメリット・デメリットや円滑に契約・運用を行うポイントを解説します。
なお、企業の社宅管理業務をサポートするリロケーション・ジャパンのアウトソーシング事例については、こちらの資料をご確認ください。
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賃貸物件を借上社宅として契約するメリット
賃貸物件を法人契約し、借上社宅として従業員へ貸与すると、従業員の金銭的・労力的な負担を軽減できるほか、社有社宅と比べて維持管理コストを抑えられます。
【従業員メリット】手続きの労力を削減できる
従業員が享受できるメリットとして、賃貸物件の契約にかかる手続きの労力を削減できることが挙げられます。
法人契約では、賃貸物件を借りる際に必要なさまざまな手続きを企業が行うため、入社や転勤で社宅を利用する従業員がスムーズに入居準備を進められます。
▼従業員自身での対応が不要になる手続き
- 不動産会社への物件の問い合わせ
- 賃貸物件の申込みと必要書類の提出
- 重要事項説明の対応と賃貸借契約の締結
- 初期費用の支払い など
賃貸物件を法人契約する流れは、こちらの記事をご確認ください。
【従業員メリット】初期費用の負担を減らせる
賃貸物件を借りる際の初期費用について、従業員側の負担を減らせることも法人契約におけるメリットの一つです。
▼賃貸物件の契約にかかる初期費用(※)
- 敷金・礼金
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 家賃保証会社への保証料
- 鍵の交換費用 など
法人契約する際の初期費用は、企業側で全部または一部を支払います。従業員の金銭的な負担を減らすことで、社宅制度の満足度向上や転勤の辞令を理由とした離職の防止につながると期待されます。
※物件の契約内容によって発生する費用や金額は異なります。
【企業メリット】社有社宅と比べて維持管理コストを抑えられる
企業側のメリットとして、社宅の維持管理コストを抑えられることが挙げられます。
自社所有の社宅を運用する場合には、建物・設備の維持管理にかかるさまざまなコストを企業が負担する必要があります。
▼社有社宅における維持管理コストの内容
- 共用部分の清掃
- 消防設備やエレベーター、給水・排水設備、浄化槽設備などの定期点検
- 長期修繕計画に基づく建物・設備の修繕 など
賃貸物件を法人契約で借りる場合では、貸主または貸主から委託を受けた管理会社が建物・設備のメンテナンスや修繕を行うため、維持管理コストを抑えられます。
社有社宅と借上社宅を比較した維持管理コストの違いについては、こちらの記事をご確認ください。
賃貸物件を法人契約するデメリット
賃貸物件を法人契約すると、企業が借主となって賃貸借契約に関するさまざまな管理を行う必要があり、業務の負担やトラブルが発生することがあります。
企業側のデメリットには、以下が挙げられます。
契約管理が必要になる
社宅用に賃貸物件を借り上げると、入居中に発生するさまざまな手続きについて企業が対応することになります。社内の人的リソースを社宅管理に充てる必要があるため、物件数が多くなるほど業務負担の増加につながります。
▼社宅担当者が対応する業務の内容
- 各物件の契約管理
- 貸主または管理会社への家賃の支払い
- 更新料の支払い
- 退去時の解約予告通知
- 退去立会い など
社宅管理人が対応する業務内容については、こちらの記事をご確認ください。
短期解約のリスクがある
賃貸借契約の内容によっては、貸主が定めた所定の期間内に解約すると短期解約違約金が請求されることがあります。
社宅では、入居する従業員が転勤や退職などによって現住居を短期間で退去する場合があります。物件の賃貸借契約で短期解約違約金が定められている場合には、借主に支払いが求められます。
短期解約違約金について詳しくはこちらの記事をご確認ください。
従業員と退去トラブルが起こることがある
法人契約で賃貸物件を借りた場合、社宅を退去する際に従業員とのトラブルが起こることがあります。
▼退去トラブルの例
- 原状回復費用の負担を従業員に求めたが納得してもらえない
- 退職する従業員が猶予期間までに物件を退去してくれない など
賃貸借契約では、退去時に借主への原状回復義務が定められています。入居者の故意・過失や不注意などによって生じた損耗・破損については、復旧費用を借主が負担する必要がありますが、「費用をどちらが負担するか」といったトラブルが起こりやすくなります。
また、従業員が退職する際に、提示した猶予期間までに退去に応じてくれず、貸主への物件の明け渡しが間に合わなくなるトラブルも考えられます。
社宅の原状回復費用や退去を求める猶予期間については、こちらの記事で詳しく解説しています。
出典:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
借上社宅を円滑に契約・運用するポイント
賃貸物件を借上社宅として貸し出す際は、従業員とのトラブルや社宅管理の業務負担を防ぐための対策が必要です。
①費用の負担割合や退去時のルールを共有する
社宅規程を作成して、社宅に関する費用の負担割合や退去時のルールなどを共有しておく必要があります。
賃貸物件によって契約内容は異なるため、物件ごとの規定や特約事項についても従業員にしっかりと説明することがポイントです。
▼従業員に共有しておくこと
- 短期解約違約金の発生有無や期間
- 原状回復費用に関する負担項目・割合
- 物件の解約予告期間
- 退職時の物件明け渡しに関する猶予期間 など
社宅規程に記載する項目や作成例は、こちらの記事をご確認ください。
②入居前に物件の状態を記録しておく
従業員が社宅に入居する前に、物件の状態をチェックリストや写真などで記録しておくこともポイントの一つです。
物件の状態を記録することで、退去時に損耗や破損があった際に「従業員の故意や過失によるものか」「入居前から既にあったものか」を客観的に判断できます。これにより、従業員や貸主との原状回復費用をめぐるトラブルを回避することが可能です。
なお、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』では、入居時に物件状況を記録するためのチェックリストが掲載されています。
出典:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』
③社宅の転貸・運用代行サービスを利用する
企業による社宅管理業務の負担を軽減するために、社宅の転貸・運用代行サービスを活用する方法があります。
物件の契約管理や家賃の支払いなどのさまざまな業務を外部に委託することで、社内の人的リソースを有効活用できるようになります。
業務の委託方式やサービスの選び方については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、賃貸物件の法人契約について以下の内容を解説しました。
- 賃貸物件を法人契約するメリット・デメリット
- 賃貸物件を円滑に契約・運用するポイント
賃貸物件を法人契約して社宅として借り上げることで、従業員による初期費用の支払いや手続きの負担を抑えられ、満足度の向上につながります。
円滑な契約・運用を実現するには、原状回復費用や退去に関する従業員とのトラブルを防ぐことや、社宅管理の業務負担を軽減する対策が求められます。
『リロケーション・ジャパン』では、包括転貸方式による借上社宅のフルアウトソーシングを承っております。企業様に代わって貸主との賃貸借契約を締結することで、契約から退去に至るまでの手続きおよび管理業務を一括サポートいたします。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。