転勤に伴う引越し費用はどこまで企業が負担する? 一般的な費用項目を解説
企業都合による転勤では、一般的に企業が引越し費用を負担することが望ましいという考えが多く見られます。
しかし、転勤に伴う引越し費用の項目や負担者については、法律で具体的に定められているわけではありません。
そのため、「どこまでの費用を企業で負担したらよいか」「従業員の転勤に伴う引越し費用について知りたい」とお考えの人事・総務担当の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、従業員の転勤に伴う引越し費用や、その前後で発生する費用の、一般的な負担区分と、転勤時に必要な手続きについて解説します。
目次[非表示]
- 1.引越し費用の負担区分
- 1.1.①基本的な引越し費用
- 1.2.②特殊荷物の運搬費用
- 1.3.③そのほかの諸費用
- 2.そのほか引越しの前後で発生する費用の負担区分
- 2.1.①家具・家電の購入費や処分費
- 2.2.②賃貸物件契約の初期費用
- 2.3.③賃貸物件契約のその他諸費用
- 3.従業員が転勤する際に必要な手続き
- 3.1.社会保険の変更手続き
- 3.2.雇用保険の変更手続き
- 4.まとめ
引越し費用の負担区分
企業都合による転勤の場合、基本的な引越し費用は企業負担となることが一般的です。
従業員とのトラブルを回避するために、引越し費用について全額負担か一部負担か、また企業が負担する場合の上限額などについて、事前に就業規則や転勤規程と併せて規定しておくことが重要です。
①基本的な引越し費用
企業都合による転勤の場合、引越し会社に支払う基本的な費用については、企業負担、または相当額を転勤支度金として支給している企業が多くなっています。
一方、入社時や結婚・退職などの個人都合による引越しの場合は、従業員負担が一般的です。
基本的な引越し費用としては、以下が挙げられます。
▼基本的な引越し費用とされる項目
- 荷物の運搬費
- 引越し会社の人件費
- トラックのチャーター費 など
ただし、従業員の希望で追加した荷造費のようなオプション・サービスに関する料金については、企業負担にせず、従業員負担としているケースが多くあります。
また、近年は物流業界2024年問題の影響が引越し業界におよぶことが想定されており、引越し費用単価の高騰が懸念されています。
物流業界の2024年問題が社宅の引越しに与える影響については、こちらの資料で詳しく解説しています。
②特殊荷物の運搬費用
特殊な方法で運搬しなければならない荷物の運搬費用に関しては、従業員負担としている企業が多くなっています。
特殊荷物に該当するのは、運搬に関して専門知識が必要なピアノや車・バイクといった大型荷物などが挙げられます。
③そのほかの諸費用
転勤時は、引越しに関連して発生する諸経費についても、企業負担として定めることがあります。
引越しに関連する諸経費としては、以下が挙げられます。
▼引越しに関連する諸経費
- 引越し先までの交通費
- 仮滞在するための宿泊費
- 空き家となる持ち家の管理費
通常、交通費や宿泊費に関しては従業員負担となります。しかし、企業都合による転勤の場合は、企業負担としているケースが多く、金額や回数について一定の条件を定めていることが一般的です。
また、従業員に自家(持ち家)があり、引越しによって空き家となる場合の建物管理費に関しては、基本的に従業員負担となります。企業によっては、空き家管理サービスの割引提供を可とする制度を設けていることもあります。
そのほか引越しの前後で発生する費用の負担区分
次に、引越し前後で発生する費用の負担区分の例を3つ解説します。
通常、引越しにおいて必須とはいえない費用や、引越しに関連しない費用については、従業員負担となることが一般的です。
なお、従業員負担となる可能性がある単身赴任時の家具・家電の購入費用を抑える方法については、こちらの記事で紹介しています。併せてご覧ください。
①家具・家電の購入費や処分費
新居に移るにあたって新しく買い替える家具・家電の購入費や、旧住宅での処分費については、従業員負担となることが一般的です。
洗濯機や冷蔵庫など、新居の間取り・寸法に合わせて必然的に買い替えなければならないような家電であっても、従業員負担としている会社が多くなっています。
②賃貸物件契約の初期費用
転居先の賃貸物件を契約する際に必要な初期費用については、転勤の場合であれば、企業負担となることが一般的です。
賃貸物件の契約時にかかる初期費用には、以下が挙げられます。
▼賃貸物件の契約時にかかる初期費用
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
これらの初期費用をすべて負担するのか、または一部のみを負担するのか、どこまでを負担するかは企業によって異なります。
敷金については、従業員の自己負担にしたり、退去時に敷金の額を超えた場合のみ従業員に請求したりするケースもあります。
なお、引越し前の賃貸借契約に発生する敷金・礼金についての費用負担については、こちらの記事で詳しく解説しています。
③賃貸物件契約のその他諸費用
賃貸物件の契約に関する初期費用だけでなく、退去から入居までに必要な諸経費の負担区分も定めておく必要があります。
賃貸物件の退去から入居までに必要な諸経費としては、以下が挙げられます。
▼退去から入居までに発生する諸経費
- 退去時の修繕費・ハウスクリーニング費用
- 短期解約違約金
- 火災保険料
- 鍵の交換費用
転勤により退去する物件が社宅であれば、退去時の修繕費については、企業負担としている場合が多くなっています。ただし、故意・重過失による損傷や汚れの度合いに応じて、一部を従業員負担としているケースも見られます。
そのほか諸費用については、どこまでの費用を企業負担とするかは企業によって異なるほか、支給に一定条件が定められているケースもあります。
従業員が転勤する際に必要な手続き
従業員が転勤する際は、企業側で社会保険や雇用保険の住所変更手続きを行う必要があります。
社会保険の変更手続き
転勤によって住所が変わる場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する住所変更の手続きが必要です。
健康保険と厚生年金保険は、従業員の住所変更があった場合に、企業が管轄の年金事務局に対して“健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届”を提出します。
単身赴任の場合は、従業員本人分だけの変更で問題ありませんが、被扶養配偶者とともに引越す場合は、健康保険の住所変更手続きが必要です。
被扶養配偶者が国民年金第3号被扶養配偶者に該当しており、ともに引越す場合には、“国民年金第3号被保険者住所変更届”を提出します。
なお、従業員の基礎年金番号がマイナンバーと紐づいている場合は、社会保険の情報が自動で更新されるため、変更手続きは不要です。
出典:日本年金機構『被保険者の住所に変更があったとき』『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)及び被扶養配偶者の住所に変更があったときの手続き』
雇用保険の変更手続き
従業員の転勤先を管轄するハローワークに対して、“雇用保険被保険者転勤届”を提出する必要があります。
雇用保険被保険者転勤届の提出期限は、従業員が転勤した翌日から10日以内と定められています。
ただし、事前に企業が“事業所非該当承認申請書”をハローワークに提出しており、転勤先が元の職場と同一事業所であると認められている場合には、雇用保険被保険者転勤届を提出する必要はありません。
なお、転勤が決まったあとに企業側・従業員側のそれぞれで必要な手続きについては、こちらの記事でも解説しております。
出典:厚生労働省 徳島労働局『事業主の皆様へ:雇用保険について:被保険者についての諸手続き』
まとめ
この記事では、転勤による引越し費用について、以下の内容を解説しました。
- 引越し費用の負担区分
- そのほか引越しの前後で発生する費用の負担区分
- 転勤時に必要になる住所変更手続き
転勤に伴う引越しでは、引越し費用をはじめ、交通費・宿泊費、賃貸借契約の初期費用などを、全額または一部上限つきで企業負担としているケースが多くなっています。
一方、家具・家電の購入費用や特殊荷物の運搬費用については、従業員負担となることが一般的です。そのため、従業員とのトラブルを防ぐためにも、企業で負担する費用を事前に規定しておくことが重要です。
また、従業員が転勤する際には、社会保険や雇用保険に関する変更手続きが必要になる場合もあるため、漏れ・遅延なく行えるように準備しておくことが大切です。
なお、こちらの記事では、転勤に伴う手当の主な種類と従業員の負担を減らす方法を紹介しています。併せてご覧ください。
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