法人のための賃貸契約ガイド。借上社宅として従業員へ貸す際に注意すべき点とは
社宅の運用では、法人契約で賃貸物件を借り上げて従業員に貸与する方法があります。従業員が入社・転勤するタイミングで社宅を提供するには、契約手続きをスムーズに進められるように準備しておく必要があります。
人事総務部門のご担当者さまのなかには「賃貸物件の法人契約はどのような流れで締結するのか」「社宅を提供する際に気をつけておくことはあるか」など気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、賃貸物件の法人契約を締結する流れと従業員に社宅を提供する際の注意点について解説します。
なお、賃貸借契約を解約する手続きについてはこちらの記事をご確認ください。
目次[非表示]
- 1.賃貸物件の法人契約を締結する流れ
- 2.賃貸物件を法人契約して社宅を提供する際の注意点
- 2.1.費用の負担区分を明確にする
- 2.2.契約形態を確認する
- 2.3.解約予告期間を確認する
- 3.まとめ
賃貸物件の法人契約を締結する流れ
賃貸物件を借りる際は、貸主・借主で賃貸借契約を締結します。会社の名義で法人契約を交わす場合には、必要書類や入居審査の基準などが個人契約と異なります。
➀入居申し込み
社宅として借りたい賃貸物件が決まったら、入居申し込みを行います。
▼入居申し込みの手順
- 物件の管理会社や不動産仲介会社に連絡して入居申し込みの意思を伝える
- 指定の入居申込書に必要事項を記入する
- ほかの必要書類を準備して入居申込書と一緒に1の担当者に提出する
入居申込書には借主となる企業の情報を記入しますが、実際に入居する従業員の身分証明書が求められる場合があります。また、必要書類は物件によって異なるため、管理会社または不動産仲介会社の指示に従います。
▼必要書類の例
- 会社登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 会社概要・会社案内
- 決算報告書
- 代表者の身分証明書・経歴書
- 入居者の本人確認書類の写し
- 入居者の社員証の写し
- 連帯保証人の本人確認書類 など
なお、入居申し込みを行う前の準備については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
②入居審査
入居申し込みを行ったあと、貸主または管理会社による入居審査が行われます。入居審査に関する具体的な項目・基準は公表されませんが、法人契約の場合は主に企業の経営状況や社会的な信用度などがチェックされます。
▼法人契約の入居審査でチェックされやすい項目
- 設立年数
- 資本金
- 売上高
- 従業員数 など
設立して間もない会社や事業内容が不明瞭な会社、債務超過している会社などは、入居審査に通らないことがあります。また、貸主が家賃保証会社の利用を求めている場合には、保証機関による審査も同時に行われます。
法人契約の入居審査についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
③賃貸借契約の締結
入居審査に通過したら、貸主との間で賃貸借契約を締結します。契約書については、不動産仲介会社や貸主から委託を受けた管理会社に郵送で送付することが一般的です。
▼賃貸借契約の手順
- 契約書の内容を確認する
- 契約内容に問題がなければ初期費用を指定の口座に入金する
- 重要事項説明(※)を受ける
- 契約書に署名・捺印を行い指定の住所に郵送する
契約書には、貸主・借主の基本情報や契約内容に関する情報が記載されています。署名・捺印を行う前に「申し込み時の内容と相違がないか」「借主に不利な特約事項はないか」などを確認しておくことが重要です。
※宅地建物取引業法第35条に基づいて、宅地建物取引士が契約に関する重要事項の読み上げと書面の交付を行うこと。
なお、賃貸借契約書で気をつけるポイントはこちらの記事をご確認ください。
出典:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』
賃貸物件を法人契約して社宅を提供する際の注意点
法人契約した借上社宅を提供する際は、家賃・初期費用や契約期間、解約などに関するトラブルが発生しないように対策することが必要です。
費用の負担区分を明確にする
賃貸物件の契約時や入居中に発生する費用は、企業と従業員のどちらが負担するか明確に定めて、明記しておきます。
▼賃貸物件の契約・入居にかかる主な費用
発生するタイミング |
費用項目 |
契約時 |
|
入居中 |
|
解約時 |
|
家賃については従業員から一定割合以上を社宅使用料として徴収することになるため、金額や負担割合について事前に取り決めておく必要があります。
初期費用の一般的な負担区分や家賃(社宅使用料)の決め方については、こちらの記事で解説しています。
契約形態を確認する
物件の入居申し込みや契約の締結を行う際には、契約形態を確認しておきます。賃貸借契約には、従来の普通借家契約と定期借家契約があります。
▼契約形態の種類
普通借家契約 |
定期借家契約 |
|
契約期間 |
定めなし |
定めあり |
更新の有無 |
自動更新となる |
原則更新なし(※)
|
定期借家契約の場合、期間が満了すると契約が終了となり更新ができないため、社宅を明け渡してもらう必要があります。従業員とトラブルにならないように、事前に定期借家契約の物件か否かの確認を行い、契約書の内容も併せて確認しておく必要があります。
※貸主・借主の双方が合意すれば再契約によって継続入居することも可能。
定期借家契約の注意点は、こちらの記事で解説しています。
出典:国土交通省『定期借家制度をご存じですか・・・?』
解約予告期間を確認する
賃貸借契約では、解約する際に借主が退去の意思を申し出る“解約予告期間”が定められています。借主都合による解約については、一般的に解約日の1~3ヶ月前までとされています。
解約予告期間を過ぎてから退去の連絡をすると、日数を過ぎた分の日割り家賃を請求されたり、タイミングによっては更新料の支払いが求められたりすることがあります。
退職や引越しなどで社宅を退去する際は、定められた解約予告期間内に管理会社へ連絡する必要があるため、従業員に前もって伝えておくことが必要です。
賃貸物件の解約予告期間については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では、賃貸物件の法人契約について以下の内容を解説しました。
- 賃貸物件の法人契約を締結する流れ
- 賃貸物件を法人契約して社宅を提供する際の注意点
賃貸物件を法人契約で借りる場合は、入居申し込みに必要な書類や入居審査の基準などが個人契約とは異なります。契約締結までの流れを踏まえて準備をしておくと、管理会社や不動産仲介会社とのやり取りがスムーズになります。
また、法人名義で契約した賃貸物件を従業員へ貸すにあたり
事前の取決めがされていないと契約・入居中・解約に際し、従業員とのトラブルになる場合があります。費用負担区分や契約形態・解約予告期間などのルールを事前に取決めしておくことや、企業・従業員がいつでも確認できる状態にしておくことが必要です。
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